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クラス転移、もらったスキルは『休憩所』  作者: 四葦二鳥
クラス転移とチート覚醒編

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第13話 バグり電波と電撃波

 フードコートで懐かしい味を楽しんだ後、日向と一時解散した僕は、再び武器屋へと戻って自分用の武器を探し始めた。 今まで使っていた、弘前さんから譲り受けたあの立派なエストックは、一対一の堅実な戦闘には非常に強かった。けれど、刀身が細くて刺突に特化しているため、今回のようなカラクリ魔物の大群を相手に立ち回るのには不向きだ。そもそも一般兵並みの今の僕の筋力では重くて取り回しにくいな、と常々思っていた。


 というわけで、機動力と対多数を意識した武器の刷新をしようと専門店にやって来たわけだが。


「……うわ、やっぱり銃器はどれも目玉が飛び出るくらい高いな」


 棚に並ぶ自動拳銃やアサルトライフルといった近代兵器は、どれも性能が良いぶん高額だった。ハンドガン一丁でも数万Vは軽く飛んでいく。僕の手持ちの資金では、弾薬代も含めたら明らかに予算オーバーだった。


「そうなると……手頃で使い勝手そうなのは、これか」


 僕が目を留めたのは、ショーケースの中に並んでいた『電気警棒』だった。 王城の座学で学んだことだが、カラクリ魔物は金属部品と魔導回路で動いているため、一般的な電気機器と同じく外部からの高電圧に弱い。だからこそ、カラクリ魔物との戦闘においては雷魔法を得意とする魔法使いがめちゃくちゃ重宝されているらしい。 最近になって、一部の新型に電気対策を施した個体が確認されたという不穏な情報もあるが……今はそれを気にしても始まらない。

 とにかく、バチバチと強力な電圧を放つ電気警棒であれば、あの金属のアントやモスカにも効果が期待できるはずだ。何より、お値段も5000Vと非常に手頃なのがありがたい。これなら予算を大幅に残せる。


 迷わず電気警棒を購入した僕は、すぐにモール端の巨大な訓練施設へと移動し、ベンチに腰掛けて日向の到着を待った。


「あ、ゆーっちいた〜! お待たせだし!」

「いや、時間ピッタリだよ。日向の方はお目当ての買い物、できた?」


 合流した日向の両手には、パンパンに膨らんだビニール袋がぶら下がっていた。

 中身を見せてもらうと、カラフルなラインストーンや様々なデザインのシール、そして不思議な液体が入った小瓶が大量に詰まっている。


「デコショップ見つけたからさ、テンション上がって色々まとめ買いしちゃった!」


 そういえば昨日、銀行にいたハトピーが「モールにブレイキーカスタム用のデコレーションショップがある」って言っていたな。日向はそこに直行していたらしい。


「それでさ、ゆーっちは良い武器見つかった?」

「うん、これにした。電気警棒」

「おー, なるほどね! しかも伸縮式の折りたたみタイプじゃん。……よし、それじゃあ邪魔にならないように、ウチがちょちょっと手を加えてあげるし!」


 そう言うと、日向は僕の電気警棒をひったくるように受け取り、ベンチの上で手際よくラインストーンを貼り付け始めた。

 持ち手のグリップ部分を中心に、黒のラインストーンをベースとして敷き詰め、その上に鮮やかな黄色のラインストーンで幾重もの放物線を描き出していく。まるで電流の奔流をデザインしたかのような、実にクールな仕上がりだ。


「よーし、これで完成! 試しにスイッチ入れて振ってみて?」

「えっ、もうできたの? わかった、やってみる」


 僕は訓練場の受付にいるハトピーに声をかけ、テスト用の人型ターゲットを前方へ数十個出現してもらった。 グリップを握り込み、引き出し式のシャフトを伸ばして起動スイッチを入れる。その瞬間、警棒から走ったバチバチという青白いスパークが、デコられたラインストーンの軌道に沿って不気味なほど強く輝いた。 僕は目の前のターゲットに向けて、電気警棒を鋭く一閃させた。


「……っ、おお!?」

「大成功じゃん、すごっしょ?」


 警棒を振り抜いた瞬間、なんと先端から目に見えるほどの電撃の刃が飛び出したのだ。 ゲームでよく見る『飛ぶ斬撃』のようなビジュアルの電撃波。その後も何度か警棒を振るって検証してみると、放たれる電撃の性質を自分の意思で細かく操作できることが判明した。

 電撃を鞭のようにしならせて複数の敵を薙ぎ払ったり、何本にも枝分かれさせて広範囲を攻撃したり、あるいは警棒自体に巨大な電気の刃を纏わせてリーチを延伸させたり。 さっき買っただけのただの警棒が、とんでもない雷魔導兵器へと進化していた。


「これがウチのスキル『デコレーション』の真価だし、なーんてね! 電気警棒の電気出力を爆上げして、電撃を自在にコントロールできるように改造してみた!」

「なるほど、これがデコレーション……凄まじいな。ところで、日向自身の武器はどうするの?」

「ウチは、今まで使ってたあの剣をデコり直すつもり!」


 確か日向は、王国から支給された練習用の剣に、スキル検証用として渡されていた宝石類を贅沢にデコっていた。そのおかげで、練習用のおもちゃ同然だった剣が、一流のベテラン傭兵が使うような業物レベルにまで性能向上していたはずだ。


「あのデコ剣を、今回の包囲突破作戦の要にするし。他にもブレイキーとかスマホケースを色々デコれば、あのカラクリ魔物の群れだってなんとかなるはず!」

「了解。頼りにしてるよ。作戦準備には、あとどれくらい時間が必要そう?」

「うーん、デコの構成をじっくり練りたいから……あと一日待って!」

「わかった。じゃあ、明後日を決行日にしよう」


 僕達はモールで必要な食料などの消耗品を追加で購入し、その日と翌日はマイホームで作業したり訓練場に行ったりして、カラクリ魔物の大群を迎え撃つための徹底的な準備に費やしたのだった。


***


 二日後。僕と日向は有降町の駅前ロータリーに立っていた。


「それじゃあ行くよ、日向。準備はいい?」

「いつでも来いだし! ウチを追い回したお返しに、まとめてスクラップにしてやるし!」


 僕は左手を構えて念じ、目の前の空間に真っ白な光の穴を開けた。 有降町のゲートを潜り抜け、光のトンネルを突破する。 次の瞬間、肌を刺すような冷たい空気と、鬱蒼とした異世界の森の匂いが僕達の五感を満たした。


「うわ……マジかよ。全然散ってないじゃん。執着っていうか、もはや執念深いストーカーだろこれ」


 光が収まった視界の先。やはり、数十体のアントとモスカの群れ、そしてあの巨大なアンテナを背負った指揮官機が、僕達が消えた大樹の周囲をじっと包囲したまま徘徊していた。 僕達の出現を察知し、カラクリ魔物たちのセンサーが一斉に赤く輝き、不気味な金属駆動音を響かせる。


「群がってくる前に、作戦通りにやるし!」


 日向は鋭く叫び、デコった例の剣を地面へと力強く突き刺した。 そして、紫をベースにした禍々しい雰囲気にまとめ上げられた、デコ付きブレイキーのケースを左手でしっかりと握りしめる。 ケースに貼り付けられたラインストーンが輝き、日向がその機能を発動させた。


「起動だし!!」


 直後、僕達に向けて一斉に突撃を開始しようとしていたアントやモスカたちの動きが、ピタリと止まった。

 それどころか、関節をガタガタと震わせ、駆動部から火花を散らしながら、お互いに衝突し合うように不自然な千鳥足を踏み始めている。


「大成功じゃん! バグり電波、超うまくいったし!!」


 日向がデコったブレイキーケースは、カラクリ魔物が相互に行っている通信ネットワークに干渉し、強制的に動作不良を引き起こすジャミング電波を放つ。 ただ、日向曰くケース単体の出力だと、どうしてもナイフを突き刺せるくらいの極至近距離にしか電波が届かないという弱点があった。

 そこで、アンテナだ。練習用の剣の柄から刀身、そして鋭い切先に至るまで全てに電波伝導率を高めるデコを施し、地面に刺すことで巨大な簡易アンテナ塔へと変貌させたのだ。 これによって、群れ一つを丸ごと飲み込むほどの広範囲にジャミングを伝搬させることに成功した。


「敵の指揮系統は完全に麻痺してる。後は僕の仕事……食らえ!!」


 僕はバチバチと青白い閃光を放つ電気警棒を構え、動作を停止しているカラクリ魔物の群れに向けて横一閃に振り抜いた。 警棒から放たれた扇状の巨大な電撃波がバヂバヂバヂッという電気的な激しい爆音と共に、アントとモスカの群れをなぎ払う。超高電圧の雷撃は、一網打尽と言わんばかりにすべての個体に容赦なく伝播していった。

 やがて、バチバチという放電の残響と共に、すべてのカラクリ魔物が煙を吹きながら地に伏した。


「……やった、のかな?」

「ちょっと待って、索敵するし」


 日向は新調したスマートフォンを起動させる。 彼女のスマホケースには、まるで生きているかのようにギョロリとした大きな瞳をあしらったデコレーションが施されていた。

 このケースに付与された機能は『魔物探知』。不気味だが、周囲に潜む魔物をレーダーのように画面に可視化してくれる。


「……うん、画面の反応はオールクリア! 敵影は一切無いみたいだし!」

「つまり……突破できたんだね」

「うんっ! ウチら、完全に生き延びたんだし!!」


 嬉しさが限界突破して、僕達はどちらからともなく互いに強く抱き合って喜びを爆発させた。

 日向の柔らかい体の感触と、風呂上がりのような甘いシャンプーの香りが胸いっぱいに広がって、生きている実感が全身に染み渡っていく。

 ひとしきり抱き合って落ち着いた後、僕達は少し照れくさそうに離れた。


「よし、それじゃあチェントロに帰ろうか。もちろん、廃品回収も忘れずにね」

「ふふっ! これだけの量のアントとモスカの残骸があれば、ギルドで山ほど換金できるじゃん! やっぱお財布が潤うのは嬉しいし!」


 転がっている全ての魔物からテキパキと動力源の魔石を回収し、アイテムボックス仕様の僕のリュックへとカラクリ残骸ごと丸めて放り込んでいく。戦利品をこれでもかと詰め込んだ僕達は、二人仲良く肩を並べて、夕暮れに染まり始めた王都チェントロへの帰路に就いたのだった。

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