第21話 作戦会議!
週末の尾行ミッションから一夜明けた日曜日、永遠の家。
昨日の反省会と今後の作戦会議の為に集まった面々。
永遠の母親から出されたお茶菓子をつまみながら、ちゃぶ台を囲んで座っている。刹那はまるで我が部屋で過ごすかのようにベッドの上で胡座をかいている。
「ローリー、そこのカントリーマダム取って。あ、そっちじゃ無くて普通のやつ。こっち投げて」
「へー、ここが永遠くんの部屋……」
「ちょっと那由多。あんまりキョロキョロすんじゃないわよ」
「いや、お前ん家かよ! なぁ、とっとと始めようぜ」
「それでね……」昨日の尾行失敗の詳細について、那由多が話し始めた。
カラオケ店を出た件の先輩と女子大生は腕を組んだまま、ややフラつきながら繁華街を抜けていく。
時折電柱の影などで壁にもたれ、女が男の首に腕を回して濃厚な口付けを始めたりする。そのまま二人が向かって行ったのは当然の如くラブホ街。しかしその入り口で刹那の足取りが止まった。
「ちょ、ちょっと! 何立ち尽くしてんのよ? 刹那!」
「だ、だってここって、この先って」
小刻みに震えている様子の刹那が冷や汗をかき始める。肌色の汗が流れた跡に透き通る刹那の青白い肌が覗く。
「ほら、急がないと」と、那由多が組んだ腕を引っ張るが、刹那の脚は緊張ですくんで上手く歩けない。
向かいから歩いてくるスウェット姿の小汚い中年とチューブトップにカーディガンを羽織った派手目な女性の二人組が刹那と那由多をちらりと見る。
「お姉ちゃん、彼氏嫌がってるじゃないか。おじさんが相手してやろうか?」
ホテルから出てきたばかりであろうその男性。隣には春を売り終わったばかりの薄化粧の女性。中年オヤジの品のない一言に連れ合いの女性も嫌悪の眼差しを向けている。
オヤジをキッと睨み、踵を返してホテル街とは反対の方向へと走り出す刹那。途中足がもつれて転びそうになる。
「ちょ、ちょっとっ!」と言って追いかける那由多。
ほんの十数メートル走った所で蹲り、道の端っこで「うっ」と口元を押さえたかと思うと、ビチャビチャと先程まで食べていたジャンクフードを吐き出した。
「うわっ、……大丈夫?」追いついた那由多が背中をさする。
「何アレ? 汚らしい。同じシャンプー臭いプンプンさせて、あんな……」と、言葉の代わりにまたも吐瀉物を出す。
少し呆れ顔で辺りを見渡し、自販機でミネラルウォーターを買ってきて刹那に渡す那由多。
「とりあえず、口濯ぎなよ」
「……ありがと」
五分程して少し落ち着いた後、永遠に電話をかける刹那。
「……ターゲットをロスト。……オーバー」
刹那が気持ち悪くなり戻したことまでは伝えていないが、那由多の報告は「刹那が緊張してラブホ街に足を踏み入れる事が出来ませんでした、ちゃんちゃん」と締めくくられた。
「それ、完全に刹那やらかしてんじゃん」
「何よ! こっちの身にもなってみなさいよっ!」
いつもと違い少し暗い表情で訴える刹那の顔を見て、一年生の頃にギャル達に騙された事件を思い出した永遠もそれ以上の追求を止めた。
「まぁまぁ」と那由多がなだめてその場は収まったが、今後の方針は立て直さないといけない。
「ターゲットのスマホでも弄ることが出来れば楽なんだけど」と言うローリーに刹那がはてな顔を向け永遠が補足する。
「最近のスマホってGPSで場所探せるだろ? 尾行しなくても場所が特定出来たらラブホでもなんでも出る時に証拠写真撮ればいいだけだからな。ミッションは尾行から短時間の張り込みに変わる。んでも画面パスワードにログインIDにアプリのインストールって無理ゲーだよ。iPhoneだったら認証さえクリアしたら探せるけど、それでもやっぱパスワードわかんねーとだし」
永遠の説明を聞いて、胡座をかいた姿勢のまま転がって横になり考え込む刹那。構わずに永遠は続けた。
「証拠はねーけど、現時点でわかったこと報告したら諦めるんじゃないか? 合コンで知り合った女とすぐにラブホ行くような男だぜ?」
「わかってないなー永遠くん。恋する乙女は盲目なんだよ。証拠も何も無しで伝えたって信じないよ。寧ろ逆効果」
そう語る那由多がこの面子の中では一番恋愛経験が豊富そうだ。
突然、刹那が起き上がり小法師のように起き上がって那由多に話かける。
「那由多、アレ持ってる? 始まっちゃった!」
「アレって……何ソレ? 信じらんない。ちょっと待ってよ」と鞄を探る彼女の手を引き「男子の前で出さないでよ、恥ずかしい! 一緒にトイレ来てっ!」と連れ立って部屋から出て行った。
ポカーンとした表情で固まってるローリーに永遠が「あんなもんだよ、残念系美少女」と言って両手を開いて肩をすくめてみせた。




