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学校イチの美少女が実は残念系ガンマニアな学園探偵物語〜Mild〜  作者: 笹岡 悠起
学園探偵VS誘拐犯、その2
53/90

第53話 父の正義

 真理の父は赴任先の東南アジアの一国にて自社工場内の劣悪な労働環境に対して常々疑問を抱いていた。しかし一企業人として社の方針に逆らう事も出来ず葛藤していた。

 そんな折、日本に残している愛娘が通学路にて外国人風の男たちに誘拐されそうになるという事件が起きた。

 幸いにも誘拐は未遂に終わったが、彼は直属の部下から持ち掛けられた「こちらでの雇用問題が落ち着くまでの間、お嬢さんの身を隠されてはどうでしょう」という進言に素直に乗る事にした。

 しかしこの時真理の父はあろう事か、もし本当に実の娘が誘拐されてしまう事態が起きてしまったとしたら、会社も現地の雇用条件の向上について一考してくれるのではないだろうかと考えてしまった。

 部下に引越しの手配をさせる一方で現地の裏社会に関係のある人間を通して真理の誘拐事件を計画。勿論娘に危害が及ばない様にと念を押した。

 そうして実の父によって計画された二回目の誘拐事件だったが、永遠たちの活躍によって未遂に終わった上、何故か警察沙汰にもならなかった。

 しかし、口を酸っぱくして伝えていた娘の身の安全が守られていなかったことをボディーガードとして傍に置いていた的部(まとべ)から報告を受けた。無論、的部には誘拐事件を計画したのが自分だとは伝えていなかったが、その所為で的部は直属の部下を主犯として疑っている様子。

 父は娘の身の安全を絶対条件としてもう一度最後の誘拐事件を依頼した。

 だが、父が現地人を通して依頼したこの一連の計画は、今真理の目の前にいる男に全て筒抜けであった。

 彼らは彼らで全く別の目的で真理への接触を独自に企てた。


——猛スピードで走り、激しく車線変更をして揺れる車内で真理は事の経緯を聞かされた。

「……私にその与太話を信じろとおっしゃるの?」

 実の父が娘の誘拐事件を計画する。目の前の男、父が本社勤務の間一番の側近として働いていたその男から説明された内容は真理にとって信じがたい内容であった。

 だが父の性格、その比類無き正義漢ぶりを知っている真理としては、父がそういう考えを起こすことがあったとしてもおかしくないのでは? と思えたのも事実。父はそういう人間だからこそ、以前出張先で関わりのあった士郎の世話をしているのだ。

「お嬢様、私達は……」

「真理で結構です。単刀直入に聞かせて頂きます。あなた達の目的は何ですか? わたくしに何をさせたいのです?」

「手段を選ばない危険のある実行犯からの保護と、……お父様の説得です」


 父の元部下からは意外な提案がなされた。彼が言っている事が本当なら、その事実を会社内の然るべき機関に伝えればいいだけのこと。確認しなければならない。

「貴方達は父の味方なの? それとも敵なの?」一企業内の問題について言及しなければならない事象に対して、敵か味方かなどと問うのは何と稚拙な事だろうと思った真理だったが、今までに出会った事のないタイプの人間(ゆうじん)刹那(せつな)に当てられてしまったなと気付き自嘲気味な笑みが(こぼ)れ口角が少しだけ上がった。


「真理さん、現地からこちらに相談してきたお父様の補佐役も含め、我々はお父様の味方です。ですがその前に大前提として会社員・企業人なのです。我々にもお父様にとっての真理さん同様、それぞれ守るべき家族がいるのです。お父様のお考えは正しいのですが、我々はお父様に社の方針を納得した上で今のポジションのまま仕事を続けて頂きたいのです!」

 ふぅっ、と溜息をついてから真理が言った。

「……おそらく。私の学友が私を追い掛けています。まずは彼らの行為を徒労に終わらせない様にしないと」


 真理はスマホを取り出し士郎に電話をかけた。

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