私と相棒と雪と魔王…世界征服も楽勝だね
「じゃあこの肉も解体しておくね。相棒は肉を三等分に分けておいて。雪は寝てて良いよ」
「いや手伝わせて欲しいのだけれども…」
「ほんと?じゃあ臓器の摘出する?プロが教えるよ?」
「いえお気遣いなさらず私は禍雪の手伝いをしておきますので」
「そう遠慮するなよなんなら身体に教えてやろうか?」
「それは死んじゃうわよ?いくら耐久性に定評がある私でも死んじゃうわよ。シールドベアリングだって分解したら死ぬのと同じよ?」
それはどういう例えなんだよ…
では自然体を発動して残りの五体を解体しようじゃないか。
即座に標的に接近をするとナイフを入れ込んで正面の肉を裂いた。
ほんのりと体内の血管内に残っている血が出てきて咲いた。
臓器が露出したところでどんどんナイフを入れ始めた。
既に息絶えて時間が経っている肉体はなんか惹かれないんだよね。
適当に内臓全て引き摺り出してちくしょうこいつが死ぬ寸前だったら口ん中にこれぶち込むのになぁ…
まあそうはいっても仕方ないので皮を切り分けて一仕事終了。
もはやここからは流れ作業なので特段興奮やたかぶりを感じることなく終了させた。
そういえば肉適当にぶん投げたけどまとまっているかなぁ。
そう思って背後を振り返るとなんかキレている雪がいるんだけど…
「ねえ、さっきからなんで私に肉をぶち当てるのかしら?」
「は?」
いや待て一般的に考えておかしいだろ私は複数座標から不均一な力で同一でない方向に肉を投げたんだぞそれが全部雪に直撃…はっはっは大爆笑もんじゃねえか!
「斬り殺すぞ小娘…」
「誠にごめんなさい…てかなんで笑ったのバレてんだよ!また謎パワーなのか!?」
「安心なさい。顔に出ているわよ」
相棒に指摘されてしまったのでもろ出ていたようだ。
まあ文句は言いつつもちゃんと準備は終わっているのがこいつの評価できるポイント。
「いや、私の評価ポイントは耐久性よ!!!」
「そこには絶対的自信があるのね…」
「まあとりあえず帰ろうか。多分先客もいるだろうし」
そういうと全員が肉を持った。
一人28kgということで休憩を五回ぐらい挟んで行こうか。
私たちは瞬間的な力だけならこの程度どうってことないような出力を出せるのだけども継続的な力は出せない。
実際戦闘でそういう場面がないから仕方ないね。
これに関しては魔王も例外ではない。
だけどあいつの場合は進行方向と上空方向に適切ベクトルの力を入れてほとんど浮かせながら運ぶからあれは例外だな。
赤い花が枯れている空間に薄らと赤みが入り込んでいる黒が揺らめく。
体温を奪っていく冷風が対象に接近しては暖かくなり上昇していく。
雲の隙間からほんの少しだけ見せた月は少女たちを照らして道を照らしていた。
ゲートから出ると案の定こいつがいた。
「何かイベントの気配を感じ取ったからきたぞ。まあ其方らが肉を運んでいたからっていうのはあるがな」
「ついに魔王が平常訪問するようになってしまった…」
そういえばこいつも出身地は地上部分であるがこの付近だったらしい。
この付近にはなんか狂人をいっぱい生み出す何かがあるのだろうか…
そんなことを思いつつもとりあえず先に買い取り屋にいくとしようか。
店の入り口まで行って魔王が扉を開けてくれたのでそのまま入店していく。
「いらっしゃーい。あらあら、今日はまた随分と大人数ね」
「私と相棒と雪と魔王…世界征服も楽勝だね」
「ふふ、それは面白そうね。じゃあ肉はいつもの場所においてちょうだい。そして持って帰ってきたってことはまたパーティでもするのかしら?」
「察しが早くて助かるねぇ。雪の帰還を祝して的な名目でやろうと思っているよ。まああと足りないものを聞きたいからってのもあるけど」
「話は聞かせてもらった」
なんだそのかっこいいセリフを言っている人は…
まあ予想通りの料理人が登場というわけか。
「ちょうど今は早朝だ。早速準備に取り掛かればなんとか間にあるだろう」
「そういえば調理器具って何使ってんの?時間的に無理そうな料理ばっか出してたけど」
「あれはエンジニアが作った特注的なやつだ。しかも最近魔王もきたから技術の進歩が著しくなって色々増えた」
魔王が来てからというもの色々とものがつくられすぎだろ…
とりあえず持っていた肉をおいて計量をした。
機械式のメーターがぐんぐん進んでいき計りが95kgあたりで止まったようだ。
「相変わらずやばい量の肉を平然と持ってくるわね。じゃあいつも通り余った分は回すわね」
「うん。じゃあ私たちはちょっと準備してくるからここで失礼するね。何時ぐらいに始まる予定?」
「そうだな…11時に大広場に来てくれれば間に合うぞ」
「ぶっとんでいるわね…わかったわ」
挨拶は早々に済ませて買い取り屋を出て私たちはエンジニアのところに向かった。
ノックしてから早々に入ると珍しく物音がしなかったようだ。
「ありゃ?もしかして外出中かなぁ」
「いや、あそこにいるではないか」
魔王が指差す方向に目を向けるとこいつやばいなどんな体勢で寝てんだよ…
なんか表現しずらいが膝立ちの状態で思いっきり身体が反った状態で寝てるんだけど。
「…?ああ、お前らか、おはようさん」
「どういう経緯からあの体勢で寝ていたのかしら?」
「なんか考え事をしてたら寝てたらしい。まあそれは良いとして何か用か?」
そう言いながら身体を起こしているが骨が折れてそうなぐらいバキバキなってんだけどこいつの身体おかしいだろほんとに…
「今日の昼に私の帰還パーティという名目でみんなで料理人の料理を食べるのよ。だからそれについての放送を入れて欲しいわ」
おお、さすがは雪だ、やっぱり自分も同等以上の変人だからこの程度では動じないのだな。
「いや、その発言については同意しかねるのだけれども」
「発言って知ってる?言葉を発しないと成り立たないんだよ?」
「わかった。放送を入れておこう。じゃあ私は色々と準備をするから後でな」
そうしてエンジニアに追い出されたので私たちは拠点に一時帰還した。
「最近はイベントがあまりにも多すぎるねぇ。とうとうやばいメンツ全員一箇所に揃ったし」
「世界の滅亡でも訪れるのではないのか?はっはっは」
「あなたがいうと冗談に聞こえないわね…」
「安心しろ。内部からならば我が出ればどうとでもなるし外部からの接触の警戒は既に衛星というものを飛ばしてある」
「何エイセイって?」
そういうと魔王はふっふっふと笑ってから近くの椅子に座って解説を始めようとした。
またこいつは変なの作ったのかよ…
「衛星というのはいま我々が住んでいるこの惑星…といってもわからんだろうから細かくかつ簡易的という矛盾そうな解説をしよう。其方たちは星を見たことがあるであろう。あれが我々の住んでいるものと大差はあるが分かりやすくするために同じと思ってもらっていい。要は星の上に住んでいるというわけだ。そしてここの星は見事に丸型となっていた。確認方法としては我が一周したら同じ場所に戻ってきたからだ。では衛星というものの説明に入ろう。我もほとんど直感で作ったから詳しくはわからないがこの星の遥か上空に機械を飛ばしてそこから観測できるというものだ。そして今回はこの星の観測を目的としているわけではなくでかい岩の塊が落ちてこないかの観測目的だ。以上面倒になったから解説を終える気になる場所はあるか?」
いや話が壮大すぎて訳わかんないししれっとこの星を一周しないで欲しい。
「なんで岩の塊が落ちてくると仮説が立てられるのかしら?」
「良い質問だ。それに関しては引力というものが関係してくる。其方らもジャンプをしたことがあるであろう。すると身体は宙で止まることなく地面に向かって落ちていく。これが引力というものだ。この星の中心に引き寄せられるような仕組みになっているが詳しくはわからなかった」
「要はそれの影響で質量によっては落ちてくるから警戒の必要があるというわけね」
「ああ、現に二回ほど接近を確認しているぞ。内一回は我が殴って砕いたが」
岩といっても話のスケール的に超巨大なんでしょ?なんでこいつはそれと相対して生きているしなんなら砕いてんだよ…
もはや返す言葉もないので私はクローゼットを開いてナイフの交換を開始した。
自然体を発動してナイフを無作為に取得、そのままホルスターに入れて不要なナイフはいつもの防刃性の袋に入れる。
この前廃棄したから当分は行かなくていいかなぁ。
久しぶりにスカスカになった袋をみてそんなことを思った。
「ほう、其方らが使っているナイフは市販品であったのか…よければ何本か作ってやろうか?」
「今はまだいいかな。武器にこだわるほど私たちは強くないから」
「いい考え方だ。強くなったら最終的に刀を打ってやろう」
「もうお前一人で国の運営できるだろ…」
今大忙しの王の代わりにこいつ配備したらめっちゃ潤滑に進んでいるのが目に浮かぶ。
というか一人で国を運営しているやついたわ身近くに。
だめだ…まともな奴が残っていない…
ちなみに第一支部に住んでいる住民は前にも確か話したが特化している人間が多すぎるのだ。
「あ、仕立て屋に行くの忘れてた」
さっきまで持っていた肉が重すぎたので皮を渡すのを忘れていたようだ。
いやおかしいだろなんでこんなでっかいもん忘れんだよ。
「せっかくなら処理してから持っていったらどうだ?案外簡単なもんだぞ?」
「そうなの?いつも丸投げしてたけど」
「ああ、じゃあ外の水路の方にいくぞ。我流にはなるが教えてやろう」
そういうと魔王は玄関口に行ってぐんぐん進んでいった。
明るくなっていく外の景色が私たちの区切りつかれた物語に新たなる始まりを告げるかのように淡い赤色を輝かせていた。




