第55話 真理の顛末記!
「結局、説得は出来なかったわ」
教壇の前に立ったまま背中をもたれ肩肘をついた姿勢で疲れた様子の真理が言い放った。
ゲーラ模が部室として借りている教室で彼女から話された、今回の騒動の発端から終焉までの詳細はその一言で締めくくられた。
真理の父親が今回東南アジアの勤務地から日本で引き起こした騒動について、彼は社内でのポジションを大きく落とした。だがしかし、手段は良くなかったとはいえその考え方や彼の人柄に賛同する意見も本社役員内で多数挙がり、別の地球規模で辺鄙な支店への開拓目的での左遷という寛大な処置で終わった。
その結果、真理は学費の高いお嬢様高校と生活水準の高い都内には戻れないこととなり、母親も今の住居を引き払って、真理がこちらで借りているアパートに引っ越して来ることとなった。
いつになるかわからない父の凱旋を待って……。
「そもそも論!(言ってみたかっただけ)
そんなの真理のお父さんが正しいんじゃん? 真理も説得することなかったのに!」今回の一件、何一つ活躍の場が無かった刹那が教壇の上で胡座をかいたまま真理の頭の上から不満そうに言葉を投げかける。
「それはっ……」振り返り、刹那を睨付けて反論しようとした真理が暫く見つめ合ったまま言葉を飲み込んだ。
「真理様は」と士郎が真理に続いたが今度は永遠の台詞に遮られた。
「士郎のことだろ?」と。
「父が今の立場から失脚すると士郎の支援も出来なくなるのは明白だったから……」士郎が自ら話そうとしたのを受けて、真理が俯いたまま語った。
「えーっ! そしたら士郎いなくなっちゃうの?」
「バカ刹那っ!」永遠と那由多の突っ込みが被り那由多が少し頬を赤らめる。
「いや、このままここに通い続けるよ。いつまでも小野家のお世話になったままって訳にもいかないからな。いずれは……と思っていた。少し時期が早まっただけだ」
士郎はバイトをしながら一人暮らしをして卒業までこのまま刹那たちの高校に通うことになるという。
こちらに腰を据えることになった真理も既に刹那たちと同じ制服を手配済みだとか。
「そうだ、士郎っ! 私のパパと一緒に警察の指導員のバイトしたら? 格闘技とか得意じゃないの?」
「俺のは我流のごちゃ混ぜだから無理だろ」
「いや、刹那の親父さんって無償で教えてんだったろ?」
「あっ、そだった……」
「兎に角、私のことでみんなには本当に迷惑を掛けt……」
「真理ちゃん、ここの面子はみんな友達のことで迷惑なんて思ってないよ。俺はむしろ楽しかったし」と寺西。ゲーム愛好会部長とラジオ研究会部長も大きく頷いている。
話も落ち着いてきた頃合いを見計らい士郎は永遠に目配せをして立ち上がる。永遠もタイミングをずらして教室を出て行く。
廊下で永遠を待っていた士郎は「今回の依頼分だ」と、ベリベリ財布から一万五千円を永遠に差し出す。
「や、待てって! 俺の話も聞けって」と、士郎の差し出した札をすぐに受け取らない永遠。
「何でだ? 正式に払うと言っただろ?」
「それはそれで俺のプライドの問題なんだよ」とスマホを操作して画像を探す。
「お前の裏活動についても理解はしているし、反論する気もない。だが俺があの女のスナップを貰ったところで……」
「いや、スナップて。お前本当は何歳なんだよ?」と言いながら永遠が士郎に向けたスマホ画面には、お嬢様高校の制服姿の真理のポートレートと刹那の制服を借りた黒髪短髪の真理のポートレート画像が表示されていた。
「……保存用と観賞用に二枚ずつ」士郎は恥ずかしそうに、だがしっかりと永遠に伝えた。




