水着なんていらない! 3
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そんな勉強漬けの生活が続けられた四日目。
この日だけは中休みという事で、昼間は自由行動が許されていた。
何しろ合宿をした宿泊施設は、湖のすぐそばにあるのだ。健全な少年少女高校生がこん詰めて勉強ばかりしていてもよろしくない。
休憩時間もしっかりはさんで効率よく学ぶべきだ、という配慮があったかどうか定かではないけれど、とにかく合宿に参加した生徒たちは自由時間をゆるされたのだ。
「水着って、どういう事だよあかねっ!」
六人一組、自分たちにあたえられた部屋で瑞希の叫びがこだましたのは、その日の朝だった。
「見ればわかるでしょう? 湖畔に来たのだから泳ぐのよ、そのための水着」
「そ、そんな事は聞いてねえぞ!」
「あなたもしかして、水着持ってきてないの?」
茜は呆れ顔だ。
「……ねーし。勉強合宿に来たんだから水着なんていらないだろ普通!?」
「それは建前のはなしでしょう」
「たてまえ、だと?」
「そもそも、よ。合宿だって仏光寺君が参加しているからって理由で来たようなあなたが、どうして事前チェックをしていなかったのよ」
「だ、だって合宿の案内には書いてなかったし」
「書いてなかったけれど、湖のそばにある合宿所に来たのだし、中休みの日は自由行動の時間があるのだから、水着を持参するのが女子のたしなみでしょう?」
「むぅ……」
「ましてや彼氏も一緒に合宿に参加しているのだから、水着姿の自分をアピールするチャンスってものよ」
「す、スク水をか……? それなら輝夫も見慣れていると思うけど」
そんな風に返した瑞希に、
「あなた、本気で、そんな事を言っているの?」
「んだよぅ……」
「プライベートでスク水とか、ありえないわ! ワンピとかビキニとか、普通はそういうの選ぶでしょ」
ちなみに、瑞希はかなづちなので学校用の水着以外は持っていない。
「それとも仏光寺君は、スク水大好きな特殊性癖の持ち主なのかしら」
「い、いや。そういう話は特に聞いていないぞ」
「ならよかったわ」
「ていうかよ。あたし泳げないし、別に泳がなくてもいーし」
「じゃあ中休みの日は何して過ごすつもりだったのよ」
「いやー、最近ゆっくり睡眠とってなかったし、自習室でクーラーにあたりながら昼寝でもしようかと」
「それじゃせっかくの休みの日を満喫出来るとは言えないじゃない。ちゃんと健全な高校生らしく遊ばないと」
「水着がないと湖畔で遊べないだろ!」
顔を真っ赤にして瑞希が言い返した。
「遊びたくても、水着もねーし。どうしようもねえょ」
「……はあぁ瑞希あなた。泳ぐとか泳げるとか、水着があるとか無いとかはどうでもいいの。せっかく仏光寺君とひと夏の思い出を作るっチャンスなのよ」
諭すように茜が言うと、
「確かにそうだけど……」
「この際あなた。水着なんてどうでもいいから、ラフな格好をして水辺に仏光寺君を誘いなさい」
「ラフな格好って……」
「ティーシャツにハーフパンツとか。さすがに下着姿はだめだけど」
「と、当然だろそんなの。あたしは露出狂か!」
「ふん。誰も見てない朝方ならそれもありかもしれないけど……」
提案する茜は、瑞希の持ち込んだボストンバックをひっくり返して何か水着替わりになるものを持ってきてないか服を確かめる。そのうちのひとつをひょいと持ち上げて、
「そう言えばあなた、スパッツ持ってるじゃない」
「あるけど、寝巻きがわりの」
「それよ! それをはいて湖に行きなさい!」
「う、上はどうするんだよ。それに濡れたら透けちゃうし……」
「ティーシャツでいきましょう」
「ちょっとまて、透けたらどうするんだ、透けたら」
「そんなもの、濡れなければどうという事はないわ。それにもし、」
「もし何だよ……」
「濡れて透けたら、喜ぶのは仏光寺君んでくれるわね。だから何も問題ないのよ」
微笑を浮かべて言った茜の言葉に、瑞希は唖然とした。




