なぜ、禍雪さんはそこで止まっているのでしょうか
どうやら思ったよりも欲望の度合いが低いのか動きに違和感があるわねまあいいわ。
いつの間にか回っていた背後にナイフを進めながら軽く脱力をしておく。
何故かこちらに向いていたのか梛木が刃を合わせてきたわね、まあ概ね予想通りよ。
脱力していたことによってレスポンスが速まり即座に反作用を吸収した回転切りを胸元に発生させた。
あら?回避されるなんてものすごく久しぶりね…
珍しく避けられたことに微量の驚愕と喜びを感じながら視界が急に地面と近づく。
どうやら基礎体が脳天に来ていた回転蹴りを避けてくれたようね私見えていないのに。
姿勢の変更によって発生した体重移動を利用して前方に移動して身体を回転させながら投げナイフを一発行う。
基礎体が見えるのは流石に予想外ね…考察している余裕はないからさっさと決めるわよ。
刃を合わせて行動の癖とパターン処理は終了したから行くとしようかしら。
この前雪梛にボコされたのが癪で基礎体を考察した真価を見せるとき。
肉体を形成する波長と空間形成物の波長同一化を無意識的ではなく意識的に行う。
呼吸をする動作を気流の作成の起点として基盤を整え前方に軸をほんの少し傾ける。
その瞬間にものすごい勢いで視界が変化し始めたがそこは無意識的処理に任せて脳のショートを回避よ。
すれ違いざまに放った斬撃は刃合わせはされたがいい感触ねダメージ入れたわよ。
慣性を無視するかのように急停止をした直後即座に振り返りながら横方向に黒を進める。
ああ、いいわ!肉体制御がどんどんやりやすくなってきたわ!!!
微弱なダメージを与えていることによる欲望の増大化が潤滑剤のように作用して盤面の破壊を助長している。
しかし受けてばかりなわけがないわよね魔王がそんなあまちゃんなら無無が負けるわけないもの。
その想定を受け取ったかのように目の前から急に消えて気配がなくなったわ…どんだけエスパーいるのよ…
そう思った瞬間に私の身体が反応した。
背後からの突然なダメージに驚きはしたものの即座に基礎体が離脱をしてくれたようだ…おかしくないかしら?
その瞬間にまるで見えない次元から線が引かれたかのような錯覚に陥った。
何かしら…今見えた線…いや境界?
しかしそれ以上の思考を刻み進むものが許さなかった。
気がついた時には既に片足がやられていたようね。
面倒だわ、状況悪化で決めもできなくなってきたわ…
「なぜ、禍雪さんはそこで止まっているのでしょうか」
突然梛木が語りかけてきた。
止まっている…ああ、なんとなく理解したわ。
「止まる、とはまた面白い…いや、的確な判断の元で考えるのならばその表現が正しいわね」
発動が終わり普段のノーマルに戻り私は言葉を続ける
「あなたには見えているのでしょう、変わり続ける色素が欠落されていく世界が。この場合境界があると言ってもいいかしら。負けて、愛して、執筆を始めて、おそらくこれらが混ざり合わなければ私という時間の空間はきり取られなかったでしょうね」
「おそらく、一人の方々に会ったのでしょうね」
一人の方々?単なる矛盾な訳がないわよね…
「しかし考えるのは後ほどにしたほうがいいですよ」
その時私には先程の線が引かれていた。
「終わらない人生というものは自己という不変的なものすら同調させてしまうものですから」
それを聞いて一つの答えが出たとき私の身体はすでに傾いていた。




