第77話 仮面
「さーて、あんたさっき高い金払ったって言ってたわよね?」
人通りの少ない校舎裏に移動した三人。刹那がスマホを録画モードで構えたまま質問する。
「いや、俺も詳しくは知らないんですよ。いきなり知らないアドレスからメールが来て、先輩の、その、エロい写真を買わないかって……」
「いいから詳しく話して」そう言ってスマホを仕舞う。
「ちょっと刹那さん、まだ……」心配する一期に被せるように刹那が話す。
「大丈夫よ一期。この子さっきまでとは空気が違うわ」
「その、先に聞いていい……ですか? 先輩、さっき何で一年の教室で盗撮の事言わなかったんです? それに一年生に口止めまでして……」
「高い金払ったって言ったでしょ? ならあんたは魔が差しただけ。他に本当に懲らしめなきゃいけないやつがいるってことでしょ? ねえ、私からも聞いていい? 何で私の写真だったの?」
「それは……」
男子生徒の話では、普段から彼は刹那のことが気になっていて、仲のいい友人にはそれを話していたそうだ。
彼も他学年に確認したわけではないが、現在二年生の一部男子の間にだけ盗撮写真の購入を持ち掛けるメールが届いているらしい。
しかも何故かそのメールが持ち掛けてくるのは、普段その男子が卑猥な欲望の対象として見ていて、トイレや部室などで友人とそういった性の対象として話題に挙げている女生徒を的確に指名してくるという。
「じゃあ、トイレにいた先輩達はみんな刹那さんの事?」
「いや、あたお……先輩とヤリたいって言ってたのは俺だけで、後の二人は同じ学年でエロいコスプレとかしてるって噂の……」
「ゴッ」刹那のチョップが脳天に落とされる。
「堂々とヤリたいとか言うなぁ! ……って、それもしかしてカナちゃんことぉ?? カナちゃんの写真も出回ってるの?」
「……はい」
「ちょっと何よコレ? もしかして大事件じゃないの?」
「あの、刹那さん? これってやっぱり一重さんからのメールにあった通り永遠さん関係ないんじゃ……」
「うるさーいっ! あいつが私の写真を依頼のダシに使ってたのはホントの事でしょ! 今まで依頼が来るたんびに喜んでた私がバカみたいじゃない! 兎に角、あんたは他には何も知らないってことね?」最後に男子生徒を指差す刹那に彼もコクコクと首を縦に振って答える。
「まぁいいわ。何か他に思い出したら来なさい。別に困りごとの依頼でもいいわよ。放課後はいつもここにいるから」と言って内ポケットから名刺のようなカードを出して男子生徒に渡す刹那。
カードには凝った書体で〝|private eye〟と大きく書かれており、学園探偵部の教室番号が併記されている。
「……刹那さん、邦画も観るんですね」
「バッカ! 偶々よ、たまたま」一期の突っ込みに恥ずかしそうに顔を赤くして膨れっ面をする刹那に一期も男子生徒も噴き出す。
「でも刹那さんあれから部室行って無いですよね……」
「うっさい!」
「……あのぉ、俺も刹那先輩って呼んでも?」
「構わないわよっ。私以外に刹那はいないでしょ!」
「刹那先輩、なんで普通にしないんですか? 今回の一件で俺マジ惚れしそうなんすけど」
「うーん、……私の友達にいるんだけどさ、本当はすっごく可愛いのにわざと隠してる子が。やってる事は逆だけど、私も多分似たような感じ。そりゃちょっとぐらいなら普通にだって出来るけど、今のこれが本当の本当の私。どんなに薄くてもどんなに軽くても一枚だって仮面なんて被りたくないの。見た目で寄ってくる男なんて興味ない! 素の私を見てグイグイこれる男じゃないと」
「刹那先輩、俺、素の先輩を見て更に好きになっちゃったんですけど……」
「あんたはまだまだダーメッ! もっと男を磨きなさい、漢をっ! 消耗品軍団に入れるくらいに屈強に……」
「刹那さん、もはやそれハードルってレベル超えて高いんですけど」




