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虎vs狼




シルヴァリオン一行が調査に向かったすぐ後のことだった。


蒼冬「急に根の活動が活発になった!? 本体の妖力の充填がもうそこまで来ているということなのか!? 寒いから動けないなどと抜かしている場合ではない!!」


蒼冬は追いかけてくる根を避けながら、人里に向かっていた。


蒼冬「……くっ、もう被害が!!」


たくさんの根が里の人間を襲い、生気を吸い取っている!


蒼冬「私の炎では、人間ごと焼いてしまう……どうすれば……寒ッ!?」


氷翠「私が休んでいる間……もうこんなに気温が上がっていたなんて……!」


蒼冬「氷翠殿!? いつのまに家を抜けていたのか!? まだ傷は癒えていないのだろう!?」


氷翠「一刻を争う状況なのよ!? このままじゃこの世界ごとあの根の苗床になってしまうわ!」


蒼冬「……私も手伝おう、無理はするなよ!」


氷翠「貴方こそ、私の冷気にやられるんじゃないわよ!」



――――――――――――――――――



シルヴァリオン(声が大きく……場所が近いな……)


「…………、危ない!!」


シルヴァリオン「!?」


音廻「うぎゃっ!!」


シルヴァリオン「音廻!」



???「よし、まずは面倒くさい子を撃破。不意打ちみたいな形であんまり嬉しくないけど」



シルヴァリオン「何者だ、姿を見せろ!!」


寂滅「私の名前は黄泉 寂滅……泣く子も黙る騒霊だよ」


シルヴァリオン「……汝は、根の件を知っているか。今あらゆる場所に現れては、生命の生気を吸い取って養分としている」


寂滅「……へぇ、それは……大変だね」


シルヴァリオン「だから……汝を捕まえて本体の居場所を吐いてもらうぞ!!」


シルヴァリオンは爪を剥き出し、寂滅に飛び掛かる!


シルヴァリオン「!」


寂滅「女の子に攻撃するなんて、ひどいことするなぁ」


シルヴァリオン(この女子、華奢な見た目なのに力がある!!)


「………!」


寂滅の背後から繰り出される剣! しかし、寂滅は背後を見ずにその攻撃を受け止めた!


「何!? 素手で受け止めた!?」


寂滅「こんな物騒な物振り回したら危ないでしょ」


「ぐはっ!?」


寂滅は剣を奪うと、持ち手で腹を打つ!


シルヴァリオン「大丈夫か!? くそっ!!」


寂滅「あの調子だと、しばらくは動けないね。さ、貴方はどうする?」


シルヴァリオン「やるに決まっているだろう……汝の知っていることを洗いざらい知らなくてはならないからな!!」


寂滅「私も貴方達を通すわけには……いかないんだよっ!!」


激しいぶつかり合いが始まった。シルヴァリオンが爪で寂滅を引っ掻こうとするが、寂滅はその攻撃を軽やかに回避し、シルヴァリオンの脇腹に蹴りを入れる。シルヴァリオンは反撃として咬みつこうとするが、それも避けられてしまう。


シルヴァリオン(力は互角でも、疾さは相手の方が上!? 我から常に出ている冷気を浴びても何も反応しないのか!?)


寂滅「貴方の身体、冷たいねー。でも私寒いのも暑いのも得意なの」


シルヴァリオン「くっ!」


シルヴァリオンは空間を冷やし、氷塊を生成して寂滅にぶつける。寂滅はその氷塊を受け止め、あろうことか握りつぶした!


寂滅「!」


寂滅の頬を冷たい何かが掠める。地面に紅い氷柱が刺さっている。


寂滅「なるほど、気を逸らす為ね」


頬に流れる血を拭うと、寂滅は空から降り落ちる氷柱を避けていく。


シルヴァリオン「いくら疾くとも、この氷柱の量ではうまく動けまい!」


寂滅「確かに、それは認めるよ。避けるのが大変だなー……」


シルヴァリオン(このまま一気に潰す隙を……)


と、その時だった。シルヴァリオンの脇腹に強い衝撃が伝わった。シルヴァリオンは吹き飛び、木に激突。たまらず術を解除してしまう。


シルヴァリオン(今のは一体!? 彼女の動きを見ていたが、怪しい動きなんてものはなかったはず!!)


寂滅「さて、と……」


寂滅は何かを手に取ると、シルヴァリオンに投げつけた!


シルヴァリオン「我の生成した氷塊、しかしそんな安直な軌道ではぶがぁ!!?」


避けたと思った氷塊が、シルヴァリオンの頬をぶつ!


シルヴァリオン「まさか、跳弾!?」


寂滅「貴方の作る氷、結構頑丈なのね。結構強くなげても大丈夫みたい」


シルヴァリオン「これでは間合いに入れ……がはぁ!?」


頭上からやってくる振動、それに加えて三弾の氷塊が深くシルヴァリオンの身体にぶつかる!


シルヴァリオン「自分の技に……やられるたわけがどこに居る!!」


シルヴァリオンは跳んできた氷塊を尻尾で掴むと、そのまま寂滅に投げた! 寂滅も同様に氷塊を投げる……


シルヴァリオン「へっ!」


寂滅「砕かれた!?」


シルヴァリオンが投げた氷塊は、寂滅が投げた氷塊を打ち砕き、そのまま彼女の額に突撃!


寂滅「あばぁ!!」


シルヴァリオン「これが……回転エネルギー……まさか今役に立つとは……さて」


シルヴァリオンは周囲に目を配った。しばらくして、木の隙間からやってくる光弾!


シルヴァリオン「さっきからたびたびやってくる妨害……どこかにもう一人が居るのか」


音廻「あー……ようやく頭回ってきた。まだぐらぐらするけど」


シルヴァリオン(彼女は音廻が一番面倒だと言っていた……つまり、ここは音廻が活躍する場面ということ!)


シルヴァリオンは音廻に指示をする。


シルヴァリオン「音廻! どこかに隠密行動をとっている者が居る、探しあてろ!」


音廻「え、わ、わかった!」


音廻は地面に手を置き、波動を巡らせる。しばらくすると……


音廻「……35°の角度から攻撃がくる!」


シルヴァリオン「!」


音廻の言った方角と同じ向きから光弾が飛んできた。シルヴァリオンはそれを弾き飛ばす。


シルヴァリオン「そこだ!」


シルヴァリオンは冷凍の息吹を光弾が飛んできた方向へ吹きかける。すると……



???「あっばばば!! 危なかったー……あ! ステルス解除しちゃった!!」



音廻「女の子? 私とおんなじくらいだー」


シルヴァリオン「さっきから邪魔していたのは、汝だったのか……」


「…………」


シルヴァリオン「あぁ、目覚めたのか。……何を?」


???「ひぃ……まって、ゆるして……あがっ!!」


シルヴァリオン「!?」


首を掴んで、持ち上げた。そのまま首を絞めていく。


「放っておいたら厄介な部類だ、悪いが戦闘不能になってもらう」


音廻「まっ、それはやりすぎじゃない!?」


シルヴァリオン「そのやり方では最悪死んでしまうぞ!!」


???「が………ぁぁ………」



寂滅「いてて……うわ、すごい血出ちゃった……ん?」



―――ねえさん、たすけてぇ……



寂滅「幻に手を出すなぁッッ!!!」


「ぐっ……!?」


意識を取り戻した寂滅が立ち上がり、強く体当たり。吹き飛び、木々にぶつかっていく。


「かはっ……!」


シルヴァリオン「今のは!?」


音廻「姉さん危ない!!」


シルヴァリオン「!!」


シルヴァリオンは咄嗟に氷の壁を作り、寂滅の攻撃を防ぐ。しかし


シルヴァリオン「こ、この力……さっきまでとは比べものにならない!! 氷が、砕ける……!!」


寂滅の鋭い攻撃はシルヴァリオンの氷を貫き、そのまま彼女の顔面に仕舞われる!


シルヴァリオン「がっ、頭が……揺れる……!!」


寂滅「ゔ、ゔゔゔゔゔ、ヴヴヴヴヴヴヴヴ!!」


音廻「なんか様子が変だよ!?」


突如、寂滅は頭を抑えて苦しみだした。


「あれは、指輪? なんだか、輝いて……」


寂滅「……勝てと言っている……が、勝てと言っている……勝たなきゃ……勝たなきゃ……ダメだ! ゔ、あああああ!!!」


シルヴァリオン「な、何が起き……!?」」


寂滅の身体が変形していく、艶めいた肌からはふさふさとした毛が生え、歯は鋭い牙になり、爪は鋭く、そして尾てい骨から大きな尻尾が現れた。


音廻「あれは、人狼!?」


シルヴァリオン「二人とも下がれ!」


シルヴァリオンは寂滅の攻撃を受け止める!


シルヴァリオン「ぐあっ!! さらに威力が増している!!! ……しかし、大振りになったことで疾さが落ちた……!!」


「………!」


蛇腹剣が伸び、寂滅の肩甲骨辺りに深々と刺さる。皮が破け、肉に剣が届き、血が滲む。


寂滅「………ッ!!」


「なっ、剣が刺さっているのに動けるッ!?」


寂滅は蛇腹剣を掴むと、そのまま引っ張った。そのまま引き寄せられ、胸の中心に正拳突きが刺さる!


「ぐはっ……!!」


シルヴァリオン「不味い展開になったな……鎮めるのに一体どれほどの時間がかかるのか……!!」



幻「寂滅姉、お願いだからもうやめて!!!」



寂滅「………」


幻「こんなの、間違ってるよ……やっぱり、関係ない人を巻き込んじゃダメだよぉ……!!」


シルヴァリオン「何故こんなことに加担しているのだ? このままでは、数多の生物達が……」


寂滅「………ワカッテル」


「…………」


寂滅「ソレデモ、退ケナカッタ。アノ人ノ為ダッタ……私ハ……」


と、その時だった。幻の背後の木がメキメキと音を鳴らし、そのままボキリ……幻の方へ倒れ込む!


音廻「危ない!!」


幻「ぇ………」


音廻が幻の前に飛び出した。


シルヴァリオン「くそ、間に合わない!!」


「………」




大木が倒れ、砂煙が舞う。時間が経って、ようやく落ち着いてきた頃、二人は地面に倒れていた。


シルヴァリオン「大丈夫か!」


音廻「うん、私は……貴方は?」


幻「膝、ちょっと擦りむいたけど……」


「まさか……」


一同は大木の方を見る。下敷きになったと思っていたのは、音廻達ではなく寂滅だった!!


寂滅「……ぅぅ…」


幻「姉さん!! うぎぎ、重い……!!」


シルヴァリオン「………」


音廻「何やってるの二人とも!! これどかすの手伝って!!」


「……自分達に彼女を助ける義理も理由もない。因果応報だろう」


音廻「だからって、この人が死んで良い理由になんかならない!!」


シルヴァリオン「……どくんだ二人とも」


シルヴァリオンは口の中に巨大な氷柱を生成すると、大木に向かって放った。そのまま氷柱は大木を粉々に破壊する。


幻「姉さん、大丈夫?」


寂滅「ちょっと……足の骨……折れたけど……それで……情報を吐くって、約束だったね……」


寂滅はふらふら立ち上がると、上を指さした。


寂滅「貴方達が向かうべき場所は……『空の上』。もっと言えば……『あの世』」


シルヴァリオン「あの世、だと?」


寂滅「上に向かって飛んでいけば、いずれ到着する。案内、するよ」




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