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クラス転移、もらったスキルは『休憩所』  作者: 四葦二鳥
フィオーレ公国編

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第33話 森の奥に潜む超巨大な元凶

「……まさか、小さな虫のようなカラクリ魔物がマシントレントの元凶だったとは……」

「その通りです、おばあさま。まさか木の内部を食い荒らす、害虫のようなカラクリ魔物がいたとは思いもしませんでした」


 深いため息とともに呟くエステル公王に、隣に立つマーガレットさんが大きく頷く。

 白川さんの治療が無事に終わった後、僕たちはピアンタへと戻り、マシントレントの研究結果を詳細なレポートにまとめてエステル公王へ報告したのだ。


「そして、このカラクリ魔物を輸送する存在がいる……。そうあなた達はお考えなのですね?」

「おっしゃるとおりです、公王陛下。あの虫型カラクリ魔物の移動能力を考えると、誰かが裏で運び込んでいる『輸送担当』がいると考えるのが自然ですから」


 僕たちの言葉に、エステル公王はしばらく腕を組んで思案していたが、やがて眼光を鋭くして威厳ある号令を発した。


「まず、このマシントレントを作り出す虫型カラクリ魔物のことを『タルロ』と名付けます。以後、そのように呼称するように。――そして、タルロを運んでいる存在を、全力を挙げて捜索しなさい!」


 それからというもの、フィオーレ公国軍は昼夜を問わずタルロの輸送役を捜索し始めた。

 広大な森林が相手だけに結構時間がかかるかと思われたのだが……なんと一週間もかからずに発見に成功してしまった。広大な森林を捜索するので何ヶ月もかかるかと思っていたのだが、意外と早く見つけたのだ。


 しかも、それを見つけたのはフィオーレ公国の精鋭兵ではなく――。


「郡上君が一番早く見つけたんだね」

「ああ。能孫村で買った4WDがめちゃくちゃ役に立った。それと、『これを使え』って徹夜で作ってくれた視覚と聴覚の強化薬だ。……あいつら、完全に裏方に回る覚悟を決めたみたいだな」


 そう言って薬の小瓶を揺らし、嬉しそうに笑うのは郡上君だ。 実は大滝君が原料となる植物を生成し、白川さんが調剤した『視覚強化薬』と『聴覚強化薬』おかげで、夜間の鬱蒼とした森林地帯であっても目標を発見できたのだという。 ちなみに白川さんと大滝君の二人は完全に裏方に徹していて捜索に出ていないのだが、二人のスキルの特性を考えれば、それが一番合っている役割分担だろう。


 そして、実際に捕獲されたタルロの輸送役だが――。


「なんか、モスカに似てるな」

「っていうか、普通のモスカより2倍はデカくね?」

「それに、タルロを格納するためのコンテナを抱えてる」


 僕たちが取り囲んで検分しているのは、カラクリ魔物の中でもアントと並んでよく見かける空中戦力『モスカ』をそのまま二倍ほど巨大化させたようなカラクリ魔物だった。こんな巨大な存在がなぜ今まで気付かれなかったのか不思議だったのだが、森林地帯という視界の悪さに加え、驚くほど静かに飛行する圧倒的な『静音性』を備えていたかららしい。

 実際、郡上君も薬品で視覚と聴覚を強化していなければ気付けなかったと言っていた。


「他にも何体か見つけたんだが、そっちには発信器を取り付けておいた」

「あ~、ウチと大滝で作ったあの発信器ね!」


 そう言って日向がドヤ顔を決める。 実は能孫村で買った事務用の白紙シールをベースに、大滝君が作った『特殊な光を発する胞子を出す植物』と『ダイヤモンドタマムシの羽』を組み合わせ、成美の『デコレーション』スキルを発動して作り上げた特製の発信器なのだ。これがあれば、僕たちが休憩所で買ったスマホから発信器の位置を特定でき、タルロをばら撒いた後にアイツらがどこに向かうのかをバッチリ追跡できるというワケだ。

 正にクラスメイトたちのスキルのコンボと言えるだろう。


 そうしてこの発信器を頼りに数日間追跡を続けた結果、輸送役たちがぞろぞろと集まっている『目的地』が判明した。


「これは――ピアンタ大森林の深部か?」

「どんな場所なんだ?」

「フィオーレの人間でもあまり立ち寄らない場所だ。日常的に用がある場所ではないからな。かつては時節調査や探検のためにごく少数が足を踏み入れる程度だったそうだが……魔王が出現してからはそんな余裕はないからな、そこまで行く人間はもういない」


 得られた追跡結果を即座にエステル公王へ報告すると、公王は郡上君を中心とした精鋭の偵察隊を編成し、現地へ派遣することを決定した。ちなみにこのタイミングで、あの巨大モスカの正式名称が『コリエレ・モスカ』に決定した。


 それから一週間程が経過した頃、深部へと向かった偵察隊が無事に帰還した。


「公王陛下、報告します。見たことのないような巨大なカラクリ魔物が発見されました」


 そう言って、郡上君はスマホの画面に表示した写真をエステル公王に見せる。

 そこに写っていたのは――現代日本の高層ビルにも匹敵するような、『巨大なバラ』としか形容できない、禍々しくも美しい機械の構造物だった。


「このカラクリ魔物に大量のコリエレ・モスカが出入りしていました」

「となると、この超巨大カラクリ魔物がタルロやコリエレ・モスカの生産元である可能性が高そうですね。……そうなると、この地に根を張る『楔の魔物』の可能性があります」


 エステル公王の言葉に、周囲の空気が緊張で固まる。 ――『楔の魔物』。 魔王の存在をこの世界に留めておくために必要な存在で、他の魔物とは比べものにならない力を持っているとされる。そして、最終的に魔王を撃破するためには絶対に倒さなければならない目標でもあるのだ。


「これより、この楔の魔物と思わしきカラクリ魔物を『ローザ』と呼称します。そして全軍を持って、ローザの討伐を行います。準備に取りかかりなさい!」


 エステル公王の力強い号令で、ついに『ローザ討伐作戦』が決定された。

 そしてそれは同時に――僕たち転移者にとっても、初めての『楔の魔物』との全面対決となることを意味していたのだった。

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