第69話 彼方 to 永遠
「永遠さん!」
六限が終わってすぐに飛び出して来たのか、肩で息をしながら永遠たちの教室のドアを勢いよくスライドして入ってきたのは二年生の彼方。
放課後とは言え上級生の教室に堂々と入って来れるのは陽キャ系オタクのスキルのひとつ。
「今日もまた一重と正門のとこで待ち合わせでしょ? 六限終わったらすーぐ帰ってったわよ」無表情で答えたのは姉の那由多。彼女は刹那たちと付き合う内に、いつの間にか彼方と姉妹という事も刹那たちと連んでいるということも周囲に隠さなくなってきていた。
「えーっ、なんで? こんな可愛い彼女がいるのにあんな小娘と一緒に帰るの? お姉ちゃん引き止めといてよ!」
「だから別に彼女ともなんとも思われて無いんじゃないのー?」意中の男子が自分の妹と付き合うよりは数倍増しと、彼女の顔に書いてあるように意地悪な表情で笑う。
「ひどーい」と頬を膨らます彼方。
積極的に聞き耳を立てていたわけでは無さそうだが、見かねた刹那がフォローの言葉を投げかける。
「あいつ一重ちゃんにバイクの練習見て貰ってるみたいよ。稽古?」
「誰ですか恵子って? また知らない女登場! そう言う刹那さんは一期くんとはどうなんですか?」
「お生憎様。私はちゃーんとラブラブデートしてるわよ。あの子三年生の教室来れないって言うから私が迎えに行って自転車漕がせて……」
「あー、なんか電動のキックボードで来てるの鎌田先生に怒られたんだっけ?」
「そうそう。永遠が色ボケしてるからいつもの河川敷に行くのも大変なのよ」
お互いの射撃やバイクの練習の為、いつもは永遠と一緒に通っていた河川敷にある市民健康運動公園の第二駐車場。
今は一期に自転車を漕がせて二人乗りでそこに通っているという刹那だったが、中学から高校入学までの間モテ過ぎてイケメンアレルギーになってしまった那由多と、今現在も常に四〜五人の彼氏はキープしている彼方。恋愛経験豊富な二人は刹那に突っ込まずにはいられなかった。
「ちょっと待って刹那さん、そこへは何しに行ってるの?」
「河川敷っていつも鉄砲とかバイクの練習に行ってたとこでしよ?」
「だからぁ、あそこで一期のシューティングの面倒見てあげてんのよ」と、ドヤ顔で腕を組み、鼻息の荒い刹那。
「意味わかんない。普通デートってラウ○ンとかイ○ンとかじゃないの?」
「失礼ね。お出かけもしてるわよ! 私行きつけの荒井模型店に行って新作ガスブロの試射とか、一期のグロックのリチウムバッテリー見たり。でもあの子と街歩いてるとナンパがうっざいからあんま街中歩きたくないのよね。お姉さんたち姉妹なのー? とか。スモルトSS突き付けたら逃げてったけど」
「どうしよお姉ちゃん、私突っ込みが追いつかない……」
「妹よ、これが刹那クオリティよ」




