ようこそこちら側へ
ここで最近の鍛錬の成果を試すとするわ。
そう思って今回は私が主軸で行くと宣言をした。
魔物と同じようにゆったりと歩いていき徐々に距離を詰めていく。
少しばかり風が吹き荒れて死体の腐敗臭や血の匂いがほんのり香り戦場の雰囲気が演出された。
間合いが一定になった瞬間に行動を開始した。
いつもの力で速度を出す接近方法ではなく先ほどの移動で使用した慣性的な移動をして殺気を消しながらまるで素振りをするかのようにナイフを迫りくるであろう右腕の軌道上に振っておく。
魔物は力任せな速度出しを行っており急に相手への認識が消えたが気にせず既に予備動作が終了していた腕を振り始めた。
予想通りきた爪によるひっかきの攻撃はナイフの刃と当たり赤い火花が散った。
急な何かとの衝突に魔物は驚いてリアクションタイムが発生した。
もちろんその隙が発生することは理解していたので先ほどの衝突の反動を利用して回転運動を発生させながら右太ももにナイフを運んだ。
少しナイフが入ったところで反射が発生したのか魔物はとっさに身を引いてダメージを抑えた。
「それなりに強いと楽しいわね」
今度は脱力をして腕をだらんと下げて軸を中心として行動を開始した。
ほんの少しだけジャンプをして着地の足を右足にセッティングして着地と同時に高密度な力を放出。
放出された力により飛んでいくかのように魔物に接近しながら左足を利用して回転運動を発生させて遠心力を追加した。
単なる同速の攻撃であれば難なく避けられただろうが魔物が気づいた瞬間には既に私は目前でナイフを振るっていた。
ナイフの刃が肩に侵食していき肉を切る時の独特な感触を味わいながら進めていった。
血が吹き出し始め肉のピンク色が露出したところでナイフの侵食が止まった。
どうやら筋肉に力を入れて無理やり拘束したらしい。
反撃が来ると判断したため即座にナイフを手放し回避は間に合わないため左から迫る後ろ足の攻撃を脱力してからもらった。
肉体がゴムボールかのようにへこんで弾丸のように吹っ飛ばされた。
付近に生えていた木を二本ほどへし折ってエネルギーが消費されようやく地面についたようだ。
口に上がってきた血を吐き捨てて身体の確認をしたところ損傷は打撲程度のものらしい。
骨が折れていないのでナイフをホルスターから取り出して先ほどまでよりも素早い速度で接近を開始した。
この程度で苦戦していてはあの子の代わりは務まらない。
脳内が相棒の存在に支配されると同時に急激に身体能力が上がった。
殺気を消して相手の認識から消える。
感じられることはあっても個としての認識をさせない状態。
今ならいけると謎の確信があったため胸元に突きをまるでただ前にナイフを出したかのような動作で発生させた。
肩を切った時とは比べ物にならない速度で内部に侵食していき肉、血管、臓器へと達した。
心臓にちょうど当たり心拍数が上がっていたのか血液がものすごい勢いで吹き出してきた。
返り血を気にせずナイフを引き抜き即座に横薙ぎをした。
一文字を描くかのように綺麗に切り裂いて臓器が見えてきたようだ。
私らしくないがこの瞬間を楽しいと感じているようだ。
即座にナイフを交換して生命力が著しく低下している魔物の目玉に突き刺した。
入れる時の感触が手に残こりさらに欲しているかのようにどんどん身体が自然体で行動をしていく。
目を貫き耳を切り落とし指を切り落とし腕を切り落とす。
もう動けないほど瀕死になった魔物の腹にナイフを入れて解剖を開始した。
腹の肉を切り離し見えてきた臓器を丁寧に切り離していく。
夕焼けに照らされながら血で赤く染まっているこれらがどこか美しくそして何かを表現しているかのように感じた。
解剖を完了して背後を振り向くと相棒が満面の笑みで親指を立てた。
「最高だね。ようこそこちら側へ」
「これでようやく私もわかったわ」
自然体の動きをするには意識的行動をしてはならなかったようだ。
頭が勝手にどこを攻撃すべきか、どのように切るべきかを判断して動かしてくれる。
これは確かに流血至高者が高みに登れるわけだ。
珍しく返り血や体液で塗れてしまった自分を見て戦いというものの楽しさが理解できてしまった。
まだギリギリ人として生きていたのだがその最後のピースを破壊した音が聞こえた。
まじで最高だったなーもしかしてこれ流血至高に目覚めた感じ?
先ほどの戦闘方法は自分と類似しているものを感じた。
欲望のためだけに必要以上な解剖をしたり避けずに返り血を浴びたりなどなど。
まあめちゃめちゃかっこいいし真っ赤な姿も可愛かったからいいか。
可愛くて強くてかっこいい、うん最高だなこれで好きにならない人とかいないでしょ。
とりあえず討伐を報告するために先ほど情報をくれた兄貴のとこに行こう。
そうしてきた道を戻っていると何でか知らないが道中にあいつがいた。
「お、いたいたー。相棒が真っ赤になっててめちゃめちゃ可愛いじゃん」
流石こいつわかってんねーそうよいつもの黒ロングが赤という明るい差し色によっていつものクールな容姿が明るくお茶目感が出ているが漆黒の瞳がそんな容姿をカッコよくまとめてってそうじゃなくて何で大都市の王がここにいるんだよ。
「流石の好奇心ね。でも危なくないのかしら大都市の超重要人物がここにいて」
「ふっふっふ。心配ご無用私もそこそこ戦えるよ」
そう言って拳を突き出してきた。
現在大都市は経済格差が激しく中心部から遠ざかるほど貧困率が増していく。
特に端っこの方ではスラム街が大量にできており通るだけだけでも騎士が一人ついた方がいいと言われるぐらいだ。
そんなスラム街すらも統率をとっているのがこの目の前にいる私たちよりもちょっと背が高く知的なオーラを出しているやつだ。
知的なオーラといったものの当の本人は好奇心旺盛でもはや自ら死地に赴くため行動と言動からは知的さを一切感じない。
「とりあえず討伐ありがとう。これで一旦は騎士団も落ち着いてくれるだろう」
「落ち着かない原因は王が魔物と会いたがっているからとか側から聞く分には面白いよね」
「こんなところで立ち話もなんだから私の家まで案内しよう。私がついている方が色々と都合がいいだろう?」
大都市の方に単独で行けば仕事の依頼が来まくって困ってしまう。
まあ国王がいればそんな輩も来なくなるであろう。
もちろん了承して私たちはゲートに向かい始めた。
そういえば相棒が肉解体したからあれ売れるなぁ。
「私の相棒があの肉解体したんだけど買い取ってくれない?」
「なるほどな。わかった、手配しておこうか」
そういうと何やらデバイスを取り出して文字を打ち込み始めた。
連絡がついたらしくいつも通り処理しておくとのことであった。
よっしゃあ明日は肉パーティだ。
仕留めた肉を処理してから1割ほどを向こうに送ってくれる感じなので明日はまた肉がいっぱい食えるようだ。
血濡れの相棒をチラチラと気づかれないように見ながら歩いているとどうやらもうゲートについたようだ。
シャワー入ったら血が落ちちゃうけどまあいつもの相棒も最高だからいいか。
そんなことを考えながらゲートが上空につくのを待った。




