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学校イチの美少女が実は残念系ガンマニアな学園探偵物語〜Mild〜  作者: 笹岡 悠起
最終章 学園探偵よ永遠に
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第81話 処女

 両腕の自由を奪われた彼方(かなた)の背後から、もう一人の男子が腕を回し彼女の身体に抱きつこうとする。身体を捻りその腕から必死で逃げようとする彼方。

「や、やーっ! 触るなバカッ! 離せっ!」

 バタバタと暴れる彼女の足が後ろ側にいる男の脛に当たる。脱げたローファーが地面に転がる。

「痛っ、このっ」背後の男子が脚を押さえて(うずくま)る。

 足が使えると気付いた彼方は腕を掴まれて爪先立ちのまま正面の男に膝蹴りをお見舞いする。

「うげっ」彼方の膝を腹部に食らった男子が堪らず彼方を離し腹を押さえてのたうちまわる。

 腕を離され地面に転げ落ちた彼方は立ちあがろうとするが恐怖で上手く立ち上がれない。中腰でやや這う様にして逃げようとする彼方は、脛の痛みから回復した男に背中から羽交締めにされ、そのまま公園の茂みに引き摺られて行く。

「オイ、足っ、足押さえろ!」

「いやぁあぁ!」

「この、何人も男作ってるヤリマンのクセに!」

「わ、私は処女(バージン)だっ! こんな、こんなっ!」

「嘘つけ、ネットに書かれてたぜ! 撮影会の後オフパコしたって!」

「んな、デタラメッ!」

 彼方が暴れて、掴まれていた足から靴下が脱げ、片足が自由になる。

 すかさず裸足で男の顔を蹴りまくる。

「いやっ、誰かっ! 助け……」

 その時、至近距離で茂みの中から甲高い音が響いた。

 パイーン、パパパパ、カンカン。

 茂みのすき間からヘッドライトが神々しい光を放つ。

「遅うなってすんまへんな、彼方先輩(ねえやん)。戦闘モードに着替えるまでちぃと時間かかってもうてん」

「かっ、一重(かずえ)ちゃん……」声のする方に顔を向けた彼方の目から涙が溢れ落ちる。

「あんさんら、うちの放課後バイク用品店梯子ツアーの邪魔ぁした罪は重いでぇ」

 ブラウスの上に脊椎・肩・胸部・肘・小手と膝に脛、全てのパッドにプラスチック製の硬質な装甲(シェル)、幾つかのパッドは破損して買い直したのか、黒いパッドの他にバイクと同じライムグリーンカラーのパッドが混ざっている。

 普段よりも重装備の一重が愛車KSR-1に跨ったまま、男子生徒二人を指差す。襟元にはシルバーのスカーフがたなびいている。

「さぁ、自分らの罪を数えんかいっ! 行くでケセラちゃん!」

 パァッ、パアン! 一重の声に応える様にKSRがまるで彼女の手足の様に動き、フロントを高々上げて彼方の背中にいる男子に向かって全速で突っ込む。

 (ひる)んで後ずさる彼の鼻先寸前で車体をべったりと寝かしリアタイヤをスライドさせ小石の混ざった土煙を浴びせる。堪らず彼方を掴んでいた手を離し、痛そうに両目を押さえる。

 またすぐにロケットのように彼方の足元、二人目の男子に突進し、すれ違いざまにラリアットをお見舞いする。

 後方に吹っ飛んだ男子はそのまま転がりながらも起き上がり顎を押さえたまま公園出口に向かって逃げ出した。

「アカン、浅かったか!」

 一重がリアタイヤを左右に振りながら追走するが男子生徒も死に物狂いで走る。

 しかし公園入り口までの逃走を許してしまい入り口に組まれたポールで足止めを喰らう一重。両足を着いてポールを()けて進んでいくがみるみる引き離される。

「しもたぁ、うちとした事が!」

 走って行く背中を見送るしかできない一重の視界の端にこちらに向かって走ってくる見慣れた学ランの姿が見えた。

「士郎はん! そいつや! いてもうたれ! てつざん何とかや!」精一杯の大声で叫ぶ一重。

 黒い影がスライドした様に見えた次の瞬間、身体をくの字に曲げて数メール横に飛んでいく男子の姿があった。

 ほう、っと溜め息をついた一重が後ろを振り返るが、そこに彼方の姿はなかった。目に映るのは両目を押さえて(うずくま)る男子生徒のみ。

 不思議に思い、サイドスタンドをかけてKSRのエンジンを切る。ヘルメットを脱いでミラーにかけ、公園の外でスマホで通話をしている士郎の方に向かい歩き始める。

 すると倒れた男のすぐそばへと公園入り口にある自動販売機脇に設置されたゴミ箱を引き摺りながら近寄っていく影に気付いた。

 その影が男の頭に向けて振りかぶったゴミ箱を振り下ろした。

「やぁー!」

 叫び声を上げてゴミ箱を叩きつけた影の正体は彼方だった。

「や、待って彼方先輩! それ以上はちょっと! 的部(まとべ)先輩っ、止めて止めてぇ!」

 精一杯声を張りながら駆け寄る一重。一重の呼び掛けで電話をやめて慌てて彼方の二撃目を止める士郎。

 しかし彼方の渾身の一撃をくらった男は二の矢を喰らうまでもなく既に足下で伸びきっていた。

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