第37話 発足記!
「どーせ模型部でしょ」と額に鞄のショルダーベルトを引っかけ、後頭部で組んだ手で首をささえながら大股で歩く刹那。
その後ろ、歩きスマホで『そっち行くよ、模型部?』と永遠にメッセージを打ち込む那由多。
刹那が模型部が使用している教室の前で立ち止まってノブに手を掛ける。立て付けの悪いドアに嵌め込まれた磨りガラスが揺れてびびり音を出す。丁度、那由多がメッセージを送り終え、室内からスマホのバイブが机をがたつかせる音が聞こえた。小走りで追いかけてきた彼方が二人に向かって「お姉ちゃんっ!」と声を掛けたのもこのタイミングだった。
彼方の方を向いたまま勢いよくドアをスライドさせる刹那。
室内では慌てて何かを鞄にしまい込む永遠の姿。
「何よ、まーたエッチな本でも見てたんでしょ?」
「またって、前があったような言い方すんなよ!」
(よく見えなかったけど、本じゃなくて写真よね?)と永遠のことを異性として少しだけ意識し始めていた那由多は、その気持ちが少し削がれていくのを感じた。
「まったく男って……」と刹那と那由多が溜め息の様に言葉を吐き捨てた。
「何何?」とワンテンポ遅れて室内に顔を覗かせた彼方に
「ついこないだまで中学生だったあんたにはまだ早い!」と那由多がお姉さん顔をした。
ここからは数人で雑談となった。
ゲーサーの中に〝なゆかな〟を知っている生徒がいて、サービス精神旺盛な彼方がコスプレ裏話を展開し盛り上がる。刹那はローリーとラジ研と一緒にスリーブガンの小型化について話し合った。ラジ研部長の宮土がセンサー作動でギミックの小型化を提案する。
ガヤガヤとお菓子を摘みながら盛り上がる中、永遠と那由多だけは二人きりで話している。
「永遠くんは知ってるの? 刹那が女子達にハブられてるの?」
「〝一部の〟女子にだけだろ? どうせあと一年半くらいなら知らない方が幸せだろ? それに知ったところであの性格だからな。大して気にしないだろうし」
「永遠くん女心もーちょっと勉強した方がいいよ。マイナス5点」
「ナンだよそれー。何点で不合格?」
「内緒!」
永遠と那由多の密談も終わり、いつの間にか全員でボードゲームで遊びながらスリーブガンについてのアイデアを出し合っていた。
ゲーサーの面子はネット検索が得意で、どこからかデリンジャーより小さいハンドガンの画像を見つけてきて、彼方はとりあえず刹那の私服の袖の裏地に滑りをよくする為のサテン生地を縫い付ける等リメイク案を出していた。ラジ研は電磁石でハンドガンを射出する案を出したがみんなに笑われた。
「楽しいねー。いっそ部活にしちゃう?」とルーレットを回しながら刹那が何気ない一言。
「え? それ私も数に入ってる?」と那由多。
「そもそも何する部活なんですか?」と彼方。
「俺は楽しそうだから賛成! 今みたいに大人数でゲームできたら満足」とゲーサー部長・高橋が言う。他の部員二人も頷いている。
「模型の方は去年先輩卒業してから俺一人だからいいけど……」とローリー。
「部費増えるかな? そしたら部費で竹輪買おう!」とラジ研部長・宮土。
「俺もやっぱり含まれてるよな……」と永遠。
「スクールディティクティブって部活になるの? ラジ研やゲーサーも活動範囲内にしないとじゃない?」と那由多がまともな意見を言う。
「何でも部とか?」とローリー。
「学園生活向上部とかなら、ゲームやラジオも出来るんじゃねーかな」と永遠。
「じゃあ〝刹那が大いに学園を……〟」
「いや、盛り上げちゃダメだろっ!!」と永遠が突っ込む。
いつか本当にみんなで新たな部活動を創る日が来るのだろうか? でもとりあえず溜まり場は出来た様子。
みんなの顔を見て、無駄な放課後なんて実は無いもんだな、と思う永遠だった。




