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殺したいほど愛してる  作者: 雪梛


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8/17

終焉の時を迎える時、私たちはどの状態で何を思っているだろうね

ゲートから出ると久しぶりの大都市の光景が目前に広がった。


私たちの拠点がある第一支部なんかとは全く違い高層の建物や立派な一軒家などなど来ただけで発展具合がわかるものとなっていた。


もうほとんど沈みかけている夕焼けが建物たちを赤く照らして美しい街並みをより一層迫力のあるものへと変容させた。


街ゆく人々は清潔な服を身に纏っておりここが裕福層から中間程度の層が暮らしている場所である。



「どうだ?半年前とは結構変わったでしょ?」


「そうね。正直想像以上に発展しているし最近はスラム街も減らしていけるように調整しているのでしょう?よくやるわね」


「そりゃそうだ。王が諦めるというのは民の絶望に繋がるからな。いずれ格差をなくして地上に降りず天空のみで暮らせるようなものにしていたいものだ」



随分と熱心なものだ。


まあ私も守りたいもの、好きなものはとことんやるタイプなのでわからんでもない感覚なのだけれどもね。


街のことについて話しを聞いているといつのまにか着いたようだ。



「ようやく帰宅だ。ゆっくり話そうね」



そう言って王は鍵を開けた。


ちなみに王の住処とは言っているがその辺の家の中でも小さめの建物となっている。


権威なんか示さなくても真剣にやれば着いてきてくれるというのが王の考え方のようだ。


中に入って手を洗い椅子に座ろうと思ったがよく考えたら今の私は血塗れだ。



「シャワー借りてもいいかしら?」


「もちろん。場所はわかるでしょ」


「ええ、ありがとう」



すでに何度も来ているため私はよくそうに向かい始めた。


扉を開けて脱衣所に入り服を脱ごうとした瞬間に何かが光を反射した。


あのやろうと思いながらその物体を確認すると小型のカメラが設置されていた。


私を盗撮しようとはいい度胸じゃない。


電源を落とそうとしたがどうやらプラグ式とかいう訳わからないカメラを使用しているようで電源が落とせない。


カメラの向きを変えようとしてもピッタリ設置されているため動かすこともできないし何この用意周到さ…


仕方ないので後で一発切っておこう。


そう思って気にせず脱ぎ始めた。


綺麗だった服が付着した血が酸化したことによりドス黒いカラーリングへと変化していた。


しかし心配ご無用こんな私たちのために都市の技術班が血の汚れを落とせる洗剤を作ったのだ。


しかも衣類のみではなく髪や肌にも使用できる万能仕様。


浴室に服を持って行き粉をかけてお湯で洗浄を開始した。


面白いぐらい簡単に落ちていきなぜか鮮血のように赤い色に変化しながら流れていく。


これは多分あの子が要求したのだろう。


そんな感じで返り血の処理をした。






「何で禍雪あんなに返り血浴びているの?いつも避けて極力当たらないようにするじゃん」


「なんかわからないけど勝手に解剖も始めたし内臓を丁寧に摘出してほんのちょっと笑っていたから多分私の世界にきはじめたんだよ」



あの時の相棒の様子は普段の仕事をクールにこなすスタイルではなくまるで趣味を楽しむかのようなものを感じ取った。


おそらく自然体の行動を使用しはじめたことにより流血や内臓、肉を切る感触、目玉なんかを潰す感覚を欲していたのか楽しんでいたのだろう。


基本的に仕事中相棒は笑わない。


私の冗談や会話をしているときぐらいしか笑わず戦闘中に笑っているのはおそらく今回が初であろう。


戦闘中に笑うというのは常人ではあり得ない。


命のやり取りをしている中笑えるのは狂人程度であろう。


私たちは戦闘を命のやり取りと感じるのではなく楽しいもの、気分を高めるものと認識しているのだ。



「流血至高者の世界か…おそらくだが文字通り世界が変わったんだろうな」


「最近は基礎鍛錬を積んでたんだよ相棒。そして最後魔物の心臓を貫く一撃の動きは練度は低くとも間違いなく私の動きだった」



相手に認識されることなく的確に無意識的に急所、損傷がでかい場所を貫くあの動き。


私はこの動きを自然体と呼んでいる。



「自然体ってやつだっけ?でもあれは流血至高者か戦闘を心から楽しむやつにしか習得できない動きって言ってたでしょ?それを禍雪が習得したってこと?」



脱衣所で相棒が困惑している感じを感じ取ったが今は一旦置いておいた。



「そうでないと説明がつかないよ。もしかしたら私の知らない新しい何かがあるのかもだけどね」



そう言って提供された飲み物を一口のんだ。


口の中で発生した温度差が私の思考を冷静にまとめた。



「流石にないだろうけど人間の一番重い感情…愛ってことは?」



ちょっと場の空気を変えようと冗談のつもりで言った。


そしたら前のこいつはなんか急に納得した感を出しながら頷いてきたんだけどどういうこと?



「確かにそれは盲点だったよ。だって二人めちゃめちゃ愛し合ってんじゃん」



急にそんなこと言われてびっくりして思わず私は頭を机にぶつけてしまった。



「いやどういう経緯からその結論に至ったわけ!?そりゃ確かに私は相棒のこと大好きすぎてもうやばい感があるけど相棒は絶対そんなことないでしょ!?第一私なんかのどこにそんな魅力があるわけよこんな流血至高者で血に塗れながら笑っているような女だよ!?」



めちゃめちゃ顔を真っ赤にしながら高速で反論をした。



「何言ってんだよおまえ…いやあんまり踏み込むのはよくないな。自分の道は自分で見つけてね」


「ちょっと待て本当に意味が理解できないんだけどこんなにわからない事象が発生したのは自然体の研究以来だよ」



その時ちょうどタイミングがいいのか悪いのか相棒がシャワーから出てきて戻ってきたようだ。


あれなんか笑いながらキレてんだけどでも怒りの矛先は私じゃないな。



「あなたは行動で示すタイプと言っていたわよね」



この瞬間に愚かなる王は自分がした所業を理解したようだ。



「もちろんだ。たとえこの身が切り刻まれようと…私は自分の発言を取り消したりしない!」


「いい度胸じゃない。とりあえず…この場で体液ぶちまけろやぁ!」



何があったのかわからないが相棒がブチギレてホルスターからナイフを取り出しまさかの本当に王の右太ももに的確に投げた。


無意識的に自然体が発動していたのか当然避けられるわけがなく白い肌が黒きナイフに切られて骨まで達した。



「ぐが…はっ…くだらなかったが…楽しい人生だったぜ…」



そう言って親指を立ててがっくりと倒れた。


相棒はスッとしたらしくいつものかっこいい無表情に戻ってとなりに座ってきた。


ちょっと待ってさっきこのアホが変なこと言ってきたからまた意識しちゃうんだけど本当にどうしてくれるんだよ!


私も衝動的にナイフを投げたくなったが今やると流石にやばいのでやめておこう。


てか床にどんどん血が染み込んでいるけど大丈夫かこいつ急に死んだりしないよな?


顔が赤くならないように意識しながら飲み物を飲んでいると五分ほどしてようやく起き上がってきたようだ。



「ちょっとひどすぎない?これでも王なんだから殺しちゃまずいとか思うでしょ?」



全く無傷かのような面して椅子に座り直して正面にきた。



「あら、王を殺したからって何かあるのかしら?その辺の中級程度で苦戦する騎士団が怖いと思うかしら?」


「そういえばそうだったわ。なんなら二人で地上で暮らしてそうな姿が容易に目に映るわ」



はっはっはと笑いながら飲み物を飲んでいるようだ。


傷口を見るとマジでどうやったのか知らないがいつのまにか止血から何まで処理が終わっていて技量が上がっているのを感じた。



「まあカメラの件は許すわ。それよりも今度私自然体の実用性の確認のために次の依頼で戦闘しようと思っているのだけれどもくるかしら?」


「ほうほう。現状最強の護衛が二人で地上。素晴らしい提案だちょっと確認をとってくるね」



どうやら相棒自身も自然体の動きをしていると認識しているようだ。


もはや先ほどのアホの冗談はどうでも良くなり私は真剣に考察を開始した。


元々相棒には不思議な場面が多くあってダメージをもらったり何かの拍子に身体能力が急上昇することがある。


これは大抵ニパターンあり一つ目が技術の急上昇、もう一つが感情の昂り。


発動頻度からしておそらく後者であることは容易に理解できるのだがその内容がなんなのかがわからないのだ。


私の場合は流血至高によるものであるが相棒は自然体を使用するだいぶ前から使っていたためこの線は消える。



「雪眼、いくわよ」


「!?」



どうやら思ったよりも考えることに集中しすぎていたようだって言っている場合じゃない今なんていった私の名前を呼んでくれた!?


マジかよくそうボイスレコーダーを準備しておくべきであっためちゃめちゃ珍しいからね相棒が私の名前を呼んでくれるとかもう最高すぎでしょまれにしかないからいいってものでもあるけどでも私的には名前で呼んでもらいたいって気持ちもあってあーーー!



禍雪はちょっと困惑気味に、王は面白そうにこちらを見ているがやばい思考がまとまらないしどうなってんだよなんか言葉を出せ移動するんだから立ち上がれ私ーーー。



「ご、ごめんちょっと考え事してただけ」



よしとりあえず立ち上がって外の風をもらいに行こうちょうど拠点に帰るタイミングだろうからねそうしよう。


上がった体温を感じながら立ち上がって歩き出した瞬間になんでかわからないが転んでしまった。


とりあえず手をついてエネルギー移動をしてそのまま立ちあがろうとしたその瞬間に急に背中が支えられた。



「だ、大丈夫かしら?」



流石相棒支えてくれてありがとうと言いたいんだがちょっと待てなんでそんなに顔が近いんだ!?私が意識しすぎなだけなのそうなのかそなのかーー!?



「だ、大丈夫…です」



めちゃめちゃ声ちっちゃくなっちゃったよなんでここ最近はこういうイベントが多いんだー!


いまもし私の目玉にカメラが内蔵されていたら連写をし続けているあろう。


写真越しでも最高なのに現実でこんな状況下になったらやばいもうやばすぎてやばい!


拒絶的反応に見えないように細心の注意を払って立ち上がり歩き始めた。


もはやぷしゅーという擬音が聞こえそうなほど顔を真っ赤にしながら足早に外に出た。


既に日は完全に落ちており街灯によって照らされながら肌寒いぐらいの冷風を浴びた。


上がった体温と感情を落ち着けるのにちょうどよく深呼吸をして即座に感情の整理をすることができた。


ちょうど背後から二人出てきて相棒は心配そうにこちらを見ていた。



「ごめんごめん。ちょっとテンパっちゃった。じゃあ帰ろうか」


「夜遅いから泊まっていってもいいんだよ?」



確かに普通の人ならそうした方がいいが私たちにとってここは仕事を依頼しまくってくる休憩のない場所だ。



「拠点でゆっくりしするからいいよ。それと依頼を三日間程度止めるよう指示しておいて」


「わかった。今回は大物討伐助かった。ゆっくり休んでくれ。あと次の依頼の時は私を必ず呼んでよね」



そうして別れの挨拶をしたがゲートまで一緒に行動して最後のひとときを楽しんだ。


今夜も快晴で星がよく見え欠けている三日月が三人を見下ろしていた。


ゲートに近づくにつれて街灯が少なくなり暗き空間が三人を包み始めている。


闇の中でゆらめく黒き髪の前には澄んだ水色の瞳とさらに暗き瞳が正面を捉えている。


その下はどちらもほんのりと赤みががっていて横目にそれを見た少女はニコニコ…ニヤニヤしながらおもしろそうに笑っていた。



「三日月ね。あれはいま新月に向かっているのかしら?」


「逆で満月に向かっているよ。満たされない物質が徐々に満たされていく。そんな始まりの夜と思うと何だか楽しみだと感じないかい?」



芝居がかった口調で私がいうと相棒がふふっと笑って続けてくれた。



「始まりから満月に行き着いた時、終わりが始まると思っても楽しみと言えるかしら?」



もはや答えを確信した顔でこちらに問いかけてくれた。



「もちろんだよ。終焉の時を迎える時、私たちはどの状態で何を思っているだろうね」



愛している。


これだけ思えればそれで十分だ。


ちょうどゲートに着いたのでここで王とは一旦お別れだ。



「本当に気をつけてな。私は心配性なんだからね」


「わかってるよ。じゃあ連絡楽しみにしててね」



ゲートの操作を行い私たちは地上に降り始めた。


微細な浮遊感を感じながらナイフの確認をしてあかりのない暗闇の中へと吸い込まれていった。

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