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因縁の闘い



……私は、暁様の用心棒として白狐楼で勤務することになった。冥界に足を運び入れる物好きはそうそう居なかったので、毎日鍛錬を欠かさず行い、自身を戒めていた。その姿を見ては暁様は『今日も頑張っているわね』と、私を褒めてくれた。



ある日のことだった。暁様に旦那様が居ることを聞いた。そのことを聞いた時は正直、とても驚いた。暁様は確かに美しい、しかし亡霊だ。亡霊を妻にする者なんて、奇怪な者に違いないと思った。さらに、その人は人間だという。ますます怪しいと思った。



しかし、話してみると案外気さくな人だったし、優しかった。暁様が旦那に迎えるのも納得ができた。その人は絡繰士、という職業に就いているようで、暁様や私にたくさんの面白い絡繰を見せてくれた。



旦那様には三人の娘さんが居る。よく冥界に来ては音楽を聴かせてくれる。静かな冥界には充分すぎる娯楽だった。上は賢く、様々な雑学や豆知識を教えてくれた。真ん中は強く、よく私の鍛錬の相手にってくれた。下は人懐こく、無愛想だと我ながら思う自分にもよく懐いた。



突然のことだった。旦那様が消息を絶ったのだ。暁様によると、たった一つの手紙だけが旦那様の部屋に残っていたという。『しばらく出かける。数年は帰ってこれない』とだけ書かれていたらしい。白狐楼、冥界全体、挙げ句の果てには顕界まで足を運んで捜索したが、旦那様は見つかることはなかった。



娘さん達は大層悲しんでいた。無理もない、今まで常に共にしていた父親が急に消えてしまったのだから。流石の私でも彼女達に同情した。そして同時に思った。



訪れる結末はやはり残酷なのだな、と……






シルヴァリオンは寂滅達に案内される。やがて感じる暖かいのか寒いのかよくわからない感覚。冥界に着いたのだと理解した。


寂滅「着いた、よ」


シルヴァリオン「ここに例の根の本体があるのなら、確かに見つからないわけだ」


音廻「とにかく、犯人を見つけ出してお仕置きしなくちゃ!」


寂滅「………ッ!!」


寂滅がその場に塞ぎ込む。


シルヴァリオン「大丈夫か!?」


「足の怪我が悪化したのか」


寂滅「……ごめん、これ以上は一緒に行けない。ここからは、三人で……私達が言うのもなんだけど……どうか、気をつけて……」


音廻「………」


音廻が寂滅に近づき、ポケットから布を取り出して寂滅の足に巻いた。


音廻「あとはエネルギーを送って……よし、さっきよりはマシになった?」


寂滅「……幾分かは。……ありがとう」


音廻「ああ、それと……幻さん……で良いんだよね?」


幻「……? うん……?」


音廻「全てが終わったら……お友達になろうよ。良い?」


幻「……! うん!! お友達!!」


音廻「よし、約束約束。それじゃ、行こう姉さん達」


「……何故あんな約束を?」


音廻「……私と同じ、お姉ちゃん子みたいだから、気が合うかなって思っただけだよ」



幻「……寂滅姉、足どう?」


寂滅「まだ少し痛いけど……もう少しすればまともに動けるようにはなるかな」


幻「……姉さん」


寂滅「うん?」


幻「……来てくれなかった……」


寂滅「…………」



――――――――――――――――――



シルヴァリオン一行は道なりに沿って進んでいた、その時


「!」


シルヴァリオン「敵襲か! 今の斬撃……氷翠殿を襲った奴だな!!」


神居「……まさか、あの方を破ってここまでやってくるとは……やはり、命を持ってしてでも貴方達を始末しておけばよかった」


シルヴァリオン「二人とも、奴は我に任せて先に行け!」


音廻「え!? 三人でやった方が速いんじゃ……」


シルヴァリオン「奴は黒幕の遣いに過ぎない! 先ほどの戦いでかなり時間を浪費した、これ以上無駄にすることはできない!!」


「……彼女の言う通りだ」


神居「ここから先へは進ませない。三人まとめて斬り刻む」


シルヴァリオン「汝の相手はこの我だァ!!」


神居「くっ!!」


シルヴァリオン「さぁ、あの時の続きといこうじゃないか!! 氷翠殿の仇、ここで討つ!」


神居「……桜が満開になる前に貴方を討ち、そしてあの二人も討つ!」


シルヴァリオン「この異変がどれほどの命を危機に晒しているのかわかっているのか!? 汝は命を軽視し過ぎだ……命の重さ、身をもって知れ!!」


神居は刀に霊力を纏わせると、シルヴァリオンに向けて斬撃を薙ぎ払う! 飛んできた斬撃をシルヴァリオンは高く跳んで回避、そして


シルヴァリオン「『クライオジェニック・カーディナル』!!」


氷柱の雨を神居にお見舞いする。神居は氷柱を次々と刀で受け流した。


神居「喰らえ!!」


シルヴァリオン「気弾!?」


神居の手から放たれた気弾をシルヴァリオンはギリギリで回避する。


シルヴァリオン「まさか、遠距離もイケるクチだとはな。念の為だ……『ガーネット・アーマー』!」


シルヴァリオンの周りに現れた紅の氷霧が、氷の鎧となってシルヴァリオンの身体に装着される。


シルヴァリオン「疾さを上げるぞ、覚悟しろ!!」


シルヴァリオンは氷柱を神居に吹き、その直後突進する。神居は氷柱を薙ぎ払い、シルヴァリオンの攻撃を受け止める。そして訪れる乱撃の嵐!


神居「……閃ッ!」


シルヴァリオンは斜め下から繰り出された攻撃を身体をくねらせることで回避、そのまま神居を蹴り飛ばす!


シルヴァリオン「しまった、物陰ばかりの場所に突き飛ばしてしまった。地形を把握している分、相手が有利か……」


神居「………!」


シルヴァリオンの背後から飛ばされる斬撃、シルヴァリオンはそれを避けると反撃に氷柱を三本飛ばした。飛ばされた氷柱が神居の脇腹を掠める。


神居「ぐ、反応が速い……!?」


シルヴァリオン「汝の奇襲の仕方は『あの時』既に把握している。そしてここは汝の縄張りに在らず……」


シルヴァリオンは大量の氷柱を生成し、一気に放出!


神居(なっ、この大量の氷柱をどこへ投げている? 遮蔽物があることを承知で投げるだなんておかしいぞ)


そこで神居は何かが弾ける音がした、氷柱が跳弾していると理解した!


シルヴァリオン(たまらず出てきたようだな)


神居「………」


シルヴァリオン「………?」


神居「虎は何故強いのか……それは元々強いからだ。最初から強いのだから、鍛錬などしなくても他者を圧倒することなど容易だ。しかし、それは刹那の間だけ。鍛錬を怠り続ければ、やがて鍛錬し続けた他者に超される。だから兎は亀に負けた」


シルヴァリオン「何が言いたい……?」


神居「そんなことにならないよう、私は鍛錬を続けた。一日も怠った日などなかった。だのに……目の前の体たらくにこんなにやられるだと? 情けないにもほどがある!!」


シルヴァリオン(刀を納めた……何をするつもりだ!?)


神居は斬撃を五発放った。シルヴァリオンは回避し、受け流す。


シルヴァリオン(牽制からの突撃、さっきの我と同じやり方か!)


シルヴァリオンは氷柱を神居に放つ。神居は刀を地面に刺したかと思えば、高く跳躍した!


シルヴァリオン「何!?」


神居「うおおおおおおお!!!」


シルヴァリオン「ぐっ!!」


神居の攻撃により、シルヴァリオンの脇腹の装甲が砕け落ちる。


シルヴァリオン(氷柱に臆せず突っ込んできただと!? 完全に我を倒すことだけに執念を抱いている……あっさり装甲が剥がされてしまった……装甲がなければ、やられていた! さっきとはまるで雰囲気が違う、我を確実に仕留めるつもりだ!!)



――――――――――――――――――



蒼冬(……姉上達は、大丈夫だろうか)


氷翠「今から里中に雪を降らせるわ。みんな避難して!」


蒼冬「……! 氷翠殿!」


氷翠の左足に、地面から伸びてきた根が絡まる! 


氷翠「しまっ……!」


蒼冬「ふん!」


蒼冬が放った炎がその根を燃やし尽くす。


蒼冬「さぁ、早く雪を降らせろ!!」


氷翠は空高く飛ぶと、手を高く掲げた。直後曇天が現れ、雪が降り気温が急激に下がる……


蒼冬「……? 思ったより寒くない……根も活動を止めていない!?」


改めて蒼冬は氷翠を見る、彼女の胸に血が浮かんでいた!


蒼冬「なっ、傷口が開いたのか!?」


人間「た、助けてくれぇぇぇ!!!」


蒼冬「ああくそ!! 次から次へと!!!」


蒼冬は奔走した。奔走し続けた。里の人間達を異形の脅威から守るために。



――――――――――――――――――



シルヴァリオン(内蔵には届いていない……止血しなければ……)


シルヴァリオンは傷口に尻尾を当て、滲み出る血液を凍らせることで止血を行った。


シルヴァリオン「まずは、体勢を……ッぐ!!」


神居「避けられていたはずの攻撃が当たるようになった、終わりだな」


シルヴァリオン「……諦めたら試合終了、って言葉知らないのか?」


神居「結末が見えている闘いなど……意味などない!!」


神居は強く薙ぎ払った。シルヴァリオンは高く跳び回避を行う。それを見た神居は地面に刀を刺し、振り上げる。地面に出来た痕から数多の弾幕が!


シルヴァリオン「くそ!」


神居「もらった!」


シルヴァリオン「うぐ!!」


神居はシルヴァリオンの顔を掴み、地面に投げ落とす。


シルヴァリオン「が……『紅の絶対零度空間』……!」


神居「……『神速』!!」


シルヴァリオン「速い!? この極低温の中でもこれだけの速さで動けるだと!?」


神居「うおおおおおおお!!!」


シルヴァリオンは神居の背後にまわり攻撃を回避。しかし、そこで脇腹に激痛が走る。


シルヴァリオン「やはり、凍らせただけでは不完全か……!」


神居「……『神速』ッ!!!」


シルヴァリオン「紅の……やはり速い!! 発動が間に合わな……!!」


神居「散れ!!!」


その時、神居の手に何かがぶつかった! 紅い氷柱だ!


シルヴァリオン「消えずに跳弾し続けていたのか!?」


神居「邪魔だァァァァァァァ!!!」


シルヴァリオン「『紅の絶対零度空間』……これで終わりだ」


神居の周囲に現れた氷柱が、神居の身体に突き刺さっていく。


神居「………がはっ」


シルヴァリオン「…………」


神居「……ぐぅッ!!!」


シルヴァリオン「!!」


鳴り響いた金属音、その後に訪れた静寂。


シルヴァリオン「…………」


神居「………貴方の、勝ち、だ……」


神居は刀を落とすと、そのまま地面に倒れた。シルヴァリオンは大きく息を吐く。


シルヴァリオン「……がはっ、ぐ……体温が上がってしまった……しばらくは回復に専念しよう……」




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