もっと…楽しませてくれ!
「…至急現場に向かって欲しい」
やばいなんも聞いてなかった。
横にいる可愛らしい相棒のことで脳内を埋め尽くしていたら仕事の内容を聞いてなかった。
過去にもこのようなことが何度かあったがまあ大丈夫であろう。
そんなことを考えているとこの子がこちらを向いてきた。
海のような深い青い瞳がこちらを一瞬覗いてきた。
いつまでも見ていたいという気持ちを抑えてすぐに視線を外して歩き出す。
横に並んでついてくるこの子の存在が非常に頼もしくそれでいて必要不可欠のようなものに感じる。
欠けてしまった瞬間に私という人間が崩れ去るような気がした。
とりあえず仕事ということだから地上に降りとけば問題ないだろう。
ちょっと前に上がってきたゲートを目指してちょいちょい相棒を見ながら進んでいった。
ちょうどお昼時だからか人々は外に出ていなく店内が賑わっている様子であった。
「もう昼時ね。何か食べるかしら?」
「そうだね。移動しながら補給食でも食べとこうか」
そう言われたので私は服のポケットからカロリーバーを取り出し渡した。
市販のものとは違い一本200Kcalとそこそこなものだ。
食べながら歩いているとようやくゲートに着いたようだ。
中に入って操作パネルを押すとぐんぐん下に下がっていった。
「これからどこに向かうのかしら?話全然聞いてなかったのよね」
「やっぱり?なんかそんな雰囲気出てたよ」
そう言ってニコッと笑ってくれた。
くそう、カメラを持ってくるべきだったか。
この素晴らしいどんな美術品でも及ばないこの子の笑顔を撮影できないとはなんたることであろうか。
そんなことを考えていると手持ちの小型の水筒を取り出し飲んでいるようだ。
以前興味本位で私の血をこの子の飲み物に混ぜて渡してみたのだがいつもより美味しいとか言っていたのをいま思い出した。
まあそんな話はどうでもいいよくある日常的なものだからな。
食べ終わって一息ついた頃ようやく地上に辿り着いたようだ。
ゲートの扉が静かに開かれて外に出た。
相変わらずの灰色の景色が広がっていていかにもこの世の終わりって感じのようだ。
「私たちが向かうのは第二支部付近だよ。中級中層程度の魔物がいるから倒してくれだってさ」
「その程度も対処できないなんてだらしないわね。私でも勝てるわよ」
ちなみにこいつらの戦闘能力が高すぎるだけで中級中層レベルといったら統率の取れた訓練された二十人ほどの部隊が出てきてギリギリ勝てるかというレベルだ。
決して兵士たちが弱いというわけではない。
第二支部に向かって進む途中何度か奇襲を受けたが全てノーダメで終了した。
なぜか相棒が対応したやつだけ内蔵が全て引きづり出されていて振り回して遊ばれてた。
あの遊んでいる時の無邪気な顔も最高に可愛かったわ。
「さて到着したけどどこだろうね」
「どこかにいるんじゃないのかしら?中級程度なら知能もあまり高くないだろうし」
上のランク帯に上がるにつれて魔物たちの知力が上がっていく傾向がある。
低級の奴らはほぼ確実にに奇襲や絡め手を使用してこないが中級上層以上は可能性がある。
特に上級以上はほぼ確実に知的な行動をしてくる。
辺りを確認していると同時に二人が一点を見つめた。
視線の先には狼のような見た目をした魔物がいた。
何を食べていると思ったらどうやら人間を食べていたようだ。
骨はポイポイ投げ捨てて血を啜り肉、内臓全てを食べ尽くしたようだ。
「こいつか。食料だな」
既に戦闘モードに入ったのか海のように青かった目を火のように赤くたぎらせてしたなめずりをした。
そんなこの子を見て私もテンションが爆上がりして戦闘体制に入った。
流石にこんだけやばい気配を発していれば気づくので魔物もこちらを向いてきた。
「どっちがいくかしら?」
「ここは無論私だよ」
そういった瞬間に相棒が動き出した。
側から見ればただの接近だが魔物は反応が遅れて前足を斬られた。
とっさに背後にに飛んだがもうすでに遅い。
前足にざっくりもらったため移動速度が低下しすぎている。
背後に飛んだ分接近してもう一度今度は骨にヒビが入るように強めにナイフを振った。
先ほど切った場所と同じ場所に刃が入っていき肉を切り裂きながら骨に到達した。
少々ミシミシと音がなったので予想通りの威力で入れられたようだ。
逃げることは不可と判断したのか魔物は相棒の左肩に噛みつこうとした。
ナイフを持っている右手は前足を捉えているので足と右手に力を入れて回転運動を発生させてその間にナイフの向きを入れ替えて刃を顔面にぶち込んだ。
右目と頭蓋骨に大ダメージをもらって魔物がよろけた。
「私をもっと楽しませてくれ!」
そう言って左手をチョキにして鋭い突きを目に放った。
綺麗に目を貫いて色々な液体がそこから噴き出してきた。
即座に手を抜いて重心を低くし鋭い蹴り上げを顎に放った。
かなりの重量があるはずだが面白いぐらい勢いよくひっくり返ったようだ。
そして腹部にナイフを突き立てて一気に上から下に引いた。
肉がどんどん裂けていき血と油がナイフに付着してちょうど切り切った瞬間に切れ味を失った。
もちろんそうなると知っていたのであらかじめヒビを入れた足を思いっきりぶっ叩いた。
まるでバッティングしたかのように足が吹っ飛んでいったが私がキャッチして即座に投げ返した。
それをキャッチすると付着している油と血を擦り付けて落とした。
切れ味が少々復活すると解体作業に戻り内臓を切り落としてどんどん捨て始めた。
そして肉のみになったところでこちらを向いてきたようだ。
「よしじゃあ食べようか」
血まみれの状態でニッコニコの相棒を見て私も笑い返して火をつけ始めた。
ちなみに火の付け方は簡単で平たい石を用意して頑丈な枝を用意する。
そして枝で石の表面を横薙ぎすることにより火がつくという寸法だ。




