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第17話 壊滅の余波


 花園学園。


 県内でも有数の不良校として知られる学校だった。


 暴力。


 恐喝。


 喧嘩。


 それが日常。


 そんな場所だった。


 だが今、その空気は一変していた。


 上級生達がまとめて病院送りになったからだ。


 しかも相手は一人。


 女だった。


 当然、その噂は他校へも広がっていく。


 昼休み。


 ある不良校の教室。


「聞いたか?」


「花園の件だろ?」


「ああ。女一人にやられたってやつ」


 笑いが起きる。


 最初は誰も信じなかった。


 だが。


「病院送り三十人以上」


「花園の頭もやられた」


「しかも一日で」


 その言葉に空気が変わる。


 冗談では済まない数字だった。


「どんな奴なんだ?」


「知らねぇ」


「でも特徴はあるらしい」


 スマホを見ながら一人が言う。


「女」


「長身」


「黒髪ロング」


「あと、華薗学園の制服着てたらしい」


「華薗?」


「進学校じゃなかったか?」


「不良校じゃねぇぞ」


 意味が分からない。


 進学校の女子生徒が花園学園を壊滅させた。


 話として成立していなかった。


「でもよ」


 一人が口を開く。


「華薗調べりゃ分かるんじゃね?」


 確かに条件は揃っている。


 長身。


 黒髪ロング。


 女。


 華薗学園。


 そこまで分かっているなら調べようはあった。


 だが。


「待て」


 一人が眉をひそめる。


「華薗って楸優作いるよな?」


 その名前が出た瞬間、教室の空気が少し変わった。


「いるな」


「現役プロの」


「六戦六勝だったか」


 全員が知っていた。


 県内では有名人だ。


「じゃあ花園潰したの楸じゃね?」


「いや、女らしい」


「じゃあ別人か」


 妙な話だった。


 楸優作がいる学校。


 しかも花園を潰したかもしれない女までいる。


「面倒そうだな」


「だな」


 笑いながらも、本気でそう思っていた。


 少なくとも勢いだけで乗り込める相手ではない。


 別の不良校でも似たような話が広がっていた。


 花園を潰した女。


 長身。


 黒髪ロング。


 華薗学園の制服。


 情報は少ない。


 だが噂だけは独り歩きする。


 一人で百人倒した。


 鉄パイプをへし折った。


 救急車を何台も呼ばせた。


 どこまで本当か分からない。


 ただ一つだけ確かなことがある。


 花園学園が静かになった。


 それだけは事実だった。


 その頃。


 当の本人は何も知らない。


「美玲、おはよう」


「おはよう」


 いつも通り登校していた。


 噂のことなど考えてもいない。


 今日の昼食は何だろう。


 そんなことを考えている。


 平和だった。


 一方、華薗学園の校門前。


 数人の男子生徒が登校する生徒達を眺めていた。


「ここか」


「ああ」


「楸優作のいる学校」


 視線が生徒達の間を移る。


 長身。


 黒髪ロング。


 女。


 特徴だけを頼りに探している。


 だが当然すぐには見つからない。


「見つかると思うか?」


「さあな」


 誰も答えを持っていなかった。


 それでも興味は消えない。


 花園学園を壊滅させたかもしれない女。


 その正体を知りたいと思う者は、少しずつ増え始めていた。

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