第25話 ガンスミス・ローリー
——永遠が猫探しに協力している頃、放課後の模型部部室。
と言ってもいくつかのマイナー系部活動がまとめて空き教室を共用しているだけなので、窓際にはテーブルトークRPGで遊んでいるゲーム愛好会の二人がいて、教壇の辺りに陣取ってウォークマンと竹輪を片手におしゃべりしているのはラジオ研究会の二人だ。彼ら彼女らには、ジャンルこそ違えどもお互いに世間一般からオタクと言われている趣味を愛好する者同士としての仲間意識が芽生えている。
そして本日はスリーブガン作成の際にこの教室に顔を出した〝陰キャの星・隠れた学園のアイドル刹那〟が来ている所為で、皆いつもよりも落ち着きがない。表面上はそれぞれの活動に専念している様に見えるが、密かに刹那と寺西の会話に聞き耳を立てていた。
「どう? ローリーいけそう?」
「今回はプラだし加工的には出来ると思うけど……」ローリーがそれぞれバラバラのパーツを手に取りながら言う。
机の上にはバレル部分とグリップが欠品のコクサイ製のリボルバー拳銃、スミス&ウェッソンM19。シリンダーがストレートに抜けている最初期モデルだ。バレル部分がないがグリップエンドの形状から元は4インチ以上のモデルだっだと窺える。
そして、刹那がネットオークションで見つけた東京マルイ製のリボルバー、コルトパイソン6インチ。但し、シリンダーの改造に失敗し、シリンダーも回らないというジャンク品。
「バレルはコレ」そう言って刹那が机の上に置いたのは外側が茶色く変色した真鍮製のパイプ。手に取ったローリーが中を覗き、ライフリングと言われる溝に驚く。
「なにコレ?」
「これはねーMGCが世に先駆けて送り出した、BB弾に回転を掛けて、あ、回転と言っても今主流の飛距離を伸ばすためのホップアップじゃなくってぇ、命中率を上げるための……」
刹那が早口でうんちくを垂れ流しているが、ローリーには半分以上意味がわからない単語ばかり。
「グリップはこういうの、作れる?」とローリーにスマホ画面を見せる。
そこにはコルトパイソンと似た見た目のスミス&ウェッソンM586とサングラスをかけたスーツ姿で危険な香りのするダンディな刑事の画像。刑事が愛用するそのM586には全体的にチェッカリングと言われる小さな菱形模様の滑り止めが入ったゴム製グリップがついている。
「うーん、ゴムは厳しいけどレジンなら出来なくもないかな」
「レジンって百均とかで売ってるあの透明なの?」
「まぁ透明なのもあるけど。要はプラスチックってこと」
「ならなら、琥珀グリップとか作れない? で、小指の辺りはもっと細く絞ってタンクもネジんとこ削って出来るだけ薄くしてぇ……」
刹那のオーダーは延々と続き、途中からゲーム愛好会やラジオ研究会の面々も参加しての大ディスカッションに発展した。
「……でね、マズルウェイトにレーザーサイトを入れてぇ、名付けて〝スモルトセツナスペシャル(Smolt Setsuna Special)〟!」
全員から拍手が起こり、満足顔で腕を組んでいる刹那。ラジオ研究会の生徒がレーザーモジュールの製作に協力してくれることになり、ゲーム愛好会の皆は琥珀グリップの参考資料を集めてくれることになった。
斯くしてオタク趣味を通して残念系美少女に少しずつ友達が増えていくのであった。




