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エピローグ 最後の手紙

 エレナさんへ


 またしばらく手紙が滞ってしまいました。怒らないでください。

 まず近況をまとめて。


 テオ陛下は元気です。あの結界、せっかく習得したからと張り直していました。魔王を倒した後で張り直す几帳面さ、あの人らしい。


 それと、図書館で時粒子の本を貸してくれたおじいさん。あの人、遠い昔に時粒子の秘密を託されて分家した王家の末裔だったらしくて。今はテオ陛下の後見人に収まっています。

 なんというか、最初から全部わかってたんじゃないかって気がしてなりません。あのにこにこした顔を思い出すと、特に。


 お凛さんは王都に店を出しました。うどん屋です。ガルディスの屋台はベルナールさんと貧民街の人たちに任せたそうで。「いずれここもベルナールさんに任せる」と言っていました。お凛さんなりの、貧民街の人たちへの思いがあるんだと思います。


 カイルさん達は近衛騎士団の通常任務に戻りました——戻ったはずなんですが、なぜかカイルさんはちょいちょい顔を出します。何しに来てるんでしょうか。本人に聞くと「通りかかっただけ」と言うんですが、王宮に住んでいるカイルさんが、なぜ通りかかるのか。


 ファルは——ファリダのことです、私とお凛さんもそう『呼んでいい』らしいです——すっかり回復しました。ローエン公国の子爵令嬢らしくて、溶岩竜の時にバリスタを貸してくれた方の縁続きだとか。世間は狭い。今は私の魔力修行を見てくれています。怖い先生です。褒めません。でも一回だけ「筋がいい」と言ってくれました。


 私はファルの勧めで、王都の大学で物理を学ぶことにしました。魔法と物理は切っても切れない関係なので、そこを掴めれば支援魔法ももっと強くなれると思っています。


 宗さんは相変わらずです。特に何かに任命されるでもなく、特に何かを始めるでもなく、毎日「平和に生きたい」と言いながら、なぜか平和じゃない状況にちゃんといます。本人だけそれに気づいていないか、気づいていて知らないふりをしているか。

 ところで、宗さんのあの強さ。どうやら時粒子が関係してるみたい。私の時粒子の影響を全く受けないんです。信じられない……!


 近いうちに一度リガルドに帰ります。大学が始まる前に。

 その時は、みんなを連れていくつもりです。

 これが、帰る前の最後の手紙になると思います。

 それでは、また。次はリガルドで。


 ニーナより




 エレナは手紙を読み終えて、便箋を丁寧に折り畳んだ。

 窓の外、リガルドの街はいつもと変わらない午後だった。

「帰ってくるんだ」

 小さく呟いて、少し笑った。

 賑やかになるな、と思った。

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