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第19話 保護者


 その日の夜。


 雛はリビングのソファに座っていた。


 向かいでは紫亜が紅茶を飲んでいる。


「紫亜さん」


「はい」


「今日、先輩からまた声かけられた」


 紫亜の手が止まる。


「いよいよ恋バナですね」


「……違うって」


「冗談ですよ」


 雛は少し考えた後、ぽつりと言った。


「やめとけ……」


 紫亜が固まる。


 本当に一瞬だった。


 だが雛は見逃さない。


 案の定だった。


 雛はニヤリと笑う。


 紫亜は額を押さえた。


「お父様みたいな言い方しないでください」


 嬉しそうだった。


 雛は満足する。


 成功である。


「それで、何か言われたのですか?」


 紫亜は話を戻した。


 雛も素直に頷く。


「なんか、花園学園知ってるか?とか」


「はい」


「しばらく気をつけろ……とか?」


 紫亜は静かに額を押さえた。


(雛様の平穏な学園生活の危機かもしれませんね……)


「何か知ってるの?」


「いえ」


 即答だった。


「気にする必要はありません」


「そっか」


 雛は納得する。


 紫亜がそう言うなら大丈夫なのだろう。


 それ以上は気にしなかった。


 その日の夜。


 県内全域に雪が降った。


 季節外れの雪だった。


 天気予報は外れた。


 ニュースでも騒ぎになった。


 だが、それだけだった。


 翌日。


「そういや花園の件って何だったっけ?」


 不良の一人が首を傾げる。


「花園?」


「いや……」


 自分で言いながら分からなくなる。


 何か気になっていたはずだ。


 だが思い出せない。


 別の場所でも同じだった。


「華薗行ったよな?」


「行ったっけ?」


「いや……」


 言った本人も自信が無い。


 何か理由があった気がする。


 だが分からない。


「スマホに残してなかったか?」


「何を?」


「いや……」


 画面を見る。


 何も無い。


 写真も。


 メモも。


 連絡も。


 何一つ残っていなかった。


 その頃。


 華薗学園では楸が校門前を見ながら眉をひそめていた。


 ここ数日居た連中が綺麗に消えている。


 違和感はあった。


 だが理由は分からない。


「まあいいか」


 楸は校舎へ向かう。


 一方その頃。


「美玲、おはよう」


「おはよう」


 雛はいつも通りだった。


 花園学園のことも。


 不良達のことも。


 昨夜の雪のことも。


 何も知らない。


 ただ平穏な学園生活だけが続いていた。


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