いや逆にオーバーフローをおこしてもう何も怖くないかもしれないわ
「よっしゃああ完成だぁ!」
エンジニアが叫んでいるからようやく造り終わったようだね。
なんかこんなゲート使ってられるかとか言ってぶっ壊して新設しやがった。
ちなみに地上側は雪梛におろしてもらったから作業ができたらしい。
あとあの雪梛も降りすぎたようで足が痛むとか言っていた。
もうバッキバキに折れてんじゃないのそれ…
「まあいろんなことがあったがとりあえず完成だな。ちなみに私はさっき電話で済ませてきた」
「なら最初からここでやってくれ…」
「いや頭から抜け落ちていた」
ていうかこのゲート性能が格段に上がった気がするんだけど気のせいかな?
「どれぐらいスペックアップしたのかしら?」
「稼働速度五倍、容量三倍、省電力性能七割増、てかもはや別もんだ」
もうなんでもいいや。
「では準備もできたしいくとしようか。ここの人たちなら挨拶はいらないね」
「そりゃそうよ。死ぬ確率は一番低いもの」
そういうわけで全員で新設ゲートに入って操作を開始した。
「まあ、楽しんで来な」
「そっちは頼んだからね」
挨拶を交わしてゲートの扉がしまった。
今まで鳴っていた駆動音が消え去って浮遊感が完全になくなっていた。
内装を確認すると出入り口付近に椅子が複数設置してありなんか給水ポイントまであるようだ。
そして気づいたらもう地上に着いており扉が開き始まっていた。
「ここだけスペック高すぎだろ…」
「なんか快適すぎてビビるわね」
「そりゃあ私も建設に協力したからね。まあそれは置いておいてゆったり行こうか」
なんか久しぶりに地上に降りてきた気がするなぁ。
この灰色の世界が私の荒んだ部分を表しているようでよきよき。
「そういえばなんで電話で話が済んだのかしら?重要な話なんじゃないのかしら?」
「ああ、それなら簡単な話だ。既に代理人に政権を委任してあるからこうして簡単に話が済むというわけだ。さっきも電話したらあ、はいそうですかで終わったしな」
「代理人がかわいそうな気がしなくもないけどまあいいか」
さて時間はあるし王もいるから最悪第一支部以外全滅しても問題ないな。
技術部はちょっと惜しい気がするが最悪魔王とエンジニアがいればどうとでもなるしまあいいか。
そんなことを考えながら全く魔物の気配がない地上を歩いていく。
そうだった、雪梛がいるから魔物はマジで一匹たりとも近寄ってこないんだったわ…
あまりにも安全すぎる地上に大小の違和感を感じながらもそれを無視するかのように雪梛がぐんぐん進んでいく。
「そういえば雪梛の家ってどこにあるんだ?いままで地上を調査しても見つからなかったんだが」
「私の家だったら前方30km程度の地点にあるよ。調査不足なんじゃないの?」
「それなら納得だな。だってそっち大型以上の生息域だから調査できないんだよ…」
「確かに私たちですら好んで入ろうと思わないような場所だものね」
「あらそうなのかしら?私はそこ好きよ?何ならちょっと前まで暮らしてたし」
「どおりで見つからないわけだわ…」
こいつあんなやばい場所で一年以上暮らしていたのかよ…
ちなみに変異個体もエンカウント数的に何回か相対しているだろうが何で生きているのだろうか。
まあ、たまたま硬化個体とぶつからなかったってことかなぁ。
「そういえば隕石で咲かせた桜という花があったじゃない。あれ以外にも何かあるのかしら?」
「もちろんあるよ。そうはいっても紅葉というものしか育ててないけどね。うちの室内で調整しながら育てているからついたら見せようか」
「二種類も木を室内で育てている時点でcrzeyよ…」
「あれ?花って言ったのにどうして木だってわかったの?」
ん?確かにそうだな。
その瞬間に全員の視線が雪のほうに向いた。
当の雪は一瞬だけ硬直したが何事もないかのように満面の笑みを向けてきた。
いや、相棒の笑顔でもないのにそんなんでごまかせるかよ…
「おいなんか言え」
「…」
「サディスト発動するわよ?」
「これ以上言及しないでくださいお願いします…」
あ、それには反応するのね。
そんな会話をしていると太陽が日暮れを知らせてきた。
今日は曇っているので夕焼けを見ることはできないが急速にあたりが暗くなっていき日の入りを表現してきた。
灰色から黒へと変容していく世界がまるでこれからの空中都市を表現しているように見えてしまった。
「もう日暮れか、私暗い場所だとなんも見えんが大丈夫か?」
「まじで?」
「まじで」
こいつアクティブだから夜目効くと思っていたがだめなのかよ…
そういえば毎回来るときは日中だったなぁ、なるほどリスク的にそういうことか。
「では私が背負っていくとしようか」
「ああ、いたいけな少女に運んでもらうのね。王が聞いて呆れるわ」
「やかましいお前らと違って能力ないんだわ。申し訳ないが頼む」
「ちくしょう!私も雪梛と密着したい!!!肌と肌を接触させて濃厚接触からの同じ部屋に隔離されたい!!!」
「其方は何があっても担がないから安心して」
「拒絶反応を受けようとも私はあきらめないわ!!!」
「耐久性はメンタルにも適用されているのね…」
こいつも大概愛情がゆがんでいる気がするのは気のせいだろうか。
王が雪梛の背中に乗りその後ろで雪が悔しそうに、うらやましそうに見つめておりその雪を私と相棒が軽く軽蔑的な目で見つめる。
流石にあのレベルを自分の依存的対象以外にやられたら引くわ…
そんなことを思っていると相棒がいつの間にか背後に回っていたらしく抱き着いてきた。
肌の露出している部分が相棒と触れ合うことによって温まっていき心地よさが全身を満たした。
「ちょっと待ちなさいこれじゃあ私一人ぼっちじゃない!」
「一人ぼっちはさみしいもんな…いいよ、空間的にだけ一緒にいてやるよ…」
「それじゃあ現状と変わらないじゃない!いや逆にオーバーフローをおこしてもう何も怖くないかもしれないわってあれ?」
「スースー」
王が雪梛の背中で寝ているようだ。
珍しいなまあたぶん忙しすぎて急な休みで限界を迎えたんだろうなぁ。
「じゃあゆったり行こうか。魔物が来ても問題ないでしょ?」
「その心配はしていないわ。というか来ても瞬殺じゃない」
心地よさそうに寝ている王がまるで一時の休息を感じさせたがそれがいったい何に対してなのかを私たちは知る必要があった。
暗闇に溶け込んだ五人の少女たちは白色が抜けた黒へと変化を告げる世界に返しをしながら進んでいった。




