倫理観の飛んだ教官がいる。パワハラがそよ風どころか無風になるレベルだわ
「クロスカウンター!!!」
…ふっ…紙一重だったな。
背後で倒れながら血を噴き出す魔物をよそに映画のワンシーンの様に決める…ふう、きもちぃ!
「流石の刀さばきね。やっぱり相棒と刀はいい絵になるわ」
とはいっても重過ぎるんだよなぁ。
現在は時間稼ぎとして私と相棒、そして雪が刀の鍛錬を積んでいる。
力のある雪はともかくとして私たちはきついんだよ正直舐めてた。
振り始めて三時間程、もうバテました勘弁してくれ。
「せっかくだから見に来たよ。アドバイスに来たといった方がいいかもだけど」
「もうしんどいわ。私と相棒は力ないもの」
「確かに雪のほうが筋力を値で表すと大きいよね。でも着目点はそこじゃないよ」
刀振るのに重要なパラメーターが他にあるというわけか?技量は変わらないとしたら…わからん!
「そうだと思ったよ。だからアドバイスしに来たんだ」
また心を読みやがって…てか作者の心読みは条件指定発動できないよなぁ…まさかピンポイントで思考タイミングを読んでいるのか!?
「面倒な話増やさないでね。話を最初のに戻そうか。刀を振るパラメーター、そこには力、技術等々いろいろあるわけだけどとりわけ重要となるのが筋力伝達効率だよ。既に桜花乱れ咲きを擬似的に習得している3人なら分かるんじゃないかな。でも読者に分かりやすいように分解していこう。まずは筋力との違いについてだね。筋力は全員の認識どおりで問題ないよ。私はその力を母数として取り扱っているよ。そして伝達効率だね。伝達効率は母数にどれほどの値を掛けられるかというものだよ。同じ母数でスタートしても人によって値が変わるもの。そしてこれを分かりやすくするために次の話に入ろうか。伝達効率は掛け値と言ったけどじゃあ基準とすべき1の値はどこに配置されているのか。これは今の禍雪たちが何も考えずに殴った値だね。これに関しては全力だろうと手抜きだろうと変わらないよ。そしたら何故この値が変化しないのかについて話そうか。筋肉というのは常に力がかかり続けている。今話をしているこの瞬間も私たちには負荷がかかる。これは重力が関係している話ではなく肉体の仕組みの話かな。科学の分野は乏しいから詳しいことはわからないけど私の独自解釈としては次に発生する動作を円滑化させる予備動作だと思っている。例を挙げるなら、脱力状態から急に肉体をねじって回転蹴りを入れる。その際行動が遅くなるのは複数方向に向けることができる柔軟的な身体状況が整っておらず直線的、単調的な処理しか受け付けない時間があるから。これで分かりやすくなったかな。私たちの肉体は普段から一定数の負荷を肉体にかけ続けている。つまり筋繊維か細胞、どちらでもいいけど許容筋力量が減っているわけだ。ここで最初に話した桜花乱れ咲きが出てくる。あの技は全身を脱力して体内から無駄な筋肉負荷を取り除き伝達効率の急増を行って放つ技。まあ私が今回言いたいこととしてはこの許容筋力量の値を増やすことに専念したほうがいいってこと。さっきは理解しやすいために適当に数値化させたけど詳しくするなら禍雪たちは恐らく15%程度だろう。こんな偉そうなこと言っている私も85%が限界値かな。一緒に100%目指そうね」
わかりやすくはあったが解説長すぎじゃね?
「つまり、筋力そのものが少なくても効率化させればあほみたいな瞬間出力を出すことが可能ということね」
「そういう感じになるかな。実際私は全然筋力ないし」
そういって細腕を見せつけてきた、確かにそれで大岩砕いたりなんだりできるのか…
こりゃ当分は脱力の鍛錬積まないと詰みになりそうだ。
そんなところに遊んでいた梛木と無無が帰ってきた。
「ようやく決まりました!あんなに早く麻雀ソリティアクリアしたのは初です!!!」
「昼頃だから戻ってきたぞ。あまりにもこいつの動きが異次元過ぎて面白かったわ」
容易に一瞬も止まらずにそろえ続ける珍妙な図が浮かんでくる。
そういやもう昼か、久々に料理人に作ってもらってもいいしどうしようか。
「そしたら私が作るよ。後昼飯を食べ終えたら魔王城に戻ろうか」
「わかったわ。じゃあ昼飯頼むわね」
「はいよ」
そういって雪梛はなぜか亜空間を開いていってしまった。
どこ行ったんだこれで出前を取ったよとか言われたらさすがに笑うけど。
まあ休憩なら何でもいいか相棒とゆったり休むとしよう。
「なんかここ一年半ぐらいでいろいろなことが起こったわね」
「世界が崩壊したり作者が来たり作者になったり…どうなってんだ?」
声に出すと異様な光景だということが分かりやすいな。
そんな話を展開しようと思ったらもう帰ってきたぞ!?
「お待たせ。これから料理するから食べる準備だけしといて」
「何でしょうかその肉は。一見見たことがないのものなのですが」
「ああこれね。これは暇つぶしでドラゴン大量討伐してる友達がいたからもらってきた」
「友達の暇つぶしレベルが高すぎる」
「そういやステータス性のある世界もあったね」
「すごいRPG感が半端ないわね…」
その世界だと雪梛はどういう判定になるのか結構気になるな。
キッチンに消えていった雪梛を合図にテーブル拭いたり席についたりした、というか雪梛が綺麗にしすぎて拭く必要がなかった。
「お待たせ。同じ料理一辺倒じゃつまらないからチャーハンも作ったよ」
「どこからコメが湧いたのかしら?生産地を書かないと訴えられるわよ」
「産地:亜空間でいいかな」
「すっごい怪しいコメだな。まあいいわ頂きまーす」
「ずるいわよ無無!私も食いたい頂きます!」
「お前らは落ち着いて飯も食えないのか…」
「いや私は落ち着いてんだろ」
「だったらありえんぐらいほっぺた膨らますなどうやってしゃべってんだよ…」
「頂くわ」
「私も」
もうつっこむのもあほくさいわ…
「頂きます…うまい!これを作ったシェフを呼んでくれ」
「ここに」
「はせ参じるシェフは怖いぞ?」
なんか気づいたら右隣で片膝ついてる、どういう芸当だよこれに関しては…
「まあy…いいかな」
「ナチュラルに地面潜ってイスにワープするのやめなさい?surpriseが過ぎるわよ!」
何が起きたんだ今雪梛が急に沈んだと思ったら椅子から生えてきたぞ???
全員が困惑しながらもデカいフライパンに盛られたチャーハンはどんどん無くなっていく。
「食べながら話させてもらうけど魔王城に着いたらしばらくば脱力の鍛錬だね。当分は欲望解放できないけどある程度私たちと戦えるように仕上げるからそれまで待ちでよろ」
「ああ、個性が…アイデンティティの喪失の危機だ」
「理性が飛ばなければ何でもいいよ」
「倫理観の飛んだ教官がいる。パワハラがそよ風どころか無風になるレベルだわ」
私と相棒、梛木は問題ないな、それならばよかろうなのだ。
そうして程なくして完食となり手分けして洗い物を終わらせ出発となった。
ゲートに乗り込み操作を行う、この行動は恐らくこれがラストだろう。
変わり果てた複数視点の世界、変色が始まった空間。
足を踏み出した途端に沈む度合いや負荷の割合が変化している体感を感じながら元いた場所を塗りつぶす。
自然物に対して感じた違和感は何だったのだろうか…




