第50話 真理の転校⁈
「最近の本屋って何でも売ってるのね。なんか木の立体パズルみたいなさ? そんで完成したら動くおもちゃみたいになるのよ!」
昼休み。刹那が相変わらず米粒を飛ばしながら話に夢中になっている。それを聞いているのは那由多と彼方姉妹と小野真理と的部士郎、永遠とローリーの6人。内、真剣に話を聞いているのは彼方と真理とローリーだけで、あとの三人はそれぞれ別の考え事だ。いや、正確には那由多には特に考え事はないが刹那の話に心底興味が無いだけだった。
「でさ、通りすがりに小っちゃい女の子がね、ってローリーここで食い付くんじゃないわよっ! でね、展示されてる完成品のおもちゃ指差して言うのよ『リボルバー』って。そしたらそのお父さんがさ『そうだねー』って言ってるの。私思わず立ち止まってそのおもちゃ見たんだけど、どう見てもオート拳銃なのよね。多分モデルはガバメントね。いやいやいや、お父さんそんな適当に答えちゃダメでしょーって……」刹那の一人語りは延々と続く。
その傍らで士郎が小声で永遠に向けて呟く。
「永遠、この前お前が言っていたことを俺なりに考えてみた。その上で出した結論なんだが、やはりこの間の誘拐未遂のことを父上に知らせようと思う」
「お前、それ言ったら真理ちゃんまた転校させられちゃうんじゃ……」
「ああ。そこでお前たちに協力して欲しい」
「たちってどこまでだよ?」
「あの女と那由多。特に那由多だな。必要なら妹にも」
「俺と刹那は協力するけど、那由多やカナちゃんに危ない思いはさせられないぜ」
「大丈夫だ。放課後部室で詳しく話そう」と言い残すと、あっという間に食べ終わった弁当を仕舞い教室に戻って行った。真理を残して立ち去る士郎を見て、真理は士郎が永遠たちを信用しているのだという嬉しい気付きと一緒に少し寂しい気持ちも感じた。
——放課後のゲーラ模部室。
教室の端で士郎が計画の概要を永遠に話している。
まずは真理の父親に彼女が元々いた女子高に戻るようにと偽の手配を進めてもらう。転校の日程を早めに設定し、その実務は既に終わらせた後だと言う事にして、それを極力極秘で、話しても真理の転校を提案した部下までにして欲しいと伝える。
そうして連休を絡めて誘拐が再実行されそうな日を絞り込んで犯人を捕まえる。しかし士郎がそこまで話したところで永遠が質問した。
「俺が思ったのはわざわざこっちに転校したのが変だってだけだぜ。前のお嬢様女子校の方がセキュリティ高い訳だからな。ただそれで転校を提案した人が怪しいってのは早過ぎないか?」
「現地の雇用問題で話し合いが失敗すれば、真理お嬢様の父上が退陣する可能性もある。そうすると直属の部下が怪しい……。だけど、お前の言う通り、確証はない。あくまで勘だよ。だけど俺はそれだけを頼りに生きてきた」
「なぁ、お前ってなんでそこまで……」
「話せば長くなるが俺の命はお嬢様の家、小野家に拾われたようなものなんだよ。元々孤児だったから、正直本当の年齢も国籍もわからない。だから一生掛けて恩を返すつもりだ」
永遠は静かに頷きそれ以上は何も聞かなかった。
以前士郎が言っていた「遊びじゃない」と言う言葉が思い出された。




