雪梛にとって、手なんて飾りでしょ
シャワーから出たらまさかの変なことが始まっていたわ。
雪梛がノーパソを出してひたすらにカタカタ打ち込み…何が起こるのかしら?
詳細を知らされていない私だが何かしらココロオドル事態がおきそうというのが分かるわよ。
「一風変わったプレゼント交換会と行こうか、内臓でも人体部位でも何でもいいよ」
「女子会かな?」
「そんな物騒なものがあってたまるか」
ん?なんか想定を二歩三歩と超えていったわよ…
え、つまり心臓とか肝臓とかを渡して代わりにその類をもらうということ?なんだこの会は…
今どきの学芸会でももっとましなものを使用するだろうと思ってしまうがこの子が求めるならやぶさかではないむしろばっちらこいのぼりよ!
「誰が参加するのかしら?」
「雪眼と禍雪だね。他に誰か呼ぶ?」
逆に誰が呼べるのだろうか…
「この内容だから呼べる人間は限られてくるよね。もちろん雪梛と香澄ならどちらかが同意すればやるだろうけども」
「まあ実験みたいなものだからね。私と相棒だけで楽しもうじゃないか」
「それもそうね」
「じゃあまずは何からいく?お望みならば臓器の一覧表を渡すけど」
「メニューみたいな?」
「そうそう」
いまだかつてメニューとして人体の臓器の一覧表を渡してくる人がいただろうか、いやない!
反語して余裕かましながらいったん待ちの姿勢をとる。
そうよこれはタイミングが大事だわ格ゲーのようなシビアさと顕微鏡顔負けの精密さが重要なのよ。
まずはこの子に選択させてそこから同レベルの臓器を選択する、そうねこれが一番間違いない選択だわ。
「どれにする?」
「好きなの選んでいいわよ。すべてを受け入れられるもの」
「ふっふっふ、流石は禍雪だぜ。じゃあ心臓で」
「心臓ね、じゃあ私もそれで」
「おっけーだよ。というかそういうと思ってすでに準備はしておいた」
用意周到ね、まあこっちも心臓を選ぶだろうと思っていたわ。
この子の可愛さを動かしている動力元を私の中心部にぶち込めると考えれば最高すぎる。
てか何でもできるならパーツ全部入れ替えて記憶変換みたいなこともできるのかしら?
「準備完了だよ。決断のエンターきーだ」
「さあこい」
雪梛がエンターキーを押した瞬間、私の口から大量の血が噴き出した。
「あ、ごめん、文末のコロンいっこ付け忘れた」
「何してんの!?」
もはや痛みとかの次元ではない、息すらできないので、意識が…
「はいよ、直った。これで問題ない」
「し、死ぬかと思ったわ…」
「回復もしといたしまあドンマイということで」
まあいいわ、…うむ…
胸に手を当てて心音を確認する。
確かに普段のものより少しだけ変化があるように感じられるが…なんというか…
「あんまり感じないね」
「そうね」
もっとなんか感情の高ぶりというか意識が飛ぶような感覚があると思ったのだけれども…いや窒息しかけたけども。
「そりゃそうだよ。適合するようにちゃんと調整したからね」
「なんてことを」
「オフにする?したら死ぬけど」
「いえ結構です」
でもなんだか温かみを感じることができるわ、それ以前にこの子の心臓が私の中央で動いているだけで欲望が発動できるのだけれども。
「もうちょっと変化を体感できるところをやってみようか」
「とすると人体の部位交換が一番いいね。手足に太もも腹から胴までよりどりみどりだよ」
「じゃあ手でいいんじゃないかしら?違和感の調整が一番しやすいわよ」
「はいよ、じゃあちょっと待っててね」
そういって雪梛がカタカタ打ち込みを開始した。
「本当に何も変化ないのかしら?」
「うむ…なんていうんだろうね。はっきりした違和感はないけどぼんやりとしたものならあるというか」
「まあプラシーボみたいなものでいいのよ。最高じゃない愛するこの子の心臓が今私の内部に収められるだけにとどまらず私の血液を飲み込み放出を行っているのよ!」
ああいいねいい気分だいい気分になってきたわはっはっははっははははははは…
おっとあぶない、目のハイライトのみならず視界すら消してしまうところだったわ。
「楽しそうで何よりね。暇だし最後まで見届けるとしようかしら。よ、い、しょっと」
「布団を敷き始めないで?寝転がりながら鑑賞するってこと?」
「大丈夫よ!寝ないわ!」
「そういう問題?」
「お、準備できたよ」
「今度はミスらないでしょうね」
「大丈夫だよ。データベースからの削除が行われない限り私たちは無限に復活して死ぬからね」
「死ぬから大丈夫ってわけじゃないわ。ちゃんと確認なさい」
「大丈夫。今回はテストプレイもしたから問題ないよ」
「テスト?まあ大丈夫ならいいわ」
一体二人の手を入れ替えるなんてどこでテストしたのだろうか。
「押すよー、はい」
「うわ!?手が無くなった」
「今色々変換しているから待っててね。二、三分で変換されるから」
「今手が飛んでいるのよね。何で痛くないのかしら?」
「痛覚無効の処理をしているからね。加えて保険の感覚遮断もしているし何も感じられないはずだよ」
では…
この子の肉体に軽く体を当ててみる
「うわお、どうしたの?」
「嘘じゃない。この子のもちもち感が感じられるわよ」
「知らないよ」
そうしてこの子と戯れていたらようやく手が来たようだ。
「おお、手が生えてきた」
「あら?小さくてもちもちしているけれどこれこの子の手じゃないわよ?」
「え?」
「あれ本当だ、私のほうについている奴も相棒の手じゃないね」
「あ、やらかしたかな?」
「さて、どういうことか説明してもらおうか」
うわ、背後から雪梛がちょっと不機嫌気味に来ていた。
「さっき香澄と遊んでいたら突如にして手が無くなったんだよ。てんちょうを呼び出しておおもとを調べたらここにヒットした」
「雪梛にとって、手なんて飾りでしょ」
「装飾はあることに意味があるんだよ。抜けるとゼロではなくマイナスに転じる」
手が飾りなのは認めるのね…
「全破壊雪梛、当分出禁だよ」
「当分か、まあ楽しかったから仕方ないね。またの機会に会おうか」
そうして雪梛と雪梛が亜空間に消えていっていた。
まあいいわ、ゆっくりしましょう。
自分の手でちゃんとした飲み物が入っているコップをつかみ一口飲んだ。




