お姉ちゃんのことはわたしが守るんだからねっ 1
吉屋信子先生の『花物語』に憧れて、百合っぽい何かを…
朝日が顔を出すほんの少し前、新発田響は目を覚ました。
家族の誰よりも早く起きるのが響の日課である。
お布団をいそいそとたたんで押入れにしまうと、自室を飛び出して玄関に向かう。
一軒家である新発田家のドアを開けると、十二月の冷え込んだ空気にキュンと身震いさせた。新聞朝刊をポストから取り出して空を仰ぐと、
「おはよーっ、おはよーっ。小鳥さんもおはよーっ!」
空の彼方がようやく赤白く色味がかって雀たちがさえずりはじめた頃、響はひとつ大きく伸びをして元気よく言葉を吐き出した。
「うーん、雲ひとつない良いお天気! 今日も一日いいことがありますようにーっ」
☆
誰も居ないリビングルームに足を運ぶと、テーブルの上に朝刊をポンと置く。
その足で響は台所に向かった。
母の起床時間までは、まだ十分ほどある。
あまり料理は得意でないけれど、家族のために朝食のトーストや、ベーコンや目玉焼きを炒めたりするぐらいなら響だって……と、そんな事を思いながら、早起きの響は頑張ってみる。
そして、あまり見栄えのよろしくない目玉焼きをキッチンのテーブルに運んだところで、両親の寝室から目覚まし時計が鳴った。
「おとーさん、おかーさん。朝だよ起きないと!」
寝室に向かって響が明るく叫ぶと、ジリジリと音を立てていた目覚ましがやがて止まり、少ししてふすまが開く。
「……んあーっおはよう。もしかしてお母さん寝坊しちゃった?」
「おはよーお母さん、ジャスト六時なのです。いつも通りの時間だよ!」
「そっかよかった。あなた、そろそろ起きてよー」
寝癖たっぷりの髪の毛をわさわさとやっている母は、振り返っていまだに布団の中で丸まっている父に声をかけた。
「……ワンっ!」
父はくぐもった声で気のない返事を布団の中から返した。
「それじゃ響はお姉ちゃん起こしてくるから」
「あーうん、朝ごはんもう用意したの?」
「目玉焼きとベーコンはね! あとはパン焼いてるからオーブンから出しといてー」
響はそうお願いすると、二階に走り出した。
「お父さん、いいかげん起きてくださいってば!」
「う~ワンっ……」
両親の会話が遠ざかっていく。
☆
家族の中で一番最後に起きるのは響の姉、奏だ。
「お姉ちゃんー起きてー、朝だよーっ!」
せわしなく尻尾を振った響は、寝起きの悪い姉の部屋に入るとまっさきにカーテンを開けた。
「朝だよー、もう朝ごはんの準備もできてるよ、お姉ちゃんってばー」
お布団の中で一度だけ「んんんっ」と小さくもだえた奏だけど、そのまま体の向きを帰って寝息をかきはじめる。
「ほらもーっ、起きてこないとお姉ちゃんに悪戯しちゃうんだよ?」
鼻息ひとつ吹かせた響は、エッヘンと腰に手を当てて悪戯っぽい表情を浮かべる。
それでも奏に反応がないものだから、頭の上にチョコンとのぞかせた耳を立てて、響は「にっひひひ」と声を漏らした。
そのまま姉のベッドへダイブだ。
「うぎゃー! ちょっと響なにすんのいきなりっ。起きるよ起きるから離れなさい!」
ボフリと音を立てて飛びついたものだから、驚きと重さで奏は飛び起きるけれど、じゃれついた響はなおも騒ぐ。
「そんなこと言って、響がのいたらまた寝ちゃうんじゃないのお姉ちゃんっ。騙されないよー」
「わかったわかった、ちゃんと起きるからお姉ちゃん。だから尻尾をフリフリしないっ。ベッドからおりてーっ」
これが毎日繰り返される新発田家の日常だった。
C83ケモミミ合同誌に寄稿した作品になります。




