三枚におろしてフライにしてやろうか小娘…
どうしたんだ!?
「禍雪!!!」
頭を地面に打ち付ける前に何とか回収に成功したが意識が完全に飛んでいるようだ。
「毒にやられたか、まああんだけのスライムをあの距離でやったらそうなるよな」
「毒か、まあ死なないだろうしいいかな。てかさっきのやつ何?」
「あれは私が開発した光学武器だ。他にも刀からビームまであるぞ」
「過酷すぎるだろ前の世界…あれ?でも何で使わなかったの?」
使えば楽勝だしかっこいいじゃん。
「この辺には鉱脈があるからな。そこいらの物質よりも跳ね返りのリスクが高いんだよ。さすがに食らったら死ぬからな」
「一人だけSFみたいになってるなぁ。まあさっさと鉱石回収して帰ろうか」
「…ああ」
どうしたんだ何かに引っかかったみたいな反応して。
落ちていたピッケルを拾い鉱脈に対して振り下ろす。
パキーンといういかにもな効果音と共に付近に破片が飛び散った。
「意外だな、と表現するのは不適切か」
「というと?」
「相棒である禍雪は良いのか?こんなよくわからん物資採集よりやりすぎなぐらいの過保護を互いに課しているほうがいいんじゃないか?」
「ふむ…」
確かに言われればそうだ、いや無論そのことについては重々承知していると言っていいだろう。
であるにも関わらず私はこちらを優先している。
過去の私を思えば考えられない事態だ。
どこから私はおかしくなったんだ?
今でもあの時から変わらないどころかむしろ愛が増している。
それは間違いないはずなんだけど…
「こっちの世界のお前らの関係は私は知らない。読まないようにしたからな。だがそれでも互いがどれだけ大切なのかなんてのは見れば分かる。私の世界のお前らならこんな状況になった時点で一発私にぶち込んで即帰宅だな」
「やるだろうね。容易に想像がつくよ」
鋭くピッケルをぶん投げて撤収準備を開始する。
「イレギュラーが連続的に起きていることは分かっている。だからこそ感覚が壊れていくということも。だが壊してはいけない、歪みすら許してはいけない軸があるということだけは覚えていてくれ」
前世界で何かあったのかな。
それともあれば自分に対して言ったのか。
真相はどうでもいいし興味がわかないが何か重要なことを言われた気がした。
「さて、あがるとするか。長話が過ぎたようだ」
「ありがとね」
「ああ」
相棒を担いで亜空間の中に入る。
さて、帰宅、完、了…え?
なんか自宅の前に梛木の死体があるんだけど。
「good night!What's up?」
「I'm find thank you.いやそうじゃなくて何でここで死んでんだ?」
「急にヒステリック起こしたのよ。前から不安定だったけれど恐らく一人でいるうちにおかしくなったのね」
「だから殺したと」
「そうよ!あと一歩で負けるところだったけれど持ち前のしぶとさで勝利したわ!」
「なんでこいつは倒れないんだ…」
「エンジニアじゃない!久しぶりね」
「別世界線時間軸からきたんだがな。これからよろしくな」
全面が切り傷で覆われている血まみれの化け物とレベルが高い化け物が握手をしている。
「にしても珍しいわね。禍雪がそんなになるなんて。あなたらしくないわ」
「え?私?」
「どんな状況だったか分からないけれど外傷ほぼ無しだし涙の跡もないなんて。近いうち片方死ぬわよ?」
「いいやそれはない。死ぬとか死なせるぐらいなら互いに殺すからね。重度の共依存者なめるなよ」
「そこはブレないのね…」
いよいよ梛木も死んだか、残すところはいつものやつらだけと。
「死ぬのが早いよ。もう少し頑張ってほしいかな」
「あら、随分とお早い再登場ね」
「そうさせた要因は雪なんだけどね。それはまあいいとして雪にアクセス権を付与したから明日から同じ世界で頑張りな」
「え?いいのかしら?」
「だって死なないでしょ?なんか持ってるみたいだしね」
「ななななななんのことかしら?」
「というわけでよろしくね。くれぐれも 死なない ように」
そういって雪梛はどこかに消えていった。
なんだ今のニュアンスというかは。
まるで私たちが死を嬉々として受け入れている忠告みたいな。
「そんじゃ、私は禍雪の解毒をしてくる」
「一人で大丈夫かしら?ドクター」
「私、失敗しないから」
適当な茶番の幕と共にエンジニアと相棒が消えて私と雪のみになった。
「なんかあれみたいね。人狼ゲームってやつかしら」
「やばい、雪に乱暴されちゃう」
「三枚におろしてフライにしてやろうか小娘…」
「てかさっきの雪梛の話は何だったんだ?私にはわからなかったんだが」
「それは…んー」
珍しくはっきりしないな、何か裏というか複雑な事象が絡み合っているのだろうか。
身長とかは成長しないがその辺の考え方とかは成長を続けているというわけなのだろうか。
恐らく話として難しいというわけではなく考え方として難しいのだろう。
「まあ特に気にせず生きたほうがいいわよ。ええそうね、生きたほうがいいわよ」
「なぜそこを繰り返す。言っておくが簡単に死ぬほど私は甘茶奈じゃないからな?」
「どうかしらね。まあ今更誰がどんな死に方しようと心なんて器のない私たちは動かないのだけれどもね」
「流石は広く浅い雪だ。意中の人がいないなんて」
「いや、大概そうじゃないのかしら?」
「そんなことないだろ。雪梛と香澄がそうだし他メンツもそんな感じなんじゃないか?」
「どうかしらね…ああそうだ。今の現状の進行について教えてほしいわ」
「ん?…ああそういうこと」
それから雪と現状の状況について話をしつつ適当に寝た。
近いうちの全滅は免れそうだね、といっても時間の問題かもしれないけれどもね。




