第56話 容疑者、刹那!
キーンコーン(以下略)
本日最後の授業(しかも)数学が終わり、教室内に溜息のような歓声のようなどちらともとれない声があちらこちらから溢れる。
「あぁ、そうだ。刹那と永遠の二人は後で職員室に来てくれ」騒々しさに掻き消されないような教師独特の声の張り方で二人が呼びつけられた。
「ええーっ! 私何も悪いことしてないよーっ!」制服のリボンこそ付けてはいないが、髪色も黒くした刹那は教師に不満タラタラで抗議する。
「刹那はわかるけどなんで俺まで?」永遠の声で我に返り直角に開いた人差し指と親指を顎に当てて窓辺を見る刹那。視線に気付いた永遠と目を合わせた後、二人同時に教壇の方を向く。今度は教師と視線が合う。
その時、数学教師が二人に向けこっそりと目配せをした。その仕草に気付き納得した二人は黙って帰り支度をして教室を出て行った。
そして数分後の職員室内。
「お前たちならコレ、わかるよな?」職員室の片隅で数学教師が机の上に蛍光色の小さな丸い粒を置いて見せた。
「うっわぁ、何コレ? 粗悪な安物ぉ。私なら絶対使わないっ!」わざとらしく、うげーっという表情を作る刹那。
「これ絶対環境に還らないやつですよ。こんなんバラ撒いたらグレた少女が包丁と行灯持って追いかけて来ますよ」
「だよなぁ。まぁお前たちじゃないとは思ってたけど念の為な。疑ってる先生方もいるから……」と周囲に聞こえるように大きめの音量で呟く。
数学教師は以前の依頼で刹那たちと結んだ〝学園内での立場が悪くなりそうなときにフォローをする〟という約束を守ってくれている様子だ。永遠と刹那が嬉しそうに顔を見合わせた。別段学校というものに反抗的な訳ではない二人だが、このくらいの年頃の子供は信頼の於ける教師が居るとわかるだけで心底嬉しいものだ。
「誰かがエアソフトガンを悪いことに使っているんですね」
「あぁ」と永遠の問いかけに答えた教師が続けて事情を話し始めた。
最初はカラスをおもちゃの鉄砲で撃っている少女がいるとの目撃情報だった。それから野良猫、散歩中の飼い犬とエスカレートして行き、とうとう走行中の電車の開いている窓に向けて撃ち込まれたという。教師から見せられたBB弾はその時に車内に落ちていたものだそうだ。
「そんなの警察の仕事でしょ」地元警察の刹那に対する厚遇に少し嫌気が差している永遠が声を荒げた。
「それが警察の動きが鈍いんだよ」
「そんなことある訳ないじゃないですか」
「幾つかの目撃証言から犯人は小柄で金髪の女の子だったっていう話だ。……あと、その、胸が大きいと」
「きょっ、巨乳ぅ? 痛って!」
条件反射的に刹那の胸を見てしまった永遠の臀部に刹那のひざ蹴りが決まる。
「センセッ! 今まで起きた発砲場所教えてっ」刹那の眼が妖しく光った。




