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学校イチの美少女が実は残念系ガンマニアな学園探偵物語〜Mild〜  作者: 笹岡 悠起
最終章 学園探偵よ永遠に
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第85話 変身

「おっはよー」

 教室のドアがスライドし明るく爽やかに登場した彼方(かなた)の声が響く。

 昨日は休んでいた彼方だが、いつも通りの彼女の姿にクラスメートは何の疑問も持つ事はなかった。口々に社交辞令たる朝の挨拶が投げかけられる。

 しかし何気なくドアの方向を見た男子生徒が呆気にとられる。

 彼方が「また後でー」といった仕草で手を振っている先にもう一人彼方がいたからだ。

 遅れて気付いた他の生徒も廊下に消えていく彼女に目を奪われる。

「ちょっと、カナちゃん。今の人って誰? カナちゃんそっくり」

 前の席の女子生徒が机の上に鞄を置き椅子を引いている彼方に声を掛ける。周囲の生徒、特に男子たちが聞き耳を立てているのを彼方自身もひしひしと感じている。

「お姉ちゃんだよー。三年のリボンしてたっしょ? 昨日私お風呂上がりに貧血で倒れちゃってさー、心配してついて来てくれたの。……あと私より美人っしょ」と言って見る者によってはチャームポイント、自身にとってはコンプレックスのひとつとなっている泣きボクロを指さす。

 小声が漏れてざわつきを隠せない男子諸君の反応に妹の彼方は満足げな様子だ。グロスで艶やかに光る唇の端っこがつり上がる。

(そうでしょそうでしょ! 私のお姉ちゃん本当は超可愛いんだからっ!)

 休憩時間に一度、昼休み、そして放課後と二年生の教室に顔を出す那由多(なゆた)

 今日一日、二年男子の中で一番話題に上がったのは間違いなく那由多だろう。

 学園内の会話にタイムライン機能があったとしたら、本日は『那由多(・・・)』の三文字が常に上位ランク入りだ。

 伊達眼鏡も外し、髪型もいつもの三つ編みからストレートヘアに、スカート丈も妹の彼方と同じくらい短くした那由多は生徒たちだけでなく、校則の規定を超えたスカート丈のお陰で先生方、特に二年生の学年主任と全校生徒の生活指導を兼任している堅物教師からも注目を浴びてしまった。


 そうして二〜三日が経過した頃、学園探偵部の思惑通り新しく仕掛けられたカメラをまたしても藤原百花(ふじもも)が発見した。

 三年生、那由多たちのクラスの体育授業がある一時限前。やはり体育の授業を終えたふじももが体育館内に併設された女子更衣室で見慣れない時計が置いてあるのに気付いた。

 彼女はまず置き時計型カメラのレンズ部分にシールを貼って被害を最小限に抑えた後、そのカメラの回収風景が撮れるようにこちらもスマホのカメラをweb連動したライブカメラにしてセット。

 さらに、休憩時間の間に念の為メモリーカードを空っぽ(ブランク)のものと差し替えておいた。


 既にカメラ発見の連絡を受けていた那由多は更衣室で、おそらくは自分目当てで設置されたであろうカメラを一瞥し、男という生き物はどうして外見でしか私を見ないのだろうとやるせ無い気持ちになった。

(私なんかより……)隣で着替えている刹那のたわわな胸を見る。

(ハーフだもんね……)

「何か言った?」

「あれ、漏れてた?」

「いや、雰囲気。それより何で逆メイク辞めたの?」

「捜査協力よ。こう見えて学園探偵部ですから。刹那はまだ怒ってるの? 永遠(とわ)くんの事?」

「べっつに怒って無いわよ、あんな奴。ガキじゃあるまいし」

「いや刹那は充分ガキでしょ。じゃあ戻ってくれば良いのに」

「他にちょっと気になることもあるのよ」

 着替えが終わり体操服に着替えた二人は授業へと向かった。


 放課後になり、カメラの回収にやってきたのはやはり二年生の男子生徒だった。

 ライブで確認したふじももが所長の寺西に伝える。メモリーカードを確認していた真理も、間抜けにもセッティング時に顔の写っていた生徒の画像をキャプチャしてプリントアウトした。ふじももが仕掛けたスマホの画像と低画質ではあったがそのプリントに写った男の特徴的なメガネの形と髪型で同一人物であろう事が確認出来たので、寺西と真理と事が荒立った時の保険として士郎の三人で現場に向かった。


 人が居なくなるタイミングを慎重に待っていた犯人は、皮肉にもその所為で真理たちの到着を許してしまう。

 周囲に物音がしなくなったのを確認した男子生徒は静かに扉を開けて出てきた。

 カシャッ! ドア前に気配を殺して立っていた真理がスマホのシャッターを押す。

「うわっ」と、慌てて置き時計型カメラを隠そうとしてゴトリと落としてしまう。

「あの、な、お、小野先輩。何で写真を……」

「あら、後輩くん? 君は何で女子更衣室から出てきてるの?」

 しどろもどろで弁明する男子に真理が盗撮用カメラを仕掛けている最中の間抜けな顔がアップで写っているプリントを見せる。

「学園探偵部よ。詳しい話は部室で聴かせてもらうわ」


 寺西は部室で観念した様子で洗いざらい素直に話す男子を遠目に見て拍子抜けしていた。

 彼はやはり突如現れた(訳ではないのだが)美人の三年生・那由多に興味が湧き、彼女のエッチな写真を撮り、ネットで販売するつもりだったらしい。そしてあわよくば(・・・・・)同じクラスの刹那の写真も撮れればと。

「でもこれで刹那ちゃんの盗撮犯人はわかった訳だし、あとはお前の写真はエッチなのは絶対に撮ってないって事説明すればいいんじゃねーか? 俺も協力す……」

「いや、これ変じゃねーか?」真理がプリントアウトした画像を見ていた永遠が立ち上がった。

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