第67話 一期一会顛末記!
「タイム、1分13秒20っ!」高橋がタイムを読み上げる。
刹那は五個の赤缶をヒット、青缶誤射はゼロ。トータル25秒マイナスの48秒20が記録となる。瞬足ではあったが、撃ち直しやリロードなどで苦戦したのだ。
「やったーっ」スマホの計算機アプリをタップしていた一重が右手を高く上げて一期の方を向きハイタッチをせがむ。
「でも、刹那さんも装弾数多いオートだったら絶対僕が負けてたし……」と申し訳無さそうにそろりと上げられた一期の右手に一重が勢いよくパチーンと手を併せた。
「まぁどっちみち刹那今持ってねーんだけどな」
「えっ、そーなんですか?」
「ちょっと色々あってねー」
「先輩先輩、そんなことより約束っ!」
「わーかったわよ。学園探偵部発足よっ!」
「もーひとつ、忘れてません?」
「だーもうっ、一期っ! 今日から私の彼氏よっ」刹那が一期の鼻先を指さす。
「「ええーっ!!」」と一期だけでなくその場にいた永遠を除いた男子全員が悲鳴のような声を上げた。
「ど、どーいう事ですか??」入学したばかりの一重は学園内での刹那の(一部男子からの)人気を知らないので当然の反応だろう。
「刹那は学園の中でいい意味でも悪い意味でも目立ってるから……」
那由多が新入生の二人に刹那の人気について補足説明をする。
入学当初、美人過ぎる容姿と誰とも話さない刹那はお高くとまっているとカースト上位女子から反感を買っていたこと、暫くして起きたビラ捲き騒動、それで頭おかしい近寄らない方がいいと一部のギャル系女子が作為的に悪い噂を流したこと、しかし時間が経つにつれ実際はコミュ障気味でお高くとまっていた訳じゃなくただの厨二病の残念系だと知れ渡り、一部の陰キャ男子や一部の男子に(女子の目が怖いので)隠れファンが多いこと等々。
話し終わった那由多が今度は永遠に向かって小声で問いかけた。
「永遠くんはいいの? 刹那と一期くんが付き合うことになっても」
「そ、それはあいつの自由だろ」
「だって……」
「ねぇねぇ刹那さん。もしボクが一期ちゃんのタイムも上回ったらボクが永遠さんと付き合ってもいーい?」
元気一杯に挙手した彼方の声が響く。那由多は彼方の突然の提案に驚きのあまり口をぱくぱくさせるが音声が出ていない。
「カナちゃんがぁ? もし出来るなら当然いいわよ」
「はあ? なんでお前が決めんだよ?!」
「いいじゃない別に。アンタこのままだと一生童貞よ! それにエアガン素人のカナちゃんが勝てる訳……」
「高橋先輩! 計って!」いつの間にか公園入り口に立った彼方が声を張る。その素早い動きを見た永遠と刹那は、以前彼方と初めて会った時に彼女が結構な高さの窓から躊躇無く飛び降りて見せたのを思い出していた。
「ちょっと待って、えと……オッケー」という高橋の声を聞いた彼方が走り出す。
「えちょっとカナちゃん、銃は?」
刹那の声も聞かずにひたすら全力で走る彼方。
ブランコ前のサークルを踏んですぐに滑り台を駆け上がってそのまま滑り降りる。そのままシーソー前のサークルを踏んでいき野球選手のように水飲み場にタッチし、デコピンで缶を弾いて叫ぶ。
「ゴールっ!」
「え、えっあ、とストップ! えと、タイムは、25秒10っ」
「で、マイナスもプラスも無しでしょ! 刹那さん、これってルール違反?」
「アレ、だってそもそもシューティングの……あれ?」刹那の頭から湯気が出始める。
「ちょっと先輩! 一体何が言いたいんですか?」一重がつかつかと彼方に歩み寄り上目遣いで彼方に絡む。
「彼方よ。彼方先輩。学園探偵部入るんでしょ? だったらボクも入部するからキミたちの先輩よ一重ちゃん。別にキミに言いたいことがある訳じゃ無いよ」そう言って背の低い一重の頭越しに一期を見つめる。
「あの、やっぱりこんないい加減な勝負で付き合うなんて良くないです……」一期が俯き加減で口を挟んだ。
「ちょっと一期! 勝負は勝負よ!」刹那が一期に歩み寄る。
「でも、だったらせめて友達からとか、期間限定でお試しとか……」
「じゃあ一ヶ月! それまでに一期は私に相応しい男になりなさい! そしたら私の方からお願いするわよっ」
「いや、相応しいって一体……」
「そうね。ジョンウィ○クのような不屈の精神を持ってて、ハリーキ○ラハンみたいに渋くって、マーチンリ○グスのようにタフで、ソニークロケ○トみたいにオシャレで……」
「さ、片付けて帰るか」永遠と寺西が空き缶を拾い集め、ゲーム愛好会・ラジオ研究会の面々もぼちぼちと帰り始める。那由多と彼方も歩きスマホで公園入り口へと歩いていく。
「ちょっと! 最後まで聞きなさいよっ!」
刹那、生まれて初めての(期間限定)彼氏ゲット。
永遠、生まれて初めての彼女ゲット⁇




