お姉ちゃんのことはわたしが守るんだからねっ 2
新発田家の姉妹で、響にあって奏に無いものがある。
それはぴょこりと頭に飛び出した二つの耳と、お尻から伸びた巻き尾だった。
小柄で元気いっぱいの響はまるで仔犬のようだったが、どうしてそれが響の体にあるのか、それは誰も触れなかった。
けれど、少なくとも響はそれが当たり前の事だと思っていたし、新発田家のみんなも当然のこととして受け入れていた。
☆
テーブルの上には響の用意したトーストにベーコンと目玉焼き、それから昨夜の残り物のサラダ。
それに加えて響はヨーグルトを食べるけれど、姉の奏はなぜかそこで納豆を食べるのだ。
ちょっと不思議な組み合わせだけど、そんなことを奏は一向に気にした様子もなくぐにぐにと納豆をかき混ぜる。
「うーっ。納豆が臭うよぉ」
「なに、あんたも食べたいの?」
ベッドでの仕返しとばかり、ニヤリとした奏がぐにぐにしながら聞き返す。
「納豆嫌い、いらない。だいたい絶対変だって、パンと納豆の組み合わせ」
頭上の耳をしおれさせて響が返すと「美味しいのに~」と言いながら奏がそれを口に運んだ。
そんな二人のやり取りが会った後。
食事を済ませ、せわしなく身支度を整えた姉妹は学校へ向かう時間を迎えた。
もちろん、先に用意を終えて玄関前で待っていたのは響の方だ。
「ほらーお姉ちゃん行くよっ」
「女の子は身支度にちゃんと時間をかけないと駄目なのっ。響はちゃんと忘れ物ないか確認した?」
「うんっ大丈夫だよ」
「それじゃこの体操服はなんなの?」
体操着の入ったビニール巾着を差し出す姉に、
「あ、いっけない」
響は舌を出して笑った、
「んもぅ。それじゃあいってきまーす」
「いってきまーす」
玄関ドアを閉めながら元気よく挨拶がかさなった。
自宅からふたりの通う学校までは、徒歩で十五分ほどの距離だ。
仔犬のように耳と尻尾はあるけれど、響は地元市立である欄坂中学校のれっきとした二年生だ。
もちろん奏も去年までは欄坂中学校に通っていた卒業生。今はそのすぐ向かいにある県立高校に通っている。
響も地元県立に進学すれば、当分は一緒に学校に通えることになる。
そんな未来へ密かに思いをはせながら、時おり響は奏の腕に手を回してひしっと抱きついたりする。
「ちょ、どうしたの響ぃ」
「ううんーなんでもない。ただお姉ちゃんに甘えたかっただけ!」
「んもう、いつまでたっても甘えん坊なんだから響は」
ちょっと気恥ずかしそうな顔をするけれど、それを許してくれる奏のことが響は大好きだった。
そうしていつもと変わらない登校時間をすごしているうちに、姉妹は県立高校の生徒通用門前へたどり着く。
欄坂中学の校門は高校の少し先だ。
「じゃあ響またね」
学校指定鞄を背負いなおした奏は、きびすを返して響を見やった。
「あ、お姉ちゃん今日は早く学校終わる日だよね?」
「うんまあそうだけど、どうして?」
文芸部に所属している奏は週のうち三回ほど部活動に顔を出している。そして今日は確か部活のない日だったはず。頭の中でそれを確認した響は、
「学校終わったら一緒に帰ろうよー」
嬉しそうにそう口にしたけれども、姉の方はバツが悪そうに妹を見やった。
「あ、うんえっと」
「響待ってるから、高校の校門前で!」
何か言いかけていた姉をさえぎるように、響は派手に尻尾をばたつかせながら元気よく言った。




