第65話 刹那式CQB
「……次は私の番ね。永遠の仇は私が取るわ!」
「いや、死んでねーし。つかその台詞負けフラグだぞ」
そんな永遠のアドバイスも気にせずに刹那はおもむろに公園近くの自販機傍まで歩いていき、ゴミ箱を漁り始める。
「ちょ、おま! いきなり何やってんだよ?」
「何よ? あんた大口叩いて負けたんだから手伝いなさいよ」
「大口叩いたのお前だろっ!」
……と、いつものやりとりの後。
「コーラとスポーツドリンクね」
刹那の指示を受けて空き缶集めを手伝わされる永遠。
しかしそんなに都合良く空き缶が入手出来るはずもなく身銭を切ることとなった。
永遠が買ったジュースはその場にいる女子に優先的に配られ、暫しの休憩タイム。
「赤い缶が犯人役、青い缶が一般人役ね」コーラを飲みながら刹那がゴミ箱から漁った空き缶を木の枝や遊具の上にペアで置いていく。飲み終わった缶も悩みながら配置していく。
「ローリー! こっち来て。ちょっと水平にして持ってて。んであの辺りに私か一期が来たらそっち端に勢いよく座って!」そう言いながら二つの缶を寺西を座らせたシーソーの反対端に置く。
刹那が配置した空き缶は全部で五組。
公園入り口からブランコ前に配置されている防護バー前の地面に描かれた丸印まで走り、そこから約一・五メートルの距離にあるブランコの座面上に乗せられた赤いコーラの缶をヒットする。その場で横に向き約四メートル離れた滑り台頂上、手摺上の空き缶が次のターゲット。ヒット後に滑り台に登り、滑り降りながらやや高い場所にある木の枝に置かれた空き缶を狙い、そのまま走って行きシーソー手前二メートルの位置、ここでも刹那がつま先で地面に描いた丸い線の中で制止。
そのタイミングで寺西がシーソーを使って宙に空き缶を飛ばし、地面に着地する前にヒットさせる。最後に水飲み場の飲み口に半分隠れる形になっている空き缶をヒットしたら終了。
そこまでのタイムを競う。赤い缶はマイナス五秒、青い缶はプラス八秒でフィニッシュタイムに加減される。
「どう、一期? ルールは理解した?」
「はい、大丈夫です!」
「じゃあ私から……」
「待って先輩! 一期先攻にしてくださいっ! だって、先輩のやり方観てから一期が勝っても二番煎じって言われちゃうでしょ?」
「ちょ、今は標準語なのねっ! ま、まぁいいわ」
「ちょっ、ちょっと一重さん!」
猛然と抗議しようと近付いた一期の首根っこに腕を回して耳打ちする一重。
「一期、刹那さんが凄い記録出したら上がっちゃって実力出せないでしょ? それに先輩の事好きだから遠慮してわざと負けたりとかしちゃうでしょ?」
「好きとかそういうんじゃ無くって、推しって言うか、憧れって言うか、なんかそう言う……」
「な〜にコソコソやってんのよ? 私は先攻でも後攻でもどっちでもいいわよ?」
「じゃ、一期先攻行ってきなさいっ!」一重が一期の背中をバシッと叩いた。
叩かれた一期は転びそうになりながらも二〜三歩で立て直し公園入り口まで歩いて行った。
刹那から保護メガネを渡された寺西以外の見物客は危ないので公園入り口付近から見学している。
「高橋! あんたそのオタク臭い時計で時間測って」
「確かにストップウォッチぐらい付いてるけどオタク臭いて……」
ゲーム愛好会会長、高橋幸利がGotui-Watchを操作する。
「ふじもも、合図お願い!」
「よーいっどん!」刹那に促されたゲーム愛好会部員の藤原百花が合図を出す。掛け声と同時に一期が駆け出した!
ウィッ、ポポポッ! ブランコ前のサークルに入った一期が構えるグロックがフルオート掃射される。
カカカンッと音を立てて赤いコーラ缶がブランコから落ちる。
右足の踵を軸にして半回転した一期のグロックがやや離れた位置にある滑り台頂上部の手摺上の空き缶を捉える。
カカンと軽快な音を立ててコーラ缶が落下。
すぐに駆け出して滑り台に登りそのまま滑りながら木の枝の上の缶もヒットさせる。
「ちょっと一期くん凄くない?」彼方が歓声を上げる。
「別に認めたくないけど刹那も出来るでしょ、あんくらい」と吐き捨てるように那由多。
「ねぇ、ボク気づいちゃったんだけど。これ一期くん勝ったら刹那さんとカップル誕生じゃない?」
「だったら何よ?」
「永遠さん失恋……、お姉ちゃんにもチャンス到来!」
「一期くん頑張りぇ!」
「出た! お姉ちゃんの高速手のひら返し! ミラクルなライトとか振っちゃう?」




