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殺したいほど愛してる  作者: 雪梛


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16/18

わかってんねぇ。流石は王って言ったところかな

「どうしたんだお前ら。まさかの急ぎの用事ってやつかな?」


「流石の察しの速度です。近頃の異常傾向や先日の特大魔物の件もありまして各支部の支部長がすでに集まっております」


「マジかよ。待たせちゃ悪いな。というわけだからいくぞ第一支部代表」



そろそろ話し合いがあると思ってはいたけれどもこんなに唐突にくるものなのね。


元々定期的に各支部長が集まって現状の経済状況や情勢やらを話し合う場を設けられていたが今回は魔物についての緊急会議といったところかしら。


ちなみに第一支部は私たちがいるので代表役を請け負っているというわけよ。


わざわざあそこからきてもらうのも危ないものね。


ほんの少し早歩きで会議室のある施設に向かい始めた。


ちなみに言っておくとこいつの所有物ではない。






「待たせて悪いな。ただいま到着と言ったところだ」



ちょっと冗談混じりな雰囲気を出しながら王が言った。


こんだけ支部長が集まるっていうのも壮観な見た目だね。


そう思いながらも私たちも席についた。



「ではこれでメンバーもそろったし始めようとしようか。いつも通り暗い雰囲気なんかは無しで明るい感じで冗談でも言いあいながらいこうか」



暗い雰囲気になると察したのか王がそこそこに気の利くことを言っていた。


あんまり空間が和んだ感じはしないがまあいいだろう。



「ではまず第五支部から現状の被害状況を順々に言っていってくれ」



そういうと第五支部長が立ち上がって一呼吸してから話を始めた。



「現在第五支部では約40名もの市民がなくなっており怪我人を含めたらその3倍は軽く見積もってもいくはずです。人口の約三分の一が魔物の被害に遭っており積荷などの被害総額はおよそ2000万にも登ろうとしています」



補足を入れておくとこの世界では地上を移動する回数を減らすため護衛をつけて一度に大量の積荷を運ぶのが主流となっている。


普段なら低級のみの区域しか通らないので問題はないのだが最近の異常傾向の影響でおおかた中級にでも襲われたのだろう。


流れるように第五支部長が座って第四支部長が立ち上がった。



「第四支部では被害者が約30人、200万の損失とかなり抑えられていますが物流があまり回っていません。商人含めほとんどの市民が支部内にいるため物質保有量の現象が著しくどうにか動かさないと近いうちに全滅するかと思われますね。内部で暴動とか起きているのを見ると魔物よりも人間のが恐ろしいですわ」



はっはっはと笑いながら言っていたが目は笑っていなくちょっとした急を感じることができた。



「第三支部では被害者約500人、3000万の損失を受けています。予期せぬ魔物との遭遇やこちらも内部で暴動が起きています。商人なんかもそこで殺されて結構ヤバめな感じですね」



あれ?この世界ってもしかしてピンチ?



「第二支部では被害者約200、1000万の被害を受けています。内容は四と三と同じなので省略しますね」



ほうほうつまり大都市抜きで少なく見積もって900人の被害と6200万の損害が出ているのか…終わったか?



「おい、一応報告してくれ」


「ああ、ごめんごめん。第一支部は損害ゼロだよ。みんな元気に暮らしているよ。昨日王も確認した通り30名全員揃っている感じ」


「では最後に大都市の現状だ。被害人数約1500人、被害額は1億2000万だ。もちろん魔物の被害もそうだがうちに関してはスラム街の影響が微量ながらある。まあそれに関しては私の過失だがな。では合計して人間の損失は2400、金額は1億8200万だ。ちょっと待って思ってたよりもやばくない?」


「いや、仮にも王であるあなたがそれを言っちゃまずいでしょ」


「はっはっは。だからこそこうやって集まって対策を組むんじゃないか。というかすでに対策案に関しては技術部の方に提案済みだ」



思っていたよりも仕事が早いようだ。


普段からほっつき歩いて仕事をしているのかとちょっと気になっていたがどうせ各支部の情勢なんかわざわざこんな会議を開かなくても大まかに知っていたであろう。



「どのような対策案を提案したのか聞いてもよろしいでしょうか?」


「もちろんだ。まあそんなに難しい話ではない。作れる作れないをおいておけばきっと考えたことがあるんじゃないか?」



その瞬間に一つのものが頭に浮かんできたが本当にやるとしたら技術部可哀想だね…



「ま、まさか…空に橋をかけるのかしら!?」



芝居がかった反応を相棒が起こして王の方を向いた。



「その通りだ。天空城だけでもロマンの塊なのに橋がかかったらかっこいいだろ?」


「それはわからんでもないけども。まあできるのであれば革命的なものになるよね」



その瞬間にまるで小説かのようなタイミングで技術部がノックをしてから入ってきた。



「終わったぜー!あら?みなさんお揃いで。まあちょうどいいや。今こいつに依頼されて支部同士と大都市を繋ぐものの構想が完成したぞ!こいつが言っていた橋は距離的にかけられそうにないから代わりにゲートの技術を応用して繋げることにしたぞ!今度正式にうちが発表を出すがとりあえず現状大都市のみでも支部同士のみでもいいから繋げたいと思っている奴は手をあげてくれ」



どうせ他支部全員あげるんだろうなぁ。


そう思っていた通りに全員が挙手をして希望を目に宿らせた。



「これで物流問題が解消どころか一気に変わるぞ!」


「地上に極力行かなくて済むのはいいことだね。大都市にも気軽に行けるのはかなりのメリットだ」



口々に言っている言葉を聞き流しながら相棒と王に意見を聞いた。



「どう思う?あんまりメリットないけど」


「危険性を回避できるとは言っても人間が流れる可能性が高いわね。それこそ大都市に移住して過密と過疎が出来上がるのが目に見えているわ。どう制御するつもりなのかしら?」


「その問題については急ぎの解決は予定ないな。急な物価変動の方が私は心配をしている。交通費的に多額の金を騎士団に当てていた他支部がその支出がなくなると安売りして大幅なデフレを起こす恐れがある。経済が崩壊した世界で生きられるのは結局第一支部のみということになるからそこに大勢の人が来る可能性も考えられなくはない」


「どうするの?商人には多額の交通費を要求するの?」


「不満が出そうだが致し方無しだ。しかしその代わりにその金を使って都民の貧困層に支援をしていけばいずれスラム街がなくなってさらに発展していくだろう」



結論が決まったのかとりあえず王は場を沈めてから話し始めた。



「盛り上がっているところ申し訳ないんだが話がある。なあにそんなに悪い話ではない。支部間移動、大都市間の移動ゲート使用時は商人には重め、市民には軽めの費用を支払ってもらう。支払うと当然大都市に金が入ってくるわけだがもちろんその全てを大都市当てに使うわけではない。今まで回していた支部給付金に乗せる形で特定支出給付金をだそう。その支出先は市民の貧困層当てに使って欲しい。特定先は市民とだけするから自由に範囲内なら使ってもらって構わないがな。私の狙いは貧困層を一般レベルの金銭状況まで持っていき働ける人材を増やして各支部の急速な発展が狙いだ。おまけ的に急激な物価の変動予防でもあるがな。商人はわかっているだろうが物価は大切だ。急激な変化をつけると現在出回っている資金の価値が変化して崩壊してしまう。言いたいことはこれぐらいだ。何か質問はあるか?」


「ゲートの使用料は永続的なものと認識してよろしいのでしょうか?」


「いや、一時的なものだ。全ての支部が発展して安定した暮らしを建てられていると判断した時に無償化する」


「先ほどの特定支出給付金ですが王に直接申請する形で給付されるのでしょうか?」


「定額の年更新で給付の予定だ。ゲートの使用量は全ての人間が平等な額払うのにもらう額が変動したら不平等だろ?」


「全ての支部とか言ってたけど私たちんとこの第一支部は例外扱いだよね?」


「ああ、あそこはあのままでいい。むしろ大都市よりも発展しているしな」


「わかってんねぇ。流石は王って言ったところかな」



他の支部長は不可解な顔をしていたが気にせず王は着席した。



「話の内容はこんな感じだ。すぐにでもゲートの開通作業に取り掛かってくれ。各支部長は帰ったら放送でこの内容を確実に、全員に伝えてくれ。工事の期間についてはおいおい私が各支部に伝えにいく。禍雪たちはあのエンジニアを連れてきてくれ。以上だ。いよっしゃあ堅苦しい会議が終わった」


「全員いる前でよくいうよねほんと…じゃああの人呼んできてね〜」



技術部の人は返事を聞かずに職場に戻って行った。


他の支部長も続々と帰っていくので私たちも帰るとしようか。



「じゃあいこうか。これだけの大工事が起きるのは久しぶりだね」


「そうね…確か大都市のインフラ整備の時ぶりかしら」



話をしながら入り口から出ていき突き抜けるような寒さが身体を刺激した。


人々の様子を見るにどうやらこの事象をちょっとは知っているようだ。


落ち着かないような雰囲気の中私たちはゲートに向かって歩いていく。


ちょっと寒いかなぁとか思っていたら相棒が肩に腕を回してきた。



「ちょっと寒いわね。降りたら走りましょうか」



うおーーめっちゃいいアングルだああああ!!!


太陽の光が相棒をいい感じに照らしてなんかめっちゃかっこいいんだけど!


これでこそ私の相棒だ!



「休暇中だけど戦闘してもいいかもね」


「まあ今回は事態が事態だから流石にスルーするわよ」


「わかってるよ。じゃあいこうか」



ほんのりとあったまった頬を気にしながら私たちはゲートに入って地上に降り始めた。


てか地上を歩く人が減るなら私たちの仕事減らない?

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