第59話 偽物騒動顛末記!
——都成野中学校正門前、から数メートル離れた地点。家政婦が見たような感じで自販機の影に身を隠す永遠たち。
「意外と生徒残ってるもんだな」
「中学生は高校生よりも真面目に部活してるんじゃない?」と刹那がまともなコメントをしたので永遠が二度見する。
「刹那、ちょい」と、那由多が耳打ちする。
「あー、そういう事なら任してよ」
「何だよ? 俺だけ除け者かよ」
「制服の下に鉄砲のおもちゃ隠してそうな人だけ注意して見てって言ったのよ」
「まさに私のスペシャルな観察眼を持って臨まないとよね!」
「あぁ、そうだな」と、素直に認める永遠に驚いて今度は刹那が二度見する。
永遠は巨乳女子を、刹那はハンドガンを携行していそうな人物を注視して小一時間が経過した頃、刹那が声を挙げた。
「あ、あの子絶対ショルダーホルスター下げてるっ!」
「バカ刹那、ありゃ男だぜ」
「あ、ほんとだ」
「永遠くん、バイクスタンバってて! 行くよカナっ!」
「ほいなっ」
「ちょっ、私も行くって」
駆け出した那由多と彼方を追いかけるように刹那が後を追う。
「何なんだよいったい??」悪態はついているが、一応メットを被りキックペダルを起こす永遠。
「ね、お兄さんちょっといい?」彼方が少年の肩に軽く触れながら声を掛けた。
「え、は? えぇっ? もしかしてナユカナのカナさんっ⁉」
「うちらのこと知ってるならコレもうクロ確定じゃない?」
「……ナユタさんも??」
「何、知り合いなの?」と二人の後ろから声を掛けた刹那に気付き、踵を返して逃げようとする少年の耳に「ボッ、ボアッ、ボボボボ」というエンジン始動音が聞こえた。
一方刹那は瞬時にスモルト刹那スペシャルを抜き、振り返った彼の鼻の頭へレーザーサイトを当てた。撃鉄を起こしながら無表情で囁く。
「今日、何発撃ったか覚えてないのよね?
君も持ってんでしょ、試してみる? ほら、抜きなさいよ。
もっと私を楽しませてよ?」
少年は背中を見せたまま逃亡も抵抗も諦めがっくりと肩を落とし小さく両手を上げた。
その様子を見て刹那もハンマーをゆっくりリリースしスモルトをホルスターに収める。
「君のグロックよね? 推奨年齢守ってんのは偉いけど、例え弾が入って無くってもこうやって銃口向けられるといい気しないでしょ? ちゃあんと見つからないように……、痛っ」
遅れてきた永遠が刹那の頭にチョップを入れる。
「見つからなくてもダメだっつーの! そもそも冗談でも人に向けちゃダメッ!」
——コーヒーショップに戻ってきた永遠たち、プラス少年。
静かなテラス席に叫び声が響く。
「女装ーっ⁉」
と驚きを隠さない永遠と刹那。
那由多と彼方、そして一期と名乗った少年は溜め息混じりに首を横に振った。
「二人とも感覚古いって。今時当たり前だって。うちらも男装するし」と那由多。
「ま、でもこの子みたいにクオリティ高いのは一握りだけど」と彼方。俯いて照れる一期。那由多と彼方の話では、メイクの仕方にコスプレイヤー独特の癖があったのと胸の作り方が不自然だったとかで、もしかしたら女装なのではと気付いたという。
「しかしあの一瞬でよくわかったな」と永遠に褒められて今度は那由多が照れて俯いた。
「で、何でって話だけど」刹那が一期に問い詰める。
「いや、悪いやつらが我が物顔で居るのが許せなくって……」
うんうん、と腕を組んで大きく頷く刹那。
「いやいや、そうじゃ無くってなんでコイツなの? って話よ」と永遠が刹那の方に顎をくいっと向けながら聞き直す。
「それは……」
一期は「以前のことなんですが」と前置きして話始めた。
彼は普段はあまり行かないやや離れた場所のハンバーガーショップにて刹那たちが悪党を懲らしめている現場に偶々居合わせたのだという。大人相手に全く臆する事なく大立ち回りをする刹那に興味が沸き、刹那の事を調べていく内に段々と刹那に惹かれていき、元々趣味として嗜んでいたレイヤー魂に火がつき「刹那のコスプレをしたい」というキャラクター愛に変わったそうだ。
「刹那お姉さん! 愛してます! 尊いです!」と、全て打ち明けてスッキリした一期が話の最後に刹那の手を両手で包み込むように握りしめる。
女装もハマる美少年、一期の愛の告白(というよりは推し宣言?)に口元が緩みまんざらでもない顔の刹那、複雑な表情の永遠、その永遠を横目にさらに複雑な気持ちで唇を噛みしめる那由多、そして姉の届かぬ恋心に笑いを堪える彼方なのであった。




