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【祝累計20000PV突破】何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第一章

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平原の国での改革で成否はともかく君塚の影響力を無視させるのが不可能に成った為国内の体制が盤石になりつつある今、君塚は視線を外へと向け始めた。


戦力は低く見積もっても師団規模となり、欧州の中世レベルの文明力、近代化以前の国家相手なら負ける要素はない。


しかし油断ならないのはその事実と並立して存在し得る、この世界には君塚以外にも「国盗り」に成功した転生者が存在する可能性がある。

彼は幕僚たちや官僚たちに命じ、平原の国を取り巻く周辺諸国の情報を可能な限り集めさせた。

その結果机の上に積み上がった報告書は君塚に深いため息をつかせ諦観を抱かせているのに十分な内容たらしめた。


「…成る程ね、どいつもこいつもろくな隣人がいねぇな。もしかしてカジミエシュはよくやってたほうなのか?」


平原の国の外交環境は控えめに言っても「最悪」の一言に尽きた。


【東方:戦狼の国】

まず東方。

国境を隣接する『戦狼の国』とは断続的な戦争状態にある。

彼らの目的は信仰や領土や資源、王位ではない。この世界における戦略物資―『聖女』の奪取だ。

この世界の『聖女』と呼称されている存在は対軍隊・対国家規模の広域魔法を行使し、傷ついた兵士を即座に戦線復帰させる歩く戦略級大量破壊兵器兼・野戦病院である。


この地域において聖女の有無と多寡が即ち戦争の勝敗を決定づけるため各国の王室は血眼になって聖女を確保しようとする。


戦狼の国は特にその傾向が強く、平原の国を含めて他国へ刺客を送り込んで聖女因子を持つ女性を拉致し、皇帝との間に強制的に子供を作らせるという国家規模の誘拐・強姦組織と化している。


最近では皇帝の血統から聖女が多く産まれているらしく、平原の国の人民に対しても彼の国の皇族達は鼻息が荒い。


(…ヤドヴィガがもし血筋通り聖女として覚醒したなら、真っ先に狙ってくるのはこいつらか)


【西方:龍の国】

西には『龍の国』。古代龍の末裔を自称する女系王族が支配する大陸随一の近代的官僚機構と科学文明を誇る先進国だ。


魔法は使えないがマスケット銃や戦列歩兵といった近代的な軍隊を有しており旧体制の平原の国なら一年で滅ぼされていたであろう強国だ。


だが、報告によればこの国は現在死に体だ。

以前平原の国への侵攻を企てたがスポーンした転生者によって軍が壊滅的打撃を受けたらしい。

さらに、「国盗り2番手」の転生者が女王ヘルフィヨトゥルを籠絡あるいは洗脳し、その者が実権を握って国政をしっちゃかめっちゃか掻き回して崩壊させているという。


しかし腐っても大国。

こっちに火の粉が飛んでくる前に警戒が必要だ、特に難民に紛れて刺客を送り込んで来ているかもしれないのだから。


【南西部:低地の国】

殊の外転生者達による戦闘では南西の『低地の国』は悲惨の一語に尽きる。


元々賢王ウィレムが治める平和かつ文化的な国だったが多数の転生者が同時にスポーンした結果、大規模かつ破滅的な戦闘が起きて国土は荒廃。


軍は文字通り全滅して迎撃に出た聖女である3人の姫君も全て相打ちで戦死し、臣民を含め多くを失ったウィレム王は悲しみに打ち拉がれて絶望の淵に立たされている。

彼の国の唯一の救いは『空間絵画』のギフトを持つ穏健派の転生者が味方についたことだ。

彼女は描いた絵を実体化させる能力で、燃え尽きた灰のように砕かれて破壊され荒んでいた王都をたった一週間で復元し仮初めとはいえ軍隊まで描いて国家再建までの間は防衛しているという。


(…チートにも程があるだろ。絶対敵に回したくないタイプだな、絵を描くだけで国家を作れる相手は御免被る)


【中央:神聖皇務庁】

そして各国から信仰の対価として「十分の一税」を吸い上げる聖女教の総本山『神聖皇務庁』。


彼らは世界最大の「聖女軍団」を保有している。

表向きは教義を守る聖なる乙女たちだが実態は高位聖職者が血統管理と称して囲っているハーレムだ。

一夫一妻制を説きながら自らはそれを破る腐敗ぶりには内部の若手司祭からも批判の声が上がっている。

ここもいずれ何らかの形で衝突することになるだろう。


【北方:高地の国】

だが、君塚が今最も警戒レベルを引き上げていたのは北方の山岳地帯にある『高地の国』だ。

かつては小豪族や司教区が割拠する混乱と暴力が蔓延り平和とは程遠い未開と戦乱の地だったが50年前に突如現れた「謎の女性」によって統一され、今は強力な中央集権国家の帝国(ライヒ)として成立した。

彼女は旧来の貴族(ユンカー)や腐敗していた司教区から領地を取り上げたり言いがかりをつけて弾圧し、強力な中央集権体制を確立して反逆を許さない国らしい。


報告書にある現地住民や目撃証言には耳を疑う単語が並んでいた。


『鉄の板を貼り付け放たれた矢や魔法を弾く鉄の箱が地面を揺らして馬もなく自走し、口から火を噴く鉄の龍となる』『空を切り裂き、竜を砕いて音より速く飛ぶ鉄の鳥』


恐らく戦車と飛行機だろう。


(…間違いない。こいつが『最初の国盗り成功者』だ)


しかも50年前から存在しているということは君塚より遥かに長い時間をかけてギフトを育て上げ、技術を定着させている。

もし彼女が敵対的なら現在の君塚軍の3個師団をもってしても勝てる保証はない。


「…手が全く足りねぇな、特に高地の国は論外だ。攻められたらどうすっか考えねぇとな」


君塚は諦めるように資料を机に高く放り投げた。

全戦力を投入すれば「戦狼の国」くらいは落とせるかもしれない。だがその後の統治、聖女軍団への対処、そして背後に控える「高地の女帝」への備えを考えれば軽挙妄動は自殺行為だ。


「焼くのは楽だが支配するのはしんどいよなっ…と。チンギス・ハーンってすごかったんだなぁ敵の街を焼くと同時に支配を確立させるなんて」


今はまだ守りを固める時だ。

騎士団とカジミエシュの呼んでいた傭兵団を解体して再編した「王国軍」に戦列歩兵の訓練を施し戦狼の国の単独の戦力程度なら自力で撃退できるようにしていく。


一部の保守的かつ頑迷な貴族階級出身者の騎士団員は反発して離反したものの大半は合流した。

君塚の直轄軍は転生者の侵入や戦狼の国の動きに即応できるよう国境付近に旅団規模で配置し幹線道路を使った迅速かつ頑丈な兵站網を構築する。


ふと、君塚の思考は幼く哀れで君塚が弄んでいるヤドヴィガへと向いた。先日の添い寝の際彼女に手を握られた時のあの異常な握力。


『聖女として覚醒する可能性のある者は時に身体機能が常人離れする場合や五感が異常に鋭くなる場合がある』


下らない資料の記述がふと一瞬脳裏をよぎる。

もし彼女が聖女なら他国の王侯貴族は血眼になって彼女を奪いに来るだろう。


(…守らなきゃな)

 

君塚は珍しく政治的な道具としてではない、もっと個人的な感情でそう思った。

コンコン、と高く控えめなノック音。


「入れ」

「失礼します、同志」

「…どうした、それは」

「…聞かないでくださいませ、同志」


入室してきたのは君塚の護衛を兼ねているエレーナ・ソコロワ中尉だった。

彼女の手には本来なら彼女の上官が提出すべき報告書がギッシリとその銃を握り守る為の手に不必要に握られている。また押しの弱いソコロワへ雑用を適当に押し付けられたらしい、いら立ちが募る君塚。


(…あの上官、後でシメるか…いやもう少し厳しい処罰が必要だな。ああ、装備の横流しとかそういうのも平気で起こしそうだし)


歴戦の優秀な熟練狙撃手をあろうことかただの使い走りにする程弛緩した軍規の緩み、そして上席の幕僚たちの間にも最近原始社会と現地世界を見做す慢心が見え始めている。


「取り敢えずそこに書類を置け、ソコロワ中尉」

「はっ、かしこまりました!」

「時にソコロワ中尉、一つ聞きたいが」

「何でしょうか?同志君塚閣下」

「俺は少なくとも君のような兵士を所望している。今度会えないか?君はそんな小間使いの為の兵士で雇っている訳では無いのだから」

「御心遣い感謝します同志、ですが…まぁ、その」

「案ずるな同志、後釜は別部隊から引っ張るさ」

「ご配慮感謝します同志」


改めて聖域なき綱紀粛正による組織の引き締めが必要だ、報酬は彼らに相応に与えているのでそちらについては問題無いはずだ。そしてこの様な命令であろうとも実直に従うソコロワのような実直で決して不正をしない兵士こそ側に置いておくべきだ。


それとは別に官僚が殿下への縁談話を持ちかけて来ていた。

木目調のドアが3回優しくノックされる。


「入れ」

「失礼します」

「下らない書類か?なら取り敢えず何処か適当に置いておいてくれ」

「重要な案件ですので口頭でもご報告します。新たに低地の国よりヤドヴィガ殿下への婚姻の申し込みが届いております」

「相手は?」

「39歳の裕福な男性貴族です」

「却下だ。即座に却下だ!」


君塚は嫌悪しながら唾を吐き捨てるように言った。


「ついでにそいつをペルソナ・ノン・グラータに指定しろ。二度とこの国の土を踏ませるな、いや書類でさえもこの国を超えさせるような真似をさせるんじゃないぞ」


39歳で5歳女児を自分の妻にしようなど政治目的があろうとなかろうと、それは性的倒錯を極めており正気の沙汰ではないのは明白だ。その場で申し込んだ男性貴族に関する書類を破り捨て自分で拒絶と断固たる報復措置をチラつかせて使者に渡すよう無言でメモを渡した。


最近、君塚は自分でも驚くほど哀れで弱いヤドヴィガの未来を何とか守ろうとしていることに気づいていた。

彼女から20歳で王位を譲らせた後、彼女が平民として自由になった時その人生が下らない大人達の欲望で汚れていてはならない。

それは契約者としての義務か、それとも―。

君塚は下らない事を考えないように小さく首を振り、邪念を振り払ってから再び眼の前の玉石混淆を極めている山積みの書類へと視線を落とした。


平原の国の摂政閣下は今傀儡の主たるヤドヴィガにとっては最後にして最大の後援者であり、後に君塚はこの縁談のような不埒な輩から聖女を守る守護聖人に成るのだがまた別の話である。

若しくは君塚君チョロイン回


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