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第18話 忠告


 翌朝。


 華薗学園の校門前には、昨日と同じように数人の男子生徒が立っていた。


 花園学園を潰したと噂される女。


 長身。


 黒髪ロング。


 華薗学園の制服。


 分かっているのはそれだけだ。


 本人を見た者もいなければ、名前すら判明していない。


 それでも連中は校門を眺め続けていた。


「お前ら何やってんだ?」


 背後から声が掛かる。


 振り返った男子生徒達は顔をしかめた。


 楸優作。


 華薗学園の有名人。


 現役プロ総合格闘家だった。


「あんたとやり合う気はねぇよ」


 楸は肩を竦める。


「じゃあ何しに来た?」


「花園が潰されたのは知ってんだろ?」


「噂には聞いてる」


 楸は頷いた。


「それがうちと何の関係があんだよ」


「やったのは華薗の女子だって噂だぜ」


 楸は眉をひそめる。


「は?」


「そこまでは知らねぇのかよ」


 男子生徒は呆れたように言った。


「県内の不良界隈じゃもう有名な話だぜ?」


「生憎と俺は不良じゃないんでね」


 楸は興味無さそうに返す。


「長身、黒髪ロングの女だってよ」


 その瞬間。


 楸はハッとした。


「知ってんのか?」


 楸は男子生徒達を見る。


「悪いことは言わねぇ……やめとけ」


「は?」


「忠告はしたからな?」


 それだけ言うと、楸は校門をくぐった。


 残された男子生徒達は顔を見合わせる。


「なんなんだ……?」



 昼休み。


 楸は一年の教室へ来ていた。


 教室の後ろでは、哀沢雛と美玲が昼食を食べている。


「哀沢」


 雛が顔を上げた。


「あ、先輩」


「ちょっといいか?」


「はい」


 雛は首を傾げる。


「花園学園って知ってるか?」


「花園?」


 雛は考え込んだ。


 本気で思い出そうとしている。


 だが。


「知らないです」


 楸は黙った。


「聞いたことある気もしますけど……」


 雛は首を傾げる。


「何かあったんですか?」


「いや」


 楸は短く答えた。


 その反応だけで十分だった。


 美玲は二人の会話を聞きながら黙っている。


 花園学園。


 入学式の日の遅刻。


 その二つが結び付き、一つの答えが浮かぶ。


 だが何も言わなかった。


 口にすれば雛が面倒事へ巻き込まれる気がしたからだ。



「校門の外に変なのが来てる」


 楸は言った。


「変な人?」


「ああ」


「しばらく気を付けろ」


 雛は首を傾げる。


 何のことだか分からない。


 だが楸が真面目な顔をしているので頷いた。


「分かりました」


 楸は小さく息を吐く。


 本人に全く自覚が無い。


 それが一番厄介だった。


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