死んだな…ふふ。
「いけ!マヒャ◯斬り!」
ちくしょう!でねぇじゃねぇかよ!!!
無論数日で出せると思ってはないが兆しすら見えないぞ…
魔法鍛錬二日目、私の手応えとしては無しだ。
なんというか叫びながら動いているだけみたいな感じだな…本当に魔法なんて出せるのか?
相棒、雪、梛木、無無の全員が恐らくそのように感じているであろう。
「珍しいわねここまでかすりもしないなんてー」
「かなり特殊な世界だものね。リアリストと魔法は水と油よ」
確かに魔法はある、それは今までの戦闘で経験済みだから分かってはいるんだが…
あれだな、事象として理解はしているが札としては理解していないみたいな感じ。
とりあえずもう一回だ!
納刀していた刀を抜刀して中段構え。
その刀を芯として大気を纏わせ凍らせる。
温度が徐々に下がっていき結露が発生してそれが凍る!
「いけおらマヒ◯ド斬り!」
放った斬撃が空を切り裂きほんのりと風を発生させた…ダメじゃねえか!
多分これを遠目から見ている朝月と静樹は笑えるだろうな私だったら大爆笑だはっはっは。
「何が足らないのかしらねー」
「やっぱりあれよ。倫理観よ」
「そんなつまらぬものは切り捨て済みよ」
「またつまらぬものがなくなってしまったってわけね」
どういうわけだよ…
あんまりにも魔法が絶望的すぎて欲望すら抑えられてしまったしいよいよ面白くなってきたな。
今回から得られた知識は欲望はある程度の範囲内のみでしか反応しないというわけか。
これは絶望の先に欲望があるのではないことを示しているようにも感じられるが当の私がそれほど絶望してないのが気になるな。
まあ、絶望って希望を絶つって意味じゃないからな。
「本当に魔法なんて出せるのか?」
「それを言ってちゃ始まらないよ。とはいえ現実を見続けてきた無無が習得難易度的に一番高いだろうけどね」
「雪梛はどうやって魔法を出しているんだ?」
「どうと言われてもね。呼吸の仕方を聞くやつがいるかね」
期待ができない少女たちは見たものを現実として受けてしまう。
上を向いて歩かないスタイルにひびをいれ、砕く手前でのぞき込まねばならぬだろう。
「あれから1年…私たちは頑張ったわ…」
「天丼してますよ」
雪梛と香澄が帰ってからまだ時間はあまり経っていない。
100分の1どころか365分の3よ。
変わらぬ食卓を4人で囲んで前と変わらぬ日を過ごす。
人は生きている環境によって最適化されていくのでとりあえずこの魔法鍛錬の生活に身体を慣れさせるわ。
なんでも雪梛がはじめて異世界に飛んだ際は毎日のようにイベントか相対、考察を行なっていたようだがそんなのは極めて異常な人がやってればいいわ。
「いやー何か進展は欲しいわよね。なんというか…こ、これは…!お宝だー!みたいな」
「スティールでも決めたのかしらこの娘は…」
「まあいわんとしてることは分かりますよ?明確な区切り点とでもいいましょうか。そのような潜在的でない顕現された進展がほしいと」
「それが欲しいなら根本の見直し、後は抜け道を探すしかないな」
「みんな焦りすぎじゃない?らしくないぜそーゆーの」
全員の動きが一瞬止まる。
まるで、砂時計の砂が落ちきってしまったかのような、続きを求めようとも誰かが動き出さなければ止まりを平常と改変してしまうような静寂が訪れた。
「この子の言う通りよ。まだ完全に染まりきってはいないけれど私たちには無限に近い時間がある。焦りは停滞を加速させるわよ」
「止まるんだが動くんだかはっきりしてくれ」
「やかましいわよ」
無無のつっこみにより砂が落ち始めたようだわ助かった。
「確かに焦りすぎね。いつも通り軽口でも叩きながらいきましょうか。ところで話変わるのだけれど雪眼、あなた雪梛とキスしたわよね?」
「んぁ!?んー…」
あらら、舌噛んでるわねかわにいそうに。
「その話どうなのかしら!私詳しく聞きたいのよね!!!」
「いやその」
「なんだその話めちゃめちゃ気になるんだが」
「えちょ、いや」
「雪眼さんのキス話、私、気になります!」
「うわー!!!」
あっまずい暴走するわ逃げて被害者を観戦しないと。
ぐるぐると目を回した相棒を撮影してから私だけ部屋の隅に回避しておく。
「そんなに気になるならお前ら全員キスで窒息させたらぁ!!!」
「あっはっは!!!」
大爆笑している雪に一直線に進んでいき足払いをかけて転ばす。
完全に不意を突かれて声すら出せずに背中を床につけた瞬間相棒が雪の口を口で封じる。
「んー!!!んっんっん!!!」
死んだな…ふふ。
愉快な光景を見ていたらいつの間にか梛木と無無が消えたらしい、いや気配を消しているだけかしらね。
ぐったりとしている雪をよそ目にとりあえずこの子にデコピンをする。
正気を失っているような状況でも予想外の事象には対応せざるおえない。
「んにゃ!?あれ?…!」
いつも通り赤面してくれるかと思ったが今回ほあんまり動じないわね。
まあ相手が雪ではその反応も納得というもの。
「私無機物みたいな扱いなの!?」
「当たり前みたいに起き上がらないで頂戴」
おかしいわね、さっきまで気絶していたと思ったのだけれど…
いつも通りの日常がかえりはじめていた。




