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第20話 体力測定


「はぁ……」


 昼休み。


 美玲は机に突っ伏していた。


「どうしたの?」


 向かいで弁当を食べていた雛が首を傾げる。


「あーあ、明日やだなー……」


「何かあったっけ?」


「体力測定じゃん」


 雛は少し考えた。


「あー」


 思い出した。


「そうだっけ?」


「そうだよ」


 美玲は大きくため息を吐く。


「雛はいいだろうけど、私はそんなにだしなー」


「そういうもの?」


「そういうもの」


 即答だった。


「絶対疲れるし」


「へー」


 雛はよく分かっていない。


 そんな雛を見ながら、美玲は苦笑した。


「でもさ」


「ん?」


「雛、とんでもない記録とか出しそうだよねー!」


 雛は少し考える。


「うーん……」


 分からない。


 体力測定を知らないのだから予想のしようもなかった。



 放課後。


 帰宅した雛はリビングで紫亜を見つけた。


「紫亜さん」


「はい」


「明日、体力測定あるんだけど」


 紫亜は少し考える。


「それは活躍できそうですね」


「そうなの?」


「恐らくは」


 雛は首を傾げた。


「体力測定って何するの?」


 紫亜は即答した。


「体力を測定します」


 雛は一瞬だけ紫亜を見る。


 そして。


「そうか……」


 紫亜の動きが止まった。


 数秒。


 固まる。


 雛は何も言わない。


 ただ口元だけが少し笑っていた。


 紫亜は額を押さえる。


「ちゃんと説明しますから」


 雛は満足そうだった。


 成功である。


「握力」


「上体起こし」


「長座体前屈」


「反復横跳び」


「立ち幅跳び」


「50m走」


「ボール投げ」


「シャトルラン」


「こんなところですね」


「へー……」


 雛は頷いた。


 よく分からなかった。


 だが体力を測る何かだということは分かった。


「普通にやっていいの?」


 紫亜は即答した。


「死人さえ出なければ構いません」


 雛は固まる。


「体力測定で死人が出ることあるんだ……!?」



 翌日。


 体育館。


 一年生達が集められていた。


「まずは握力からー」


 先生の声が響く。


 雛は測定器を受け取った。


「これ握ればいいんですか?」


「そうそう」


 先生は気軽に答える。


 雛は頷いた。


 そして握る。


 ギシッ。


 測定器が軋んだ。


「ん?」


 先生が顔を上げる。


 表示された数字を見る。


 そして固まった。


「七十二……?」


 周囲も止まる。


「え?」


「今いくつ?」


「七十二って言った?」


 女子達がざわつく。


 美玲も固まっていた。


「雛」


「なに?」


「それ普通じゃないからね?」


「そうなの?」


 本気で驚いていた。



 次は立ち幅跳びだった。


「遠くへ跳べばいいんですね?」


「そうだよ」


 雛は頷く。


 そして跳んだ。


 次の瞬間。


 体育館の空気が変わった。


 明らかに遠い。


 測定係が慌てて距離を測る。


「三百八十四センチ」


 静まり返る体育館。


 数秒後。


 ざわめきが広がった。


「は?」


「嘘だろ……」


「女子だよな?」


 美玲は頭を抱える。


 昨日の自分を殴りたい。


 とんでもない記録を出しそう。


 確かに言った。


 言ったけれど。


 これは想定外だった。


「これも普通じゃないの?」


 雛の一言で、周囲のざわめきはさらに大きくなった。


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