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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第一章

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現実を見る

或いは山積する課題たち

君塚は今、一つの朗報と、抱えきれないほどの「悲報(仕事)」に頭を抱え、天を仰いでいた。


まず、朗報だ。

待ちに待ったスキル『官僚創造』の使用がついに許可されたのだ。

軽薄な電子音(ピロン♪)と共に、脳内にあのやかましい声が響き渡る。

【おめでとー君塚ちゃん!これで君は幼き姫君を操り、この国の内実を好き放題に牛耳る『悪のフィクサー』になれたよ!!やったね!!!】

「……何も良くない言い方はやめろ。あと、俺はペドフィリアでもないし、女は今は要らん。抱え込めば弱点になるだけだ」

【ふーん……つまんねーの。今の君なら契約内容なんて踏み倒せるのに、わざわざ律儀に守ろうとしてるしー。割とあの子のこと気にしてるよね? やっぱ向いてないんじゃない? 悪の首魁とか】

「喧しい。その喉笛、いつか噛みちぎってやるからな……まあ、貴様のその甲高い声にも慣れたし、今や愛着さえ感じるよ」

【えっ!? ほんと!??】

(皮肉も分からんのか、このたわけは……)

運営の甲高い声に慣れてきたのは事実だが、それは「諦め」に近い。愛着など微塵も感じていなかった。

【それとー、解放された『官僚創造』なんだけどさぁ。これ、『国家統治大会』なら必勝スキルだってこと、中身を見る前に伝えておくね? マジだから】

珍しく、運営が真面目な声色で告げる。

【アタシがあんたの担当だから特別に教えるけど、そのスキルは軍人以外の公務員なら『何でも』創造可能なの。警察官から外交官、果てはスパイまで、ね。しかも彼らは24時間365日不眠不休で稼働可能。必要な物資も自動生成。……ま、この国レベルなら、あっという間に17世紀から20世紀へワープできるかもね?】

「……は? 今、何と言った?」

君塚は一瞬、呆けた。

何と言った? そんな便利どころか、国家運営の根幹を揺るがすチートスキルが許されていいのか? 何故取得時にあんな鈍い光だったのだ?

【だーかーらー! 軍人以外の公務員なら何でも創造・維持できます、っつったの!! 聞こえた!? 返事!! 復唱!!!!】

「え、あ、はい。……マジかよ……最高すぎるだろ。これが国家統治を競う大会なら、だが」


君塚は即座に行動を開始した。

溢れ出る事務処理能力の奔流――『官僚』たちを創造し、手足として王国各地へ解き放つ。

まず法務省を設立。法体系を根本から見直し、村単位の私的な裁判を全廃。国王公認の裁判所を王都ズラトポルおよび各地方都市に設置した。

土地所有権を明確化し、貴族が不正に掠め取った土地を王室へ返還させる。法の刃は貴族にも平等に向けられ、彼らの地方支配力を根こそぎ削ぎ落としていった。

また、法務省管轄の『警察官』たちは、これまでの自警団とは一線を画す。スラム街のゴロツキを掃討し、交番システムを導入。王都を中心に、急速に治安が回復していく。

次に大蔵省。複雑怪奇な税制を整理し、聖女教の司教区や有力貴族からも容赦なく徴税。非課税特権を剥奪し、火の車だった王室財政を黒字化させた。

重税に耐えかねた貴族が手放した土地は王室が買い上げ、補助金付きで農民へ分配。「自作農の育成」という君塚摂政の目玉政策が実現する。

抵抗する貴族? 君塚の私兵が「鎮圧」し、その土地は現地の農民へプレゼントだ。

国土交通省は、全土のインフラ整備に着手。関所を完全撤廃し、河川には橋と渡し船を整備して物流を加速させる。既得権益を失った貴族や騎士団が抗議の声を上げたが、君塚は全て黙殺した。

農務省と文部科学省も稼働。

農業指導員が種籾と共に派遣され、早生種のソバやキビで飢餓を防ぎつつ、農協的な組織で現金収入を安定させる。

学校建設ラッシュにより、子供から大人まで読み書きの教育が施された。コスト? 君塚のギフト持ちだ。王都に建てた大学まで学費は無料である。

――と、ここまでは順調だった。

しかし、ここからが君塚を悩ませる「悲報」のターンだ。


悲報その1:全ての手柄は「ヤドヴィガ女王」のもの。

あの契約書の第3条、『在位中の全政治的責任は、布告者であるヤドヴィガ女王に帰属する』という文言。

これが完全に裏目に出た。

全ての行政改革、特権階級への厳罰、民への施しは、すべて「幼き女王の英断」として処理されたのだ。

街へ出れば「女王陛下万歳!」の声。君塚への称賛もあるが、それはあくまで「賢明な女王を支える忠実な摂政」としてだ。

(……今更彼女と喧嘩しても政権が揺らぐだけだ。耐えるしかないが、初手でこれか……)


悲報その2:軍拡しすぎて指揮系統がパンク。

クーデター成功の報酬として、運営から莫大な軍事経験値が付与された。

その結果、君塚の軍隊は「旅団」から「軍団」へと進化してしまったのだ。

第1戦車師団:主力戦車がT-55からT-72へ更新。

第2・第3機械化狙撃兵師団:装甲車はBMP-1やBTR-70へ。歩兵火器はAK-47からAK-74へ近代化。

航空戦力:Mi-24やMi-8に加え、MiG-23M(12機)、MiG-21bis(24機)、Su-17M3(10機)が追加。

もはや一国の軍隊そのものだ。

近代化された3個師団、数万人規模の兵力。いかに『官僚創造』があろうと、軍事指揮官(将校)は創造の対象外。君塚ひとりの指揮能力など、とっくに限界を超えている。

航空戦力の維持・運用も含め、もはや自分一人では制御しきれない領域に達していた。


悲報その3:ヤドヴィガ殿下のお守り(物理)。

これが最も深刻かつ、切実な問題だった。

「摂政閣下、やはり今夜も……」

君塚が信頼を置く女性兵士、エレーナ・ソコロワ中尉からの報告を受け、彼は重い足取りで女王の寝室へ向かった。

入室すると、ヤドヴィガは慌てて涙を拭い、美しい金髪が揺れるほどの精一杯の笑顔を作った。

「……こんばんは、君塚様」

気丈に振る舞っているが、目は赤く腫れている。

彼女の孤独は察するに余りある。母は生まれ落ちてすぐに亡くなり、父は暗愚、兄弟からは虐げられてきた。5歳児が夜の闇に一人で耐えられるはずもない。

本来なら信頼できる侍女を派遣して慰めさせるべきだが、今の彼女に必要なのは「慰め」ではなく、より原始的な「安心」――寄り添う体温だった。

君塚はかつて、両親不在の夜に弟を寝かしつけていた記憶を呼び覚ます。

「……失礼する」

彼はベッドの脇に椅子を置き、彼女の小さな手を握った。

「眠れるまで、ここにいる」

ヤドヴィガは驚いた顔をしたが、すぐに安堵し、君塚の手を両手で強く握り返してきた。

だが、本当の地獄はここからだった。

眠りに落ちたヤドヴィガが、悪夢にうなされ始めたのだ。

彼女の夢は、過去の追体験。父カジミェシュ8世による母への暴行、そして他の妃による母の絞殺――その残酷な光景が、フラッシュバックとして彼女を苛む。

「いや……! こないで……うぅッ!」

彼女は半狂乱で暴れ出した。

5歳の少女とは思えない、火事場の馬鹿力。君塚の手は万力で締め上げられたように痛み、蹴りが脇腹に飛んでくる。

「くっ……!」

君塚はうめき声を噛み殺し、暴れる彼女をなだめるため、やむなくベッドに入り、その小さな体を抱きすくめた。

「大丈夫だ、ヤドヴィガ。俺がいる。誰も来ない」

彼女の耳元で、意識して低く、落ち着いた声を響かせる。

夢の中の父親を追い払い、彼女を守る「父性」の象徴となるように。


翌朝。

君塚は全身の打撲と筋肉痛でボロボロになっていたが、ヤドヴィガは憑き物が落ちたように穏やかな顔で目覚めた。

それ以来、君塚は彼女にボイスレコーダーを渡し、最悪いつでも自分を呼ぶよう伝えたことで、彼女の悪夢は収束していった。


しかし、この「添い寝」と「行政改革」のせいで、傀儡化計画は完全に暗礁に乗り上げていた。

スラムの現状を見せれば「君塚様、どうか彼らを救ってください」と涙ながらに懇願され、断れずに再開発を実行。

甘やかすために与えた高級チョコやマトリョーシカは、周囲の兵士や侍女に分け与えられ、彼女の人望が増すばかり。

ハニートラップ要員の美少年など、「私は国の母ですので」と門前払いだ。

君塚はアザだらけの体をさすりながら、天を仰いだ。

「……俺は、一体何をやっているんだろうな」

その問いに答える運営の声はなく、ただ忙しない業務の音だけが執務室に響いていた。

全てはこれより始まる

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