第82話 検証
「いいねー、一期ちゃん。じゃぁ一枚脱いでみよっか?」
スマホを構えた刹那がシャッターを押す。
「刹那さん、これ脱ぐ必要あります?」
二年生の教室には数人の生徒の姿があったが、構わず刹那と一期は盗撮写真の撮影現場の検証を続けていた。
結果、おおまかには撮影場所や方法についての予想はついたがどれも決定打に欠ける情報にしかならなかった。朧気にすら犯人像が見えて来ない。
「お手上げですね……」一期が写真を手に取る。
「こら、マジマジ堂々と見るな! せめてこっそり見なさい」
「けど、この写真って下着よりもコルトの方が目立ってません?」
「あっ、そうだ! じゃあ、少なくとも私のスモルトSSが出来た少し後ってことになるわね」
「え⁇」
説明を欲している顔の一期に、腕組みのポーズで語り始める刹那。
一期が刹那のバーガーショップでの活躍(?)を初めて目撃した日、その日にはまだコルトDSはヒップのやや上、腰の位置に鎮座していた。ちょうどその頃にスモルトSSが完成した刹那は腰に二丁の拳銃を下げていた訳だが、流石に携行方法に無理を感じていた。
その頃新たに仲間に加わった彼方が裁縫が得意と聞き、彼女に相談して内太腿用レッグホルスターを作成しジョンはそちらへと移動したのだった。
それ以前の刹那は永遠のタンデム席に乗ることを考慮してミドル丈のスパッツを常に履いていたのだが、レッグホルスターとスパッツが干渉してしまう為、以降スパッツを履かなくなった。
「つまり、ここ半年くらいの刹那さんが盗撮されていたって事ですね」
「そういうこと!」
「……何か犯人に繋がるヒントになります?」
「なんない……。あとはあいつが友達とそのヤリたいとか……下品な話してたって言ってたトイレとか教室とか? 犯人がどうやってその話を知ったのか……」
「やっぱ学園探偵部の皆さんと協力して調べた方が良くないですか?」
「いやさ、別にもうそんなに怒ってはないんだけどさー。派手に啖呵切った手前なーんか永遠と顔合わせにくいというか、なんちゅうか……」
その時、ブブッと一期のスマホが振動した。
一期は気付いた素振りを見せたが、刹那と会話中なので着信を無視した。
「鳴ってるわよ?」
「後で確認します」
「今しなさい。探偵たるもの情報は何より重要よ」
「あ、はい」
ちょっとカッコをつけたつもりの刹那は一期の薄い反応に肩透かしを喰らって唇を尖らせる。
「えっ」メッセージを確認した一期がその内容に驚いて思わず声を上げてしまう。
「どーしたのよ?」刹那が一期に問い掛けるが一期は伝えていいものかどうか判断がつかない。
やきもきした刹那が一期のスマホを奪う。
「ちょっ、刹那さんっ」
メッセージは一重からのもので、件の盗撮写真を持っていた男子生徒たちに彼方が襲われたと言う内容だった。刹那がその内容を読み終わる頃、追加で届いた2通目のメッセージには、現場に一重と士郎が駆けつけたお陰で間一髪ではあったが彼方は無事だったことと、犯人を確保して詳しい事情を聞いている最中だと書かれていた。
「あいつらぁっ!」怒気に満ちた唸り声を上げ廊下に向かい駆け出す刹那の腰に一期が纏わりついて引き留める。
「ちょっと、抑えて! お願いだから! 今行っても話がややこしくなるだけですっ!」
「がぁーっ!」頭では一期の言い分に納得したが、感情で納得出来ない刹那はその場で地団駄を踏んだ後、雄叫びを上げて握り締めた拳で近くの机を殴りつけた。
湧き上がる怒りから肩で息をしている刹那の拳から、流れ落ちた鮮血が床に数滴落ちた。




