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イテルニア黙示録 第一部 「終わりを知らない空の下で」  作者: 蝉
グレンツ防衛線

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エピローグ

 骨は袋一つに入った。


 布を二重にして、上を紐で絞ってある。抱えると胸の前で収まる。ダグマー・クレフトはそのまま広場の端に立っていた。ネッケルのパーティの治癒師だ。

 広場の雪は踏み固めてある。端に土の山が一つあって、踏んだ雪がそこだけ切れていた。出た朝にヒルデの壁が崩れた跡だ。

 山の上と山の脇に筵(むしろ)が三枚。間を空けて置いてある。この町のギルド支部から出た二つのパーティの二人と、領主の館の兵が一人だ。

 袋を置く場所は無い。


 町の者が出てきて、筵(むしろ)の前で膝をついた。一人がつくと次の一人もつく。この町ではそうするらしい。

 支部の二人はどちらもこの町に家を持っていない。その二人の名を呼ぶ者はいない。それでも膝はつく。

 ネッケルは立ったままだ。パウルもヒルデも立っている。町の者が膝をつくのを、三人とも見ているだけになる。


 ダグマーは南の下り道にいた。

 北で何があったかは戻ってきた者から聞いただけになる。ブルーノが死んだのは北の丘陵(きゅうりょう)の底だ。土で塞がれた岩の切れ目を背にして、下がる先が無かった。盾は割れていない。

 聞いた話は順に並ぶ。並んでも見たことにはならない。


 ブルーノを焼くための木は、パウルとヒルデとネッケルが積んだ。日が落ちてから火を点けた。そのあいだダグマーは南の筵(むしろ)の脇にいた。

 戦いの最中、胸を突かれた男に先に着いたのはこちらだ。布で押さえて、加護が乗るのを待った。乗る前に息が止まった。

 あの男の顔なら覚えている。



――――――――――――――――――――



 薬嚢(やくのう)は肩から下げたままだ。


 中の物には順番がある。先に使う物が手前で、後で使う物が奥だ。並べたら触らない。触れば順番が崩れて、暗い所で手が迷う。

 骨の袋は、抱えるのか、下げるのか、背へ回すのか。どう持てばいいのかが分からなかった。


 詰所の戸が少し開いている。誰かが内側からこちらを見ていた。出てはこない。


 パウルが広場を横切ってきた。背に盾がある。あの底で腕から抜いて、それからずっと背にある。


「代わりましょうか」


「このまま持ちます」


 パウルはそれきり黙った。報告のときは図まで描く男が、ここでは一つも足さない。

 盾の縁へ指を掛けて位置を直した。留め革が鳴る。


 ブルーノは留め革を二度締めていた。名を呼ばれたときに一度、呼び終わってからもう一度だ。革が伸びていたのだろうか。

 風が出て、筵(むしろ)の端が一度持ち上がった。

 ダグマーは袋を抱え直した。布の中で骨が動く。


「留め革を二度締めるわけを、誰かに聞いたことがありますか」


 パウルが言った。盾の方は見ていない。


「ありません」


「私もありません」


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