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第13話 感想戦


 楸が目を覚ました後も、ジムの空気はどこか落ち着かなかった。


 プロの選手がスパーリングで倒された。


 しかも相手は高校一年生の女子。


 ざわつかない方がおかしい。


 当の本人だけは平然としていた。


「本当に大丈夫ですか?」


 雛が心配そうに聞く。


「大丈夫だ」


 楸は苦笑した。


「気絶しただけだしな」


「良かった」


 本気で安心した顔だった。


 だから余計に怖い。


 周囲の会員達も同じことを思っていた。



 しばらくして、三人は休憩スペースへ移動した。


 スポーツドリンクを飲みながら楸は雛を見る。


「なあ」


「はい」


 だが先に口を開いたのは雛だった。


「あんな闘い方されたの初めてでした」


 素直な感想だった。


 速さでは勝っている。


 力も勝っている。


 それなのに思うように攻撃できなかった。


 今まで経験したことのない相手だった。


「上手いですね」


 楸は思わず笑う。


「うっかり殺されるんじゃねえかとヒヤヒヤしたわ」


「え……」


 雛が固まる。


 そんなつもりは無かった。


 かなり手加減したつもりだった。


 その反応を見て楸は肩を竦める。


「お前の技、格闘技じゃねえよな」


 雛は首を傾げた。


「古流の暗殺術とかか?」


「えっと……」


 少し考える。


 どう説明したものか。


「お父さん流です」


「は?」


 楸が真顔になった。


「いや、正しくはお父さんとおじさん流かな?」


「余計わかんねえんだけど」


 美玲も頷く。


 全くわからない。


「ちゃんと教わった訳じゃないんで」


 楸は黙った。


 数秒考える。


 考えるだけ無駄だと悟った。


「まあいいや」


 雛は少し安心した。


 説明が難しかったので助かる。



「それより」


 楸は話題を変える。


「お前、プロになってみる気ないか?」


 美玲が目を丸くした。


 雛は少し考える。


「うーん……」


 数秒悩んだ末、首を横へ振った。


「たまにスパーリングするくらいなら」


「いや」


 楸は思わず突っ込む。


「プロでも十分やれると思うんだが」


 実際そう思っている。


 競技経験は少ない。


 総合格闘技の技術もまだ荒い。


 だが身体能力と技術の質が異常だった。


 磨けばとんでもない選手になる。


 それは間違いない。


 だが雛は困った顔をした。


「手加減難しいんで……」


 楸の背筋を寒気が走る。


 思い出す。


 胸へ触れた拳。


 あの瞬間。


 何をされたのか今でも分からない。


 だが危なかったことだけは分かる。


「……」


 楸は黙った。


 美玲は黙れなかった。


「そういう問題なの!?」


 思わず立ち上がる。


 周囲の会員達も深く頷いた。


 誰もが同じ気持ちだった。


 雛だけが首を傾げている。


 何故そんなに驚かれているのか。


 本気で分からなかった。

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