第73話 白濁
蒼い顏で廊下を早歩きする少女が一人。
女子トイレに駆け込むがすぐに出てくる。
「放課後にどこも空いてないって……」少女はほんの少しだけ躊躇した様子だったが、すぐに覚悟を決め隣の男子トイレに入っていった。
入り口ですれ違った男子生徒が少女の顔を不審そうに覗き込んできたが背に腹は変えられない。他にも小便器前に二人程男子がいたが一番手前の開いている個室へ入りすぐに施錠する。
スカートをたくし上げ、スパッツと一緒に履いていたボクサーブリーフを下ろし、安堵の表情を浮かべ便座に座った。
しかし、すぐに便座に違和感を覚え一瞬だけ腰を浮かせたが、決壊間近の腹痛に耐えられなかったので、諦めて括約していた筋肉を弛緩させた。
無事危機を乗り切り、自身の太股に付着した液体をトイレットペーパーで拭き取る。ぬるりとした感触で最悪の予想はしていたが、恐る恐る確認すると男子高校生なら誰しも覚えのある栗の花のような臭いを放っていた。
「!っ」
慌ててトイレットペーパーを大量に巻き取り、太股や便座を念入りに拭いて便器に放り込む。
自身が放出したものですら、事後には不潔な感覚に見舞われるもの。まして知らない男子生徒のそれが付いてしまい気持ち悪くなる。気を取り直しもう一度水洗レバーを操作した時、タンクの上に置き去られた複数枚の写真に気が付いた。
その内の一枚を手に取る。
そこには体操着に着替えている最中、下着が露わになった女生徒の姿が鮮明に写っていた。同じ高校に通う良く見知った顔。
(刹那さんの……盗撮写真!?)
他の写真を手に取ると、ブラウスからブラが透けている写真や、腕を上げた体操服の袖から脇の下が覗いているような比較的軽めの物から、授業中足元から撮影されスカートの中が鮮明に写っている物まであった。
写真をスカートのポケットにしまいこみ扉を開けようとしたその時、ノックと呼ぶにはあまりにも激しいドン、ドンッとドアを叩く音と怒鳴り声が響いた。
「おいっ! 開けろっ! お前新入生のオカマ野郎だろっ! 開けろっ!」
震える手で思わずグロック18cのグリップを握った一期だったが、以前刹那に言われた台詞が頭に浮かんだ。
(……って銃口向けられるといい気しないでしょ?……)
グロック18cをホルスターに収め、その手をスマホに持ち替えてメッセージを送った。
『かずえさん助けて、トイレで上級生に絡まれてる』




