表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/32

第32話 王都到着

 ついに、王都へ辿り着いた。

 馬車を降り、巨大な「白亜の門」をくぐって石造りの短いトンネルを抜けた瞬間、視界が開けた。


「ちょっと……なによ、これ」

 ニーナが口を半開きにして固まっていた。首を真上に向け、空を細く切り取る石造建築の群れを仰ぎ見ている。リガルドやロギスとは比較にならない建物の密度。幾重にも重なるアーチの影。行き交う馬車の音と人々の喧騒が、高い壁に反響して渦を巻いていた。


 宗一は羽織の袖に手を入れたまま、視線をあちこちへと動かした。

「……石だらけだな。よくこんなもん建てたもんだ」

 かつて暮らした京の都とも、地方の街とも違う。石でできた、知らない都。


「これが、この国の心臓ですか」

 お凛もまた、目を細めて白亜の街並みを眺めていた。均一に敷き詰められた石畳が、陽光を照り返している。


「前を見ないと危ないですよ、雇い主殿。撥ねられます」

 お凛がニーナの襟首を掴んで引き寄せた。

「だって! あんなに高いところに窓があるのよ。あそこまで階段で登るのかしら。王都の人って、毎日が登山じゃない……」




 一行は大通りから一本入った宿へ向かった。

 ニーナが手続きを済ませ、鍵を受け取る。案内された部屋に入るなり、宗一は窓際の椅子に腰を下ろした。雪駄を脱ぎ、足を投げ出す。

「石の地面は、土より疲れるな」

「瀬能様、まずは周囲の確認を」

 お凛が部屋の四隅を点検し、窓の外の動線を確認する。その横で、ニーナはポーチを叩いて活気づいていた。

「よし、拠点は確保。さあ二人とも、ご飯を食べに行くわよ。お腹空いちゃった」

「そうだな、行くか」

 宗一は再び雪駄に足を突っ込んだ。




 大通りでは、赤い紋章を胸に付けた衛兵が、手際よく馬車の誘導を行っていた。

「——車列を右へ詰めろ。立ち往生は通行の妨げだ。よし、行け」

 その仕事ぶりは正確で、市民に対しても礼儀正しい。だが、どこか周囲を威圧するような鋭さがあった。


 その姿を、数歩離れた場所で青い紋章の衛兵たちが眺めていた。彼らは非番らしく、手持ち無沙汰に壁に背を預けて談笑している。

「おやおや、赤組さんは相変わらず丁寧なことで。そんなに念入りにやらなきゃ、御者一人満足に捌けないのかい?」

 青い衛兵が、聞こえるように鼻で笑う。赤い紋章の衛兵が、誘導の手を止めずに忌々しげに一瞥した。


「黙って見てろ。今月は我らが王の路を預かっているのだ。お前たちのように、当番中に揉め事を起こすような真似はせん」

「はいはい、ご苦労さん。せいぜい今月のうちに手柄でも作っておくんだな。来月、こっちが預かったら、そのぶん帳消しにしてやるから」


「……なんか、あのお兄さんたち、仲が良いのか悪いのか分からないわね」

 ニーナが不思議そうに呟いた。

「仲が悪いというより、見ている方向が違うんだろうな」 


 些細なきっかけで抜かれるであろう剣の柄を、宗一はじっと見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ