第51話 摂理と末那
真理の制服を着た、真理に似せたメイクにウィッグを被り黒髪縦ロールになった刹那。
写真で真理を見た程度の異国人の目にはまず真理本人と映るだろう。
そして刹那の制服を着てウィッグで短髪になってはいるが、知り合いなら一目で本人とわかる真理。
先に刹那が門を出て、数メートル後方を真理が歩く。
「なぁ、これ本当に正式な依頼でいいのか?」二人の後ろを歩いている永遠の問いに別れ際、士郎が答える。
「あぁ、俺の独断による提案だ。俺が払う。くれぐれも金銭のやり取りが発生していることは真理様には内密に頼む」そう言って士郎は刹那風真理を、永遠は真理風刹那の後を追いかけた。
永遠が設定している探偵依頼料は一日五千円。それはバイト先も時給も少ない片田舎の高校生にとって決して安い金額ではない。但し刹那ファンの男子からすると生写真着きの料金としては安くもなく高くもなく上手く足元を見た金額だった。
高校に入った刹那が思いつきで始めた学園探偵業は、入学当初孤立しかけていた刹那をさらに近寄り難くしただけで、依頼が舞い込んでくることはなかった。
それを見かねた永遠が男子の中でも信用のおける人間だけに提案したのが生写真の付加サービスと困り事のでっち上げだ。しかしあんまり安くしても依頼が来すぎてしまうのと、秘密が漏洩するリスクが高まる。生写真を買うには高いがついでに運良く困り事が解決出来きる。懐具合に余裕がある時なら頼んでみても良いかなと思える絶妙な料金設定なのだ。
計画初日と二日目は空振りに終わった。
そして、真理の父親に協力して貰い、現地の部下に伝えた真理転校の偽情報では本日が最後のチャンスになる三日目。
緊張の面持ちでいつも通り正門を出た永遠と士郎。
「永遠、怪しい車は居ないけど、昨日と違って怪しい人影は割といるぜ」永遠と刹那が普段使っているインカムアプリを使ってローリーから通信が入った。
先に正門を出ていたローリーはバス停に座りスマホゲームをしているフリをしつつ周囲を警戒していた。
本日は計画も最後の日なので、永遠たちも総出で臨んでいる。
学校の正門を出て真理が住んでいる賃貸マンションの方向へ歩いて行く刹那。
数メートル後方に真理。
真理に扮した刹那の後ろにお供の様に士郎がついていく。永遠と並んで正門を出た士郎が小走りに刹那に追いつこうとしたその時、士郎のスマホに着信があり歩を緩めて電話に出た。
後方で真理と並んで歩いていた永遠が士郎の様子がおかしいことに気付き少し歩を早めて近づく。
「え? こちらに?」士郎のすぐ後ろまで追いついた永遠の横を二人乗りのスクーターが通り過ぎる。
「ヤベッ、今のっ!」すぐにスクーターを追いかける永遠だが勿論追いつかない。
タンデム席の男が数メートル先を歩く刹那に掴みかかろうと手を伸ばしたその時、刹那の身体が素早く動いた。
右手でショルダーホルスターからハイキャパ5.1Rを抜き、その手を腰に回す最中にハイキャパ5.1Rを空中で手放す。重力に従って地面に落下するハイキャパ5.1Rのグリップを左手でキャッチし、身体を右回りに捻る。その間、刹那にとっては窮屈な真理のブラウスのボタンは急な動きで弾けそうになるがギリギリで持ち堪えている。続けて右手はリバースドローでハイウエストホルスターからスモルトを抜く。
一連の動きで半身翻した刹那がスクーター運転手のシールド目掛けて二丁拳銃を連射する。三連射分の弾がシールドに命中し、計六発分のペイント弾が視界を奪う。
「%▲ホガ○δΩ!」またしても異国の言葉を叫びながら刹那の鼻先を掠めて電柱に特攻していく二人乗りのスクーター。
「ユーリカッ!」刹那がガッツポーズで叫ぶ。
「キキーッ」
刹那の叫びとほぼ同時に後方で車のブレーキ音が聞こえた。
刹那と永遠、士郎が振り向くと、白い大型のバンが真理の隣に止まりスライドドアを開けて半身乗り出した男が「真理さん乗って」と声を掛けながら驚いた様子で固まっている真理の手を引き一気に車内に引き入れた。
士郎と顔を見合わせた後、永遠がインカムで先週末小型二輪免許を取得したばかりの那由多を呼ぶ。
「那由多急いでこっち来てくれ!」
「了解っ!」と言う那由多の返事を聞いて次はゲーラ模メンバーに繋ぐ。
「校内攪乱宜しく!」
「ラジャー!」とこちらも返事が聞こえるのとほぼ同時に校庭で爆竹が鳴り響いた。
正門付近で下校生徒の見送りをしていた教師がその破裂音を聞き慌てて校庭に向かって駆け出す。
教師がいなくなると那由多が正門前に堂々とエイプ100で乗り付ける。刹那のヘルメットを被り、永遠のジェットヘルメットを顎紐に腕を通してぶら下げ、制服の上からは重そうな黒いナイロンのベストを羽織っている。
「真理ちゃんは?」
「攫われた! だけど今度は前の奴らとなんか違う! スーツ着た男だった」




