第72話 ニューウェポン!
——六月。
刹那が待ちに待った18歳の誕生日がやってきた。
お守りの様に持っているだけだったタナカ製の旧カート式リボルバー、コルトディティクティブスペシャルを大手を振って使えるようになる年齢。そして去年、的部士郎の依頼という形で協力した真理の誘拐騒動中に大破してしまったハイキャパ5.1Rに替わるメインウェポンについても、18歳以上推奨モデルが購入出来る様になるこの瞬間を待っていたのだ。余談だがスモルトセツナスペシャルも既に寺西に預けて、サイドカバーバイパスラインのガス漏れ対策やゴムシール類の見直しにバルブのスリム化等のパワーアップカスタムを依頼(命令?)済みだ。
本日、彼女は元彼(?)の一期と共に父親行きつけ馴染みのガンショップを訪れていた。
彼女たちがアラモと呼んでいるこのお店の正式名称は荒井模型店。ここへは彼女が幼少の頃から父親に連れられて幾度となく遊びにきている。
店内は店主の趣向からエアソフトガンが占める割合が多いが、その他にもNゲージやRCカー、ミニ四駆、さらにロボットものからミリタリーもののプラモデルまで、男の子の趣味全般をカバーしてくれる田舎にありがちな大きめの模型店だ。
彼女はガラスケースに張り付くように見入って次の相棒を真剣に選んでいた。
「オートだったらベレッタがいいなー」
「撃ってみるか?」と言って店長が展示されているベレッタM9をウィンドウから出し、慣れた手つきでマガジンを抜きBB弾とガスを入れる。しかしその動作に被せるように刹那が「店長違うよ、バーストのやつ」と言ってスマホ画面に映し出されたベレッタM93Rを見せる。因みに昨晩刹那が観なおしたのはロボットの警察官が活躍する映画とマリオ髭の警視が主人公のイタリア映画。
「流石あいつの娘だな。渋いところをついてくる。だが仕入れにちょいと時間がかかるぞ。それに……、まぁせっかく用意したんだ。同系列フレームのこいつをちょっと試してみな」
刹那は店長が用意してくれた東京◯イ製ベレッタM9を店内に併設されたシューティングレンジで渋々構えてメタルターゲットに向けて数発連射する。
結果、自分が思っているよりも上手くターゲットに当てることができず首をかしげる。
「アレ? 思ったより命中精度悪い?」
「貸してみな」そう言って刹那からベレッタを受け取り、ワンハンドホールドで見事な射撃を披露する店長。悔しさの余り「うー」と唸ることしか出来ない刹那。
「手に合ってないんだよ、でかすぎるから上手くホールドできてない」と言って店長が別のハンドガンを用意する。
「騙されたと思って試してみろ」
並べられたのはいずれもベーシックなものばかり。USP、グロック17、シグP226。
それぞれに試射を繰り返し、店長のアドバイスが正しかったと理解した刹那だったが、彼女が好きな古めのアメリカ映画の主人公達はみんなベレッタを愛銃としている事と一期の電動グロック18cでのフルオート射撃の火力にも魅力を感じていた事もあってベレッタM93Rへの未練を断ち切れない様子。
店長は刹那のことを小学生の頃から知っている。彼は決め手に欠けている彼女に策を講じた。
「嬢ちゃんはオヤジさんみたいにサバゲはやんないのか?」
刹那は店長の問いに少し悩んでから答えた。
「相棒。私の生活にツールとしてプラスしたいんだよね。サバゲは楽しいけど、私が欲しいのはジャングルブーツじゃ無くって、スニーカーなんだ、なんだったらサンダルでもいいかも」
「だったらホルスターも併せて見たらどうだ?」
店長の策に見事に嵌り、目を輝かせて頷く彼女。
「希望は?」
「マイアミ」
「試してみるか?」
ベレッタM9をマイアミタイプのショルダーホルスターに入れて試してみたが、ブレザーを羽織ってもシルエットが不自然で隠し切れなかった。
ならばと普通のショルダーホルスターも試してみたが、腕を真下に降ろすことが出来ず不自然な姿を見て諦めがついた。
散々悩んだあげく刹那はガスブローバックのグロック18Cを新しい相棒に決めた。




