えいっ、ファイアー、アイスストーム!
はあ、はあ…異世界来てそうそう死ぬとこだったわ…
何とか朝月の援護があったので逃げられたが私たちのみで対処とか言ったら全滅不可避よ。
「楽しかったわね。じゃあダンジョン行くわよ」
「なんで逃げた私たちより余裕そうなのかしら…」
もうだめだこいつらの異常性を気にしたらきりがない。
おあつらえ向きの看板がある入り口をよそに中に入っていくとすごいわね自動で壁掛けのたいまつに火が付き始めたわ。
恐らく魔力の仕掛けがあってそれがセンサーのような役割をしているのだろう。
壁は石材のブロックでできており音なんかは結構響いているようだ…これはリアルRPGといっても過言ではないわね。
「このダンジョンはただの上級。観たところそれほど脅威なものや仕掛けはなかったわ。というわけで最後尾は私、最深部まで攻略してってね」
観た…これが雪梛も使っていた観察眼のことなのだろうか、そのあたりは少し与えられている情報が少なすぎるわね。
考察でもしてみようかと思ったところで出たわね定番の分かれ道。
「とりあえず左行こうか。即死トラップだけ気を付けてね」
「全員ぺしゃんことかそれはそれでおもろいがな」
先頭を任されているこの子がぐんぐん進んでいく。
進み始めて20秒ほど、唐突に止まったようだ。
「おっと、この先はワイヤートラップが張ってあるな。どうする?」
「任せろ」
自信満々な無無が全員を下がらせ投げナイフを当てた。
「前に飛べ!」
「はいよ」
おお、すごいわね…
後ろは上から天井が落ちており前には道が出てきていた。
「こんなトラップよくわかったわね」
「これは構造的に簡単に分かったぞ。まず先ほどナイフを投げた位置だが声の響きが違和感あった。くわえてあそこは曲がり角だ。あの瞬間に後退方向に飛ぶと進めんしそもそもワイヤーを近距離で触れるとは思えん。まあ予想が外れたら全員ぺしゃんこだったんだがなはっはっは」
「これだから生死の二択大好き野郎は…」
つまり外していたら私たちは死んでいたわけね…
それからは特に何事もなく進んでいき第一階層が終わった。
そういや雪が一度だけ壁に挟まれたけれど些細なことね。
「死ぬかと思ったわよ!?」
「その割には波動最大!とか叫びながら砕いていましたが」
「ネタ精神が出ただけよ」
「第二階層はこの世界を読んだことある読者なら飽きている大量魔物戦よ。人数と強さに比例する物量を倒しなさい」
「強さ?」
「安心なさい。あたしの強さはぼかされているわ」
なんだかよくわからんが大量に殺せるのなら大歓迎よ!
私と相棒が目を早くも虚ろにさせながら抜刀を行い構えを取る。
「無双ゲーが始まるぜ相棒。そんな装備で大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題ない」
芝居が終わると同時に前方に凄まじい数の魔物が、湧いてきた。
「私の刀さばきが輝くなぁこれは」
「なによ、弱者しかいないじゃない」
「手違いで殺してくれませんかね…」
1人血で一色に染まりたがるアホがいるが全員が意気揚々と戦地へ赴く。
朝月は上空の方で座りながら観戦しているようね…どうやって浮いてるのかしらあれ。
とりあえず伝達効率20%で接触を行い開いていた口にナイフをぶち込む。
いつものような柔らかい肉を突き刺す感覚が肌から脳に送られると思ったら…氷!
即座に引き抜き距離を取りながら迫る氷塊の軌道をずらす。
まさかの魔法を使うタイプなのね、でも分かれば脅威ではないわ。
私たちがいた世界にも銃があったように偶に遠距離攻撃をしてくる奴がいた。
そしてこの魔物たちが使用してくる魔法はあまりにも遅すぎる。
故にこの程度、意識して見分ければ弾丸以下の脅威なのよ!
六方位から迫る意志の入った自然現象を空間においていきながら背中に一振り。
返り血すら付かない速度で切り捨てた後即座に次へと移動する。
肩関節、首、脳天、胃、肝臓、腎臓、大動脈…
「はは、ははは…はははははははははははははははははははは…」
致命傷になるかならないかの攻撃を目にも止まらぬ速度で続ける。
やっぱり最高なものだわ、これほどの高揚感はあの子との思い出の次ぐらいにはなりそうね。
絶対伝達効率鍛錬時の反動が来ているわよ膝がガクガク震えるぐらいアガっているわ。
次は上空からね身体をかなり傾けてから引っ張るように刀を振る!
あら、つい楽しくなりすぎて骨まで入れちゃったわ反省。
相棒の方をみてみると明らかに血の量が異常な光景が広がっていた。
「はっはっは!もっと私に血を見せてくれ!!!」
迫る3体の攻撃時の時差を突いて連続討伐、ふつくしい…
「えいっ、ファイアー、アイスストーム!」
「ダイヤキュート、ブレインダムド、ジュゲム!」
「ばよえ~ん、ばよえ~ん…ばよえ~んばよえ~んばよえ~んばよえ~ん…」
なんか連鎖しまくってるし最後の雪はやばすぎだろ3回目以降爆速になったわよ…
そんなこんなで第二回層も終了、なんかラストみたいな扉出てきたわよ。
「次でおしまいよ〜。さっきの戦いは懐かしいものを感じられたわ」
「あんな戦いが懐かしさを感じさせるはやばくないか」
「まあ、もう変人以外生き残れない世界だし」
扉を開けると中にはドラゴンがいた…このサイズじゃまた瞬殺よ?
と思ったが多分魔法を使うだろうから案外強いかもしれないわね…?
急に無無が脱力を開始した。
「緩めて、緩めて…」
脱力が進み膝がついて頭から前に倒れ込んで…!?
突如立っていた場所にへこみができたと思うと既にドラゴンの腹部に突き刺さっていた…いやあれは拳がめり込んでいるだけね。
「終わりだ」
アッパーか…回収よ!
瞬間的な脱力からの解放を行い無無を回収していく斬新なスタイル。
予想通り火を吹いてきていたので危なかったわね。
「わりぃな、一撃で終わると思ったんだがな」
「恐らく魔力とやらで傷を何とかしたんじゃないかしら。少なくとも私も殺したと思ったわよ」
迫る風と火の玉は切らずに避けて戻っていくわよ。
「先程の火球、恐らく斬れないですよね?」
「多分そうよ。なんとなくそんな予感がしたわ」
切れないとなると単純に考えれば高密度なのか構造の複雑化がされているとなるけれど斬れない事実にかわりないから捨て置くわ。
次は炎熱ブレスね氷とかやめなさいよ?
予測が効かないので私たちは前方に回避、やはり雪は残るわよね。
「私もさぁ、刀使ってみたかったんだよ!」
完全に欲望入ってるわねあれ…
梛樹が飛ぶと同時にブレスが放たれ遅れて雪の抜刀が開始。
「かっこよく決めたらぁあちゃちゃちゃ!!!」
「あっはっは!」
…あのアホはいいわそれよりも追撃。
両腕を伸ばしこの子を一目してから手を射出台として組んで回転開始!
1、2、345…うおお楽しくなってきたぁ!!!
「失礼しゃす」
「発射〜」
上空に飛んでから踏み込んできた瞬間にエネルギーの移行が行われて一瞬のスローが挟まった後相棒が打ち込まれた。
「危な!?」
「もらったぁ!!!」
そういや頭に乗って戦っていた梛木を忘れていたわ。
頭蓋骨に鋭く拳が…あの子は砕けないわよね?
「修行の成果を見してやる!」
あそこから八割がた放出させたとはいえベクトル変換決まる!?
殴り飛ばして自由落下していた相棒を回収して無無と雪が挟んでいるわね。
「「次は決めてやるよ!!!」」
あ、よっぽど気に入らなかったのね…
おかしいわね質量が何倍もあるドラゴンが怯えているように見えるわ。
ついにドラゴンが咆哮をしながらでかい氷塊を作ったわよ!?
直径は6メートル程の特大と言って差し支えない物質が歩き近づく雪を標的に狙っている。
ん?なんか既視感が…あ。
「てめぇの氷なんか隕石以下なんだよ!!!」
叫んだ瞬間に飛ばされた氷の塊は雪の事前配置していた拳に当たり瞬く間にぶっ壊された。
「後ろもいるぞ」
膝の力を一気に抜いて身体が浮く。
そこから位置エネルギーと落下時に発生する運動エネルギーが加算されて初手にぶっ刺した箇所にまた拳を入れる。
寸分たがわない箇所に入れたわね見事な精度よ。
途端によろけ始めて雪のほうに倒れこんでいったわ、これは終わりね。
「ショータイムよ」
す、すごいわね…
あれほどのドラゴンの皮膚を貫いて心臓まできっちりついたようだ。
無無の拳があまり効果的でなかったことから弾力の強い、言い換えるなら強固な繊維物質だと予想できる。
欲望が入っていたとはいえ、流石は昔から感覚に頼りすぎず戦ってきただけのことはある。
「お疲れ様ね。思ったよりも時間がかかっていたけれど楽しそうだったわ」
「そりゃこんだけやりたい放題暴れられれば楽しいだろ。それにこいつ全然魔法使ってこなかったし」
「この世界には魔法はないのだけれどもね。まあいいわとりあえず帰りましょうか」
出現した扉を開けてダンジョンの入り口にワープ…なんか適応し始めてて怖いわ…
「自宅に返してもいいかと思ったんだけどちょっと世無離と話がしたいから今日のところは世無離のほうに泊まりましょうか」
「初日から魔王城に泊まるとかいかれてるよなJk」
「それが常識に代わるわよ」
帰りはゆったりと歩いて帰路へと着いた。
目まぐるしく景色が変わるというのに焦点は会い続ける気持ちの悪さ。
やがて平常となりて自らが異常となるだろう。




