第70話 刹那 to 一期
付き合い(?)始めて三週間が過ぎようとしている刹那と一期の二人。
今まで週に二〜三回の頻度で永遠と練習に来ていた時間が、今は一期との射撃練習になっている。
「ねー一期。男子の制服って持ってないの?」
本日も河川敷でグロックで射撃練習をしている一期に、地面に胡座をかいて座っている刹那が声を掛けた。
「制服は女子のしか買ってないです。逆に私服は男子のしか無いんですけど」
一期の回答を聞いて、腕を組んだ姿勢でうーんと悩むポーズをする刹那。
「じゃあ土曜のデートはいつもみたいに制服じゃなくてさ男子の格好で来てよっ。じゃないとナンパがウザいんだもん」
「そ、それは別に構いませんけど……、ナンパは減らないと思いますよ」
「なんでよ?」
「だって、その、刹那さん、か、可愛いから」そう言った後、照れ隠しの様に5メートル先に置かれた空き缶の口を狙ってトリガーを絞る一期。
しかし弾道は5センチ以上外れた場所を虚しく飛んで行く。
「ほらっ! 集中しろバカっ」
「す、すいません……」
「……でもありがと」
「えっ? 今なんて?」
「何でもないわよバカっ」と真っ赤になった顔を一期に見られない様に胡座のまま180度回転してそっぽを向く刹那であった。
そんな平日のやりとりがあり、また、那由多と彼方に恋愛というジャンルにおいて小馬鹿にされマウントを取られた悔しさも片隅に抱えたまま迎えた土曜日。
刹那は一期とのデートにいつもよりおしゃれに気合いを入れて臨んだ。……勿論彼女なりにだが。
待ち合わせは彼女の指定で隣町の喫茶店。
以前浮気調査の際にカップルが利用していたので刹那の頭の中に、進んでいる二人が待ち合わせる場所として刷り込まれている。
先に席に座って一期を待つつもりが、刹那が入店した時には既に彼の姿があった。一期はルーズフィットのデニムにTシャツとパーカーという出立ち。
一方、気合の入っている刹那は膝丈のややタイトなデニムスカートにTシャツ、薄手のMA-1ジャケットのL-2B。季節がら薄着にアレンジしてはいるが、本日のテーマは生死を問わず賞金首を追いかける現代版賞金稼ぎの模様。
「待たせたわね」
「あ、僕もさっき来たばかりです」
一期の前に置かれたアイスコーヒーのコースターに水滴が水溜りを作っていることに気付いた刹那だが、何も言わずに向かいの席に腰を下ろした。
「刹那さん、私服スカートなんですね」
「何よ? 私だってスカートくらい履くわよ!」
「あ、いえ、ズボンの方が動き易いからてっきりそうなのかなって……」
「ジャケットの丈が短いからスモルトの携行が出来ないのよ。せめてジョンだけでもね」
スカートでないとコルトディティクティブスペシャルを携行できないから。そんな刹那の回答があまりにも刹那らしくて思わず吹き出す一期。
「もう、何よ。そーいうアンタはバックアップ持ってないの?」
「コスパ的に電動グロックだけです。鉄砲も好きだけど、やっぱりコスに回すお金が多くて。あ、コスパってコストパフォーマンスって意味の方で……」
「じゃあ荒井模型店にバックアップ選びに、……いや。今日は映画観に行くわよ! アラモはまた今度」
「何か観たいのあるんですか?」
「特に無いけど行ってみて決める! 今日はデートっぽいデートするのっ!」




