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学校イチの美少女が実は残念系ガンマニアな学園探偵物語〜Mild〜  作者: 笹岡 悠起
学園探偵VS迷い猫、その2
24/90

第24話 ストラトスキャット

 放課後。

 ここ数日、刹那(せつな)は模型部に入り浸っている。


 先週末、刹那は父親の趣味部屋を勝手に漁り、ジャンクボックスのから古いリボルバー拳銃を発掘したとか何とか。週初めの月曜はそのおもちゃについての熱弁からスタートしていた。

「ジョンも古いんだろ?」

「タナカやマルシンとコクサイじゃシリンダーの抜け感が全然違うのよー!」

 とよくわからないキレ方をされたその日以降、放課後は寺西と模型部だ。

 高頻度で刹那と一緒に登下校している永遠(とわ)は、寂しくは無いが物足りない気分で一人河川敷の練習場に向かうことにした。


 永遠たちが通う学園はバイク通学が禁止なので、近くにある小さな公園の茂みの中に僅かばかりの偽装工作をしてエイプ100を隠してある。

 永遠が公園に入るとブランコに那由多(なゆた)が座っていた。

「あれ、那由多じゃん」と声をかける永遠。

「遅かったね」という那由多に首をかしげ少しだけ考え込む永遠。

 永遠と那由多は同じクラス。特に掃除などの当番がなければ先に那由多が公園にいることはない。永遠は自分でも意識していなかったが、放課後刹那が模型部に行き教室からいなくなるまで彼女から声が掛かるのを待っていたのだ。那由多から「遅い」と言われて初めてそのことに気が付いた。

「なんかさ、刹那のやつが……」と永遠が気まずそうに言い訳をし始めたが、那由多が耳を指で押さえながら「あーあーあー」と聞くつもりがないそぶりを目一杯見せてきたので続きを言葉にするのを()めた。

「つか、だれか待ってんの?」

 永遠の無神経な問いかけにブランコに座ったままの那由多がゆっくりと腕を上げ、指先まですっと伸ばして永遠を指さした。

「ねぇどっか連れてってよ。河川敷とか。いつも行ってるんでしょ刹那と?」

「いや、でもメットとか……」

「刹那のがあるでしょ? 借りてもいいって刹那言ってたよ」

 那由多の言っているのは勿論嘘。ただ、那由多には刹那に怒られない自信があった。

 那由多はこの二人がお互いに抱いている感情について、永遠の方だけが刹那に特別な気持ちを持っていて、刹那にとって永遠は幼馴染み以上の何者でもないだろうことを確信していた。

「永遠くん、私にバイク教えてよ」

 さらに女子に免疫がない永遠が女子からのお願いを断わる術がないことも見抜いていた。趣味系男子との距離の詰め方も。


——いつもの河川敷。

 まずはクラッチを使っての発進から教える永遠。

 おっかなびっくりとゆっくりアクセルを開けている那由多。当然、半クラ状態からガクッと車体が動いてびっくりしてのエンストを数回繰り返している。

「永遠くん〜っ」と情け無い声を出す那由多の横に立ち、那由多の手の上に自分の手を乗せて、ゆっくりとクラッチを繋いでみせた。

 自分でもわかるくらいに真っ赤な顔になっている那由多、特に何も意識せずただ自分が父親と母親から教わった方法でクラッチミートの感覚を教えようとしている永遠。その平然とした態度が、永遠に少しだけ好意を持ち始めている那由多には触れ合う手の感触も相まって歯痒かった。


「きゃー動いた動いた! 走ってるっ!」

 自身も免許取得で苦労をした永遠の教え方は那由多にもわかりやすかった様で、マニュアル車の一番の難関、クラッチを使ってのスタートは無事クリアできた。

 感覚を忘れないうちに繰り返しスタートの練習をしたところで、タンデムで空き地いっぱいに大きく周回をしてみせて、ギアチェンジの仕方や曲がり方を教えていく。説明を終え、那由多に実践をさせようと一度停車した永遠だったが、すぐにやや離れた場所からこちらを眺めている人影に気づき、そのままゆっくりとエイプで近づいた。

「この間の……」と、名前を思い出そうとしている永遠に優しく被せるように

「有田。有田莉愛(りあ)だよ。今日は江口さんは?」と少女が助け船を出す。

「あいつここんとこ寺西ってやつと模型部に入り浸ってるよ。それに別にいつも一緒な訳じゃねーし。有田さんはもしかして、また迷い猫(まよいねこ)?」

「そうなのー。散歩中に気付いたらいなくなっちゃっててー」

「ちょっと待って。猫と散歩してるの?」不思議そうに那由多が尋ねた。確かにあまり猫と散歩する人はいないだろう。

「普段は一緒に家まで歩いてるんだけど。気が付いたら途中でどっかいっちゃってたの。こんなこと今日で二回目だよ」

「手伝うよ。どうせ暇だし」と提案する永遠。

「勝手に依頼受けたら刹那が怒るんじゃない?」やや不機嫌そうに那由多が耳打ちする。

 困ってる人がいるなら手を差し伸べる。たとえ別の女の子と一緒にいたとしても。

 永遠に悪気がないことも彼がこういう性格だということもわかってはいるが、二人きりで一緒の時間を過ごしていたのに何の躊躇(ためら)いもなく〝暇〟と言われた那由多はやや複雑だ。そんな気持ちから少し意地悪なことを言ってしまった。

「猫探しくらい普通に手伝えばいいじゃん。一緒に探そうぜ」

「べべ、別に私はいいんだけど」

〝一緒に〟

 些細な事で気持ちが上向きになる。

「単純だな私も」聞こえないように小さくぼやく。

「えっ?」

「別にーっ!」


「で、有田さん。猫の特徴とかあるの?」

「確か三毛猫だったよな?」

「そだよー。ストラトスって名前呼ぶと多分反応すると思うー」

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