第68話 永遠 to 一重
学園探偵の二人が新人探偵候補の二人にコテンパンに敗北した翌日。
放課後、一年生たちの教室の廊下には三年生の永遠の姿があった。
「あ、一期。あのさ、一重ちゃんって何組かわかるか?」
わらわらと出てくる新入生たちの中に入学前からの顔見知りの一期を見つけ、ほっとした表情で永遠が一期に話しかける。
「永遠さん! 昨日はどうも。一重さんなら同じクラスですけど、さっき出て行きましたよ。見なかったですか?」
「げー、マジかよ。全然気付かなかった」
「でもバイク停めてる公園に向かった筈だから……」
「サンキュ!」と踵を返し右手を上げて走って行く永遠。不思議そうな表情で首を傾げる一期に背後から声が掛けられた。
「一期! ガンショップ行くわよっ」
「せ、刹那さん⁉︎」
こちらは人畜無害な外見の永遠と違い、既に一年生の間でも(今の所は)ミステリアスな三年の美女先輩として噂になっている刹那の登場に周囲の生徒たちがざわつき始めた。
しかも噂の先輩が訪ねて来た相手は、女子制服を身に纏った男子。更に訪ねてきた刹那にそっくりな見た目と言う、実に触れ難い存在の一期だ。
一期は周りの生徒たちが見ない様に見ない様にと最大限配慮している視線と聞き耳を立てている気配をひしひしと感じた。
「刹那さん、と、とりあえず外へ」
——公園入り口にはKSR-1に跨っている一重の姿とペペペペペッと軽快で乾いたアイドリング音。
「ちょっ、待っ、一重ちゃん!」汗だくでかろうじて出発前のバイクに追いついた永遠は一重の姿が見えるや否やヘルメット越しにも聞こえるように大声で呼び止めた。
「あ、先…永遠先輩やん? なん? うちに用でっか?」
「えっと、恥を承知で頼む! 俺にバイクを、ジムカーナを教えてくれ!」腰を90度に、いやそれ以上の角度に曲げて頭を下げる永遠。その勢いに驚いて一重は上半身がやや逃げ気味だ。
「ちょいちょい、待ちぃや。頭上げてぇな先輩。なんやよーわからんけど、とりまそこで話聞きまひょか」KSR-1のハンドルスイッチを操作してエンジンを止め、キーを抜く。サイドスタンドを出してバイクから降りた一重が公園のベンチに向かった。永遠も黙ってついていく。
「……で、今までの練習じゃダメだって思ったんですね。確かに自己流だと限界はあると思います。永遠先輩のライディング、結構癖ついちゃってるように感じましたし」
永遠の今までの練習方法やライディングについて、更に去年一年で刹那と一緒に学園探偵として遭遇した、バイクの働きが重要だった事案についてを聞かされて、一重なりの見解が伝えられた。
「永遠先輩、私で良ければお力になりますっ! これからは同じ部活の先輩後輩になるんだし!」
「マジで! ありがとう!」
「あ、でも私の指導は厳しいですよー。あと、週に一度だけ私の師匠が教えてくれる日があって。その時はもっと厳しいから覚悟しておいてくださいね」
「厳しいのは願ったりだよ。でも、その師匠って俺も一緒でいいのか?」
「師匠って言っても只のバイク好きのおっさんなんで。永遠さんの事も気に入ってくれると思いますよ!」
「バイク好きのおじさんって?」
「現役白バイ隊員、私のお父さんです!」
「えぇーっ!」




